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[ 2021年 5月 25日付 ]

 ELACからMade in Kielの2021最新シリーズ「Solano 280 Series」をご紹介

こんにちは、ハイエンドオーディオ担当の "ichinose" です。

今回は、ELACの新機軸である「Vela 400 Series」のコンセプトに基づいた、最新技術の継承が特徴の『 Solano 280 Series 』をご紹介します。


Solanoは、ドイツのキールにあるELAC(エラック)の自社工場で生産される2021年のニューラインアップです。

十分な質量を持つ無垢のアルミ製ベースの上に、エンクロージャーをマウントする工法は、まさにVelaを継承するものであり、ダイキャスト・フレームを奢られたドライバー・ユニットの採用は、前身の「260 Series」にはなかった大きな進化です。

ELACの中枢であるR&Dが積み重ねてきた音響解析の集積は「400 Series」のリニューアルに続き、『 Solano 280 Series 』というキールで製造される直系ラインアップに惜しみなく注がれています。


■ 『 Solano 280 Series 』について

Solanoはスペイン語で風を意味します。

ELACが所在するキールは、世界最大級のセーリング・イベント「キール・ウィーク」が行われる港ということもあって、ELACの最近の製品は海を連想させるネーミングがトレンドになっています。

「280 Series」は、2014年6月に発売された「260 Series」の後継モデルとなります。

JET Vの採用、ダウン・ファイアリングの構造を持つエンクロージャーなどの共通点はありますが、『 Solano 280 Series 』は、ELACの新機軸である「Vela 400 Series」のコンセプトに基づいた、最新技術の継承が特徴と言えるでしょう。

エンクロージャーの重心を下げて制振に寄与するアルミベースの採用、剛性を高めて共振を軽減するためのトゥイーター、ウーハー共に採用したアルミ・ダイキャスト製のフレーム・バスケット。

最新の音響解析でデザインされた、理想的な放射特性を実現したウェーブ・ガイドの装着などがそれにあたります。

ELACが誇るR&D直系の最新技術と、キールの自社工場で生産されるメイド・イン・ジャーマニーの称号は、『 Solano 280 Series 』がこのクラスにおいて、明確なアドバンテージを持つことを意味しています。ちなみに「CARINA」は船の竜骨、「VELA」は帆と言う意味。

『 Solano 280 Series 』は、キールにあるELAC本社の開発チームが完成させたJET Vトゥイーター搭載の最新ラインアップです。

Solanoは30年以上にわたり、ELACのR&Dでスピーカー・システム開発を続けてきたロルフ・ヤンケ氏の陣頭指揮のもと開発が進められ、そのラインアップは下記になります。


「Solano CC 281」 センター・スピーカーとなります。


「Solano BS 283」 ブックシェルフ・スピーカー


「Solano FS 287」フロアスタンディング・スピーカー



■ ELACの「JET V」トゥイーターとは?

まずは、JETトゥイーターの歴史を振り返ってみましょう。原理は、1972年に音響学の権威、オスカー・ハイル博士が発明したハイルドライバーです。

通常のスピーカーは、円形のダイヤフラムを前後に高速振動させ、音波を発するが、ハイルドライバーのダイヤフラムは長方形で、ひだ状に細かく折り曲げられ、プリーツスカートのように細かな山と谷があります。

特殊な素材のダイヤフラム(JETではカプトン)に電極をプリントし、マグネットを配置。電極に電流を流すと波状のプリーツが開閉し、谷間で空気を吸排気することで音波を出すという原理です。



一般的なドーム型のトゥイーターに比べると、はるかに大きな面積のダイヤフラムから発音し、プリーツ動作で空気の圧縮、加速放射が繰り返され、周辺の空気を強力にドライブする構造から低歪み、優れた過渡特性、拡散性、ワイドな周波数レスポンスというメリットが引き出される。通常の円形ダイヤフラムでは避けられない、ピストニック・モーションにまつわる歪みとも無縁。

JETとはJET Emission Transducer、つまりジェットエンジンのように空気の吸入、圧縮、噴出を行なう変換機という意味。ELACの音を形容するなら「しなやかにして高剛性。情報量の多さと音楽性が見事にバランスし、凋密な描き方で、透明感が高く、音の調和をたいへん上手く再現する」。

そんな緻密で音楽的なエラックサウンドを支えている独自のJETトゥイーターの現在は、第五世代の「JET V」となっています。

JETトゥイーターが初めて搭載されたスピーカーは、1997年の「CL310JET(JET-2)」と「CL330JET(JET-1)」


(JEI-1)


(JET-2)

JET-1とJET-2は、ネオジウム・マグネットの本数が異なる(1が8本、2が4本)だけの違いで、カプトン振動板のプリーツの折り数、折りの高さなどは共通。

この2モデルは、小さなマイクロスピーカーの常識を覆すスケール感や、質の高い中高音などから、たちまちハイエンドスピーカーとして人気を博しました。その後、300ラインは何度ものモデルチェンジを経て、エラックの代表モデルとなり、現在も発売されています。


(JET-3)

JETトゥイーターの第三世代として2003年に登場した「JET-3」は、プリーツの高さを抑え、高域限界を35kHzから50kHzに伸ばすことに成功。ネオジウム磁気回路は、それまでの棒状から板状の積層に替えた事で、駆動、制動力が大幅に改善されることに。

ELACのスピーカーは、このJETトゥイーターを軸として開発されており、優れた過渡応答特性や、周波数特性、リニアリティなどを活かすために、アルミと紙のハイブリッド振動板、振動板の剛性向上を目的にしたクリスタルライン加工、空芯コイル、底面バスレフポートのボトムエミッションなど、ウーハーやネットワークが新開発されました。

そして、JET-3の登場から約10年、遂にフルモデルチェンジが敢行され、JET Vトゥイーターに進化。

まず、カプトンにラミネートされたアルミ電極のパターンを細くし、振動板面積を20%拡大して「開口率」を増加。面積の向上に合わせて磁気回路も強化、振動板を保持する機構も改良し、共振周波数をより低く設定。可聴レンジから遠ざけることにより、さらに歪みの減少を実現しています。

※ちなみに「JET-4」はカー専用として開発されています。


■ Solanoのエンクロージャーについて

優雅なデザインと美しい仕上げが施されたSolanoのキャビネットは、Velaで採用された工法を効率よく継承しています。エンクロージャーはアルミ製の堅牢なベース部にマウントされることで、低重心が生み出す安定した制振構造を手に入れています。

フレア型のグラス・ファイバー製バスレフ・ポートは底面に向かってダウンファイアリングされ、壁反射の影響を受けにくくしています。エンクロージャー内部に発生する強力なエネルギーを受けとめるため、スピーカー・ターミナルには頑丈なアルミニウム・プレートが採用されています。





■ JET Vトゥイーターについて

注目すべきは、400 Seriesに採用されたアルミ・ダイキャスト製バスケット・フレームを装着したことです。

ELACとしてこのクラス初の高剛性フレーム構造は、可動域の広いロングストローク・ボイスコイルのレスポンスをしっかりと支えるだけでなく、システム全体の制振とS/N向上に大きく貢献しています。

280 Seriesに採用されたアルマイト処理を施された新しいアルミニウム振動版は、ペーパーコーンとのハイブリッド構造により、内部損失に優れたニュートラルで自然な再現性が特長です。





■ ネットワークについて

磁気歪みを排した大型空芯コイルを装着したウーハー専用基板と、高品位パーツで構成されたトゥイーター専用基板は、それぞれの干渉を防ぐためにセパレート構成されています。

内部配線には、Van den hul製ケーブルを採用。スピーカー・ターミナルは、ウーハーからの逆起電力をキャンセルするのに有効な、バイワイヤリング接続に対応しています。





■ 総評

Solanoシリーズは「CARINA」の上級モデルではなく、上級機「VELA」に迫るハイコストパフォーマンスモデルとして注目です。

トゥイーターにはVELAで初めて採用されたJET Vを装備し、指向性が精密に制御され、クロスオーバーを100Hz引き下げて、JETユニットの再生帯域を拡大、システム全体のレスポンスが改善されました。

キャビネットはダウン・ファイヤリング方式で堅牢なアルミ製のベース部を採用し、重心を下げる構造もVELAから継承。グラスファイバー製のバスレフダクトは開口部の広がったフレア形状で、底面に向かって音波を放出。壁面の反射を避け、滑らかな拡散を確保できます。

ウーハーは新規の設計ですが、ここでもVELA直系のアルミ・ダイキャスト製バスケット・フレームを採用。振動板は、アルマイト処理のアルミコーンとペーパーコーンのハイブリッド。高剛性のフレームがロングストロークのボイスコイルのエネルギーを受け止め、振動を効果的に制御、レスポンスの明確化を実現。

非常にS/Nが良く、スピーカーからの音離れのよさはハイエンドモデルと言える実力で、見通しの良い音場に音像が浮かび上がる! まさにボーカルの口が見えるという表現がピッタリの、心地よい再現性を聴かせてくれます!

JET Vの完成度が極めて高く、躍動感溢れるレスポンスに、優れた低域も魅力的と言える逸品です。
(ichinose)


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