カテゴリから選ぶ

[ 2020年 7月 22日付 ]

 フィンランド発 "Amphion(アンフィオン)" 「Argonシリーズ」のブックシェルフにフォーカス!

こんにちは、ハイエンドオーディオ担当の "あさやん" です。
本日は、アンフィオン社の『 Argonシリーズ 』をご紹介します。同シリーズ中でも、アンフィオンらしさを凝縮した感のあるブックシェルフタイプの下位2機種を取り上げます。日本橋1ばん館での試聴も含めてリポートします。



■ 『 Amphion(アンフィオン) 』とは?
北欧フィンランドは、スウェーデン、ノルウェー、ロシアと国境を接する北欧の国で、首都はヘルシンキです。バルト海の半島と周辺の島々からなっています。オーディオでは同じ北欧のデンマークやスウェーデンに比べ、余り馴染みのない国です。唯一私が知っているのが、スタジオモニターで有名な「GENELEC(ジェネレック)」くらいです。

今回ご紹介しますアンフィオン社は、1998年創業の比較的若いスピーカーメーカーです。フィンランド中部のクオピオに本拠地を構え、全製品を自国内で生産しているそうです。当初コンシューマー用からスタートし、2013年からはプロ用モニタースピーカーにも参入しています。

同社は、女性を大事にするお国柄もあって、生活の中で音楽を楽しむためにはどうすれば良いかという視点でスピーカー作りを行っているのだと言います。そのためスピーカーと向かい合って聴くだけではなく、リビングやキッチンでも良質の音楽が楽しめることを前提に開発しているそうです。

アンフィオンの「Argonシリーズ」には、ブックシェルフ3機種、トールボーイ2機種、センタースピーカー1機種があり、それぞれカラーはブラックとホワイトがあります。ウォールナット仕上げのある機種もありますが、価格は若干上がります。さらに本国にはサランネットも白いフルホワイトがありますが、日本では特注扱いとなっています。

■ まずは「Argon0」を試聴
横幅132mm/高さ259mm/奥行220mmの小型ブックシェルフです。ツイーターはチタンのダイヤフラムで1インチ(25mm)サイズで、フロントバッフルから奥まっており、前面が独自の形状のウェーブガイドでホーン効果を狙い、能率と指向性をコントロールしています。ウーファーとの位相を整合させるため、磁気回路の位置を揃えるリニアフェーズとしています。

一方ウーファーは、4.5インチ(120mm)でコーンはアルミ振動板です。リアバスレフで低音を補強しています。クロスオーバー周波数はこのタイプとしてはかなり低めの1.6kHzとしており、人間の耳で最も感度の良い2〜4kHzをあえて外しているのだそうです。

このことについてアンフィオン社は例えで「椅子の座る面には縫い目を持ってこず、横や裏の目立たない所にあるのと同じで、人間の聴覚が最も鋭い所に縫い目(クロスオーバー)を設定することはあり得ない」と言っています。

これらふたつのユニットは振動板の素材は勿論、音の拡散の仕方が違う上、形状も違うのですが、クロスでの繋がりがスムーズであることに最も神経を使ったそうで、この当たりが生活に溶け込むサウンドを目指すのには不可欠な要素なのです。


大きさは想像していた以上に小振りで、DALIの「OPTICON1(写真左)」や「MENUET(同右)」とほぼ同じです。

サウンドは、ウーファーとツイーターの繋がりが実に自然で、振動板の素材の差を全く感じさせません。特にヴォーカルが秀逸で、まるでフルレンジのようです。ボーカルは口が小さく定位もしっかりしています。

低域はさすがに限界を感じますが、詰まりや鈍さのない鳴りっぷりの良いもので、必要にして十分と感じました。高域も嫌な強調感やきつさが無く、十分高いクオリティを維持しています。

ギターはよく弾み、実に伸びやかで抑えられた感じは全くありません。サウンドが小さく収まるのではなく、スピーカーの大きさを意識させない大らかさがあります。非常に鳴らしやすいスピーカーです。

■ 一回り大きな「Argon1」
横幅160mm/高さ316mm/奥行265mmと「Argon0」より一回り大きくなっており、ツイーターは「Argon0」と同じでウェーブガイド付きです。ウーファーは5.25インチ(150mm)となっています。クロスオーバーも同じ1.6kHzです。

大きさは「Argon0」より一回り大きくなっていますが、前から見ている限りかなり小型です。ただ奥行きはこのクラスとしては結構あり、容積的には十分確保できていると思います。

 

サウンドは「Argon0」に比べ低域が伸びやかで、力もあり余裕を感じさせます。ヴォーカルは自然で温かさが増し、楽器はヌケが良く自然で、小型ブックシェルフとは思えない表現力です。

オーケストラもスケールが明らかに大きく感じられ、臨場感も十分楽しめます。ことさら解像度や音数の多さを強調せず、音楽そのものを楽しませてくれるスピーカーです。

■ 番外編「Argon3LS」
横幅191mm/高さ968mm/奥行305mmの堂々としたトールボーイタイプで、ツイーターは「Argon0/1」と同じ1インチのチタン振動板でウェーブガイド付き。ウーファーはアルミ振動板の6.5インチ(180mm)と大きくなっており、クロスオーバーは同じ1.6kHzで、2つのユニットのボイスコイルの位置は同じく揃えられています。

ユニット構成での違いは、リアにパッシブラジエーターを搭載しており、低域のスケールアップを狙っています。更にスピーカー端子(アルジェント・オーディオ製)のすぐ上に、高域(トレブル)を1dBブーストするスイッチが装備されており、設置場所での微調整が考えられています。


高さこそ約1mありますが、ユニット構成、横幅、奥行きは「Argon0/1」の上位機「ALGON3S」と全く同じで、容量が3倍近く確保されています。 サウンドは、実に伸びやかで大らか、詰まった所を全く感じさせず、ヌケの良い爽やか系です。これこそクロスオーバーを耳にとって敏感な部分を外したことによる効果だと感じました。

全体に粒立ちが良く、小気味良さは格別です。一方で、左右の拡がりや奥行きといった空間情報も欠落することなく自然で、立体的な音場が再現されます。

スピーカー固有の癖を全く感じさせず自然体で、ヴォーカルがまろやかで温かく人肌を感じさせてくれます。さすがにスケールも下位機に比べ大きく、ことにパッシブラジエーターによる量感の再現は見事です。

■ 最後に…
アンフィオン「Argonシリーズ」のブックシェルフ型スピーカーは、決してオーディオを極める方向のサウンドではなく、音楽を楽しませてくれる方向のもので、スピーカーの存在を感じさせない自然体のサウンドが魅力的です。

ボリュームを上げてもきつくなったり歪みっぽくなることは一切なく、小型ながら余裕さえ感じさせます。逆にボリュームを絞った場合は、大型スピーカーのように極端に痩せることはなく、バランスを維持したまま自然と耳に入って来ます。

なお、ユニット前面のネットは取り外しできませんが、設計段階からネットを付けた状態で試聴を重ねており、アンフィオンとしては付けたまま聴くことを標準としています。

アンフィオンの「Argonシリーズ」は、長時間聴いても聴き疲れなく、ながらリスニングにも最適な、ご家族みんなで楽しめる北欧フィンランドならではのスピーカーです。

(あさやん)


 今回ご紹介した、Amphion(アンフィオン)「Argonシリーズ」はこちら
▼Argon0
    ▼Argon1
      ▼Argon3LS