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音場工房

[ 2022年 2月 22日付 ]



アキュフェーズの超弩級ステレオパワーアンプ「P-7500」新登場!



  • こんにちは、ハイエンドオーディオ担当の "ichinose" です。

    今回は、アキュフェーズより、AB級のフラッグシップモデル「P-7500」が3月に発売となりますので、ご紹介します。

    アキュフェーズでは、スピーカーのポテンシャルを残さずに引き出せるように、出力インピーダンスの低減や定電圧駆動を追求しながら40機種を超えるAB級パワーアンプを開発。2015年に発売したステレオ・パワーアンプの最高峰「P-7300」は、その魅力溢れる音質で国内外から高い評価を得ています。

    新製品「P-7500」は、「A-250」や「A-75」の開発で培ったテクノロジーに、AB級動作の強力な出力段を融合、6年に及ぶ開発期間を経て「P-7300」のフル・モデルチェンジにより誕生した、超弩級『 ステレオ・パワーアンプ 』です。

また、「P-7500」を2台使用すると、『 バイアンプ接続 』や『 ブリッジ接続 』もお楽しみいただけます。このように先進の技術で磨き上げ、大型スピーカーも軽々と駆動する「P-7500」は、あらゆるスピーカーのポテンシャルを引き出し、広大なサウンド・ステージを提供するパワーアンプです。


10パラレル・プッシュプルAB級動作が実現するハイパワー

スピーカーのポテンシャルを100%引き出すため、パワーアンプ部は激しく変動するスピーカーのインピーダンスによる影響を受けることなく、スピーカーを定電圧駆動することが大切です。

スピーカーを定電圧駆動するためには、パワーアンプ部はインピーダンスに反比例する電流をスピーカーに供給しなければなりません。例えば、4Ω負荷では8Ω負荷の2倍の電流になります。

「P-7500」はパワー・トランジスターの数を増やして電流供給能力を上げ、出力インピーダンスを下げることで、動的な定電圧駆動を実現しています。低出力インピーダンス化は、リアクタンス成分を含んだ負荷の駆動にも優れ、スピーカーのヴォイスコイルで発生する逆起電力を吸収し、IMひずみの発生を防ぎます。

「P-7500」の出力には、高周波特性に優れ、コレクター損失150W、コレクター電流15Aの大電力パワー・トランジスターを採用。この素子を10パラレル接続プッシュプルAB級動作させることにより、非常に低い出力インピーダンスを実現。

さらに、1ペア当たりのパワーの負担が1/10に軽減されるため、大電力領域での動作が安定し、諸特性が向上。出力素子を大型ヒートシンクに分散させながら搭載することで、効率の高い放熱を行っています。

これらの技術により、「P-7500」は定格出力(300W/8Ω、600W/4Ω、900W/2Ω)のハイパワーを実現しています。


「10パラレル接続」とは?

一般的な高周波用の半導体素子は、素子の内部で小さなトランジスターやFETを並列接続し、素子が持つ固有のインピーダンスや内部雑音を減少させて、リニアリティを改善しています。

また並列に接続することでチップの総面積が大きくなり、素子から発生する熱を分散させ、安定した動作を行います。アキュフェーズではこれらの手法を応用し、出力段の半導体素子を10回路並列接続することで、電流TをT/10ずつに分散し、大きな電流供給能力を獲得しています。


「コンプリメンタリー・プッシュプルAB級動作」とは?

コンプリメンタリー・プッシュプルとは、対称的な動作を行うNPNトランジスターとPNPトランジスターの2つの素子がペアとなり、信号を出力する増幅回路です。

AB級アンプの場合、小さな振幅ではNPNトランジスターとPNPトランジスターが同時に動作するA級動作をしますが、大きな振幅のプラス側ではNPNトランジスターが動作し、マイナス側ではPNPトランジスターが動作します。そのため、A級アンプと同等の低ひずみを維持しながら、低い消費電力とハイパワーを実現することができます。


大型トロイダル・トランスと大容量フィルター・コンデンサーによる強力電源部

全ての電力の供給源である電源部は、音楽の源となる重要な回路です。「P-7500」は、低インピーダンス負荷ドライブに求められる電流供給能力に優れた、大電力容量の大型トロイダル・トランスを搭載しました。

さらに、熱伝導に優れ防振効果の高い充填材を用いて、高効率放熱構造のアルミ鋳物ケースに固着、外部への振動を遮断します。トロイダル・トランスは、閉じた磁路を形成するドーナツ状のコアに太い銅線を巻くため、小型で変換効率が極めて高く、大型パワーアンプには不可欠な部品の一つで、大出力アンプ用として優れた特性・特長を備えています。

また、整流器を通過した脈流を直流に平滑するアルミ電解コンデンサーには、性能や音質を重視して箔の材質やエッチング、電解液などを選び抜いた特注品を採用、60,000μFの超大容量型を2個搭載し、ゆるぎない余裕度を誇ります。


ディスクリート構成フルバランス回路による信号入力部

「P-7500」の増幅回路全体は、『 インスツルメンテーション・アンプ(Instrumentation Amplifier) 』で構成されています。インスツルメンテーション・アンプは、信号入力部がバランス回路で構成され、+入力と-入力の入力インピーダンスが等しいため、外来ノイズの除去能力やひずみ率が優れており、オーディオ・アンプに最適な回路です。

信号入力部には、ディスクリート構成によるフルバランス回路を搭載しました。バランス伝送では、出力側は同一振幅で位相が反転(180度)したインバート(−)とノン・インバート(+)の信号を出力します。入力側はこれを+入力、−入力で受けて差信号を取り出します。この時、ケーブルに飛び込むノイズ成分は、両入力に同相で入るため、入力アンプでキャンセルされます。

フルバランス回路は、バランスのプラス入力とマイナス入力の条件を理想的にそろえることで、バランス回路の性能を極限まで高めています。LINE入力も同じ回路を使用するため、性能の違いもありません。


信号入力部の安定動作を支える専用電源

信号入力部と電力増幅部の電源が共通の場合、電力増幅部で増幅した大振幅信号が、電源を通して信号入力部に影響を与え、ひずみ率やSN比を劣化させます。信号入力部に専用電源を搭載し、電力増幅部からのノイズの混入を防ぐことで、ひずみ率やSN比を改善しています。


ひずみ率やSN比などの特性を大幅に向上させる『 MCS+回路 』

電力増幅部の電圧増幅段に、アキュフェーズ独自技術の『 MCS+(Multiple Circuit Summing-up)回路 』を採用。MCS+回路は、電圧増幅段を電圧増幅段A/Bの2並列接続にすることで、理論上ひずみ成分やノイズ成分を約30%低減します。

『 MCS+ 』はMCSをさらに進化させたもので、初段バッファアンプのバイアス回路を改善して回路安定度を高め、並列動作させる部分を『 電流−電圧変換部 』のA級ドライブ段にまで拡張して、さらなる低雑音化を実現する回路です。


高域の位相特性に優れた『 カレント・フィードバック増幅回路 』

信号入力部と電力増幅部に、出力を電流信号で帰還するカレント・フィードバック増幅回路を採用しました。この回路はゲインを切り替えても周波数特性の変化がほとんどなく、高域の位相特性にも優れ、自然で躍動感のあるスピーカー・ドライブが可能です。


高い『 ダンピング・ファクター 』

ダンピング・ファクターとは、パワーアンプの出力インピーダンスとスピーカーのインピーダンスの比であり、数値が大きいほどアンプがスピーカーをコントロールする能力が高いことを意味します。つまり、ダンピング・ファクターが高いほど短い時間でスピーカーからの逆起電力を吸収して不要な振動を抑え、理想的なスピーカー駆動を実現します。

アンプ回路やNFB経路等の最適化によって、アンプの出力インピーダンスを8mΩ以下に抑え、ダンピング・ファクター1,000を実現しています。


長期に渡る信頼性を確保する『 MOSFETスイッチ 』

アンプが異常状態に陥った際、スピーカーとの接続を切り離し、スピーカーの破損を防ぐのがプロテクション回路です。一般的には機械式接点を持つ『 出力(プロテクション)リレー 』を用いますが、接点の腐食により接触抵抗が増加し、性能や音質が劣化するという問題がありました。

接点のない『 MOSFETスイッチ 』を採用することで、経年劣化の問題を解決し、長期に渡る信頼性を確保しています。定格電流が非常に大きく(160A)、ON抵抗が非常に低い(0.0016Ω)MOSFETスイッチを採用しています。


低誘電率・低損失『 ガラス布フッ素樹脂基材 』

プリント基板の信号伝搬に係わる性能は、プリント基板を構成する誘電体の誘電率と誘電正接に深く関係します。誘電率が低いほど信号伝搬速度は速くなり、誘電正接が小さいほど伝送損失は小さくなります。

電気的・音質的に重要な要素を占めている電力増幅段には、非常に高価で入手と加工の難しいガラス布フッ素樹脂基材の基板を採用。この基板は、低い誘電率と誘電正接をもち、高周波特性が優れ、周波数が30GHzにも及ぶSHF帯で使用する衛星放送機器や高精度計測機器などに使われます。銅箔面に金プレートを施し、さらに音質と信頼性を向上。


『 バランス入力端子 』搭載

アンバランスとバランスの2系統の入力端子を搭載、プリアンプ等のバランス伝送の出力回路では、互いに位相が反転した2つの信号、インバート(−)とノン・インバート(+)を出力します。

出力された信号はケーブルで伝送される際、外部からノイズが加わる可能性がありますが、信号入力部では、この2つの信号の差信号を出力することで、ノイズ成分のみをキャンセルして、信号成分のみを増幅。ノイズはケーブルが長いほど、加わる可能性が高くなりますので、バランス伝送はケーブルが長いほど有効な伝送方法です。

ただし、一般的なご家庭の5m程度までのケーブル長であれば、ライン伝送とバランス伝送に性能面での大きな違いはありません。アンバランス入力端子とバランス入力端子をフロントパネルで切り替えることが可能です。バランス入力端子の極性切替が可能。


高感度アナログ・パワーメーター搭載

出力電力をモニターできる、視認性に優れた大型のアナログ式パワーメーターを装備。このパワーメーターは対数圧縮型ですので、広いダイナミックレンジを確保しています。また、従来は-40dBまでの指標でしたが、「P-7500」では感度を高め、-50dBといった小音量再生時にも指針の動きを確認できます。

さらに、ピークを捕捉するので、時々刻々と変化する音楽信号を正確に捉えることができます。メーター内の照明には温もりを感じる電球色のLEDを採用し、明るく見やすくムラのない表示を実現しました。

ホーム・シアター用として使用する際は、映像の邪魔とならないように、照明を消すことが可能です。


その他の特徴

・信号入力部に22dB(約12.6倍)の高いゲインを割り当てることで、低ノイズ化を実現
・安定したスピーカー駆動を可能にする『 3段ダーリントン接続 』
・ダンピング・ファクターを向上させる『 バランスド・リモート・センシング 』
・直流抵抗の低い『 エッジワイズ・コイル 』
・プロテクション基板に結合されたスピーカー端子
・強力なスピーカー出力保護回路
・バナナプラグや大型Yラグが挿入可能な2組の大型スピーカー端子
・4段階《MAX、-3dB、-6dB、-12dB》のゲイン・コントロール
・アルミ材ヘアライン仕上げのトッププレート
・ハイカーボン鋳鉄製高音質インシュレーター搭載
・高性能電源ケーブル『 APL-1 』付属
・バイワイヤリング接続対応
・バイアンプ接続対応
・ブリッジ接続によりモノラル1200W/8Ω、1800W/4Ωに


担当者より

いよいよ、AB級の超弩級フラッグシップ、ステレオパワーアンプ「P-7500」が発売されます。前モデル「P-7300」の発売から6年に及ぶ開発期間を経てフルモデルチェンジを果たした製品です。

出力は125W/ch(8Ω)から300W/ch(8Ω)と2倍以上に大幅にアップ! S/N比は遂に130dBに到達しています!! ノイズレベルも11%も改善されているとの事で、音を聴くのが楽しみですね。

AB級のハイエンドプリメインアンプ「E-5000」も抜群に音が良かったので、ますます期待してしまいます。まもなく試聴の機会があるので、試聴できましたら、改めてご報告させていただきます。

 ▼ 今回ご紹介した機種


アキュフェーズ パワーアンプ Accuphase P-7500
6年に及ぶ開発期間を経て「P-7300」のフル・モデルチェンジにより誕生。 [2023年3月発売]