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[ 2016年 9月 13日付 ]

T+A「DAC 8 DSD」 … ドイツならではのこだわりを感じさせるDACが新登場!!

ハイエンドオーディオ担当の "あさやん" です。
本日は、昨年から日本でも本格的に取扱いが始まったドイツ発祥のオーディオブランド "T+A" から、DACプリ「DAC 8 DSD」をご紹介します。音楽を知り尽くしたエンジニアが、自然に音楽の美味しい部分を引き出そうと努力した結果が生み出した、"超一流製品"です。

T+A(ティー・プラス・エー)の製品が本格的に日本に登場!

ドイツ生まれのオーディオブランド T+A(ティー・プラス・エー) をご存知でしょうか。過去にマイナーな輸入商社が紹介し、日本でも一度製品が流通したことは記憶していますが、 昨年(2015年)の6月より大手の太陽インターナショナルが本格的な取扱いを開始したブランドです。

T+Aは、ドイツ語の「Theorie+Anwendung」、英語では「Theory+Application」と記し、その意味は「理論と実践」というお堅い、いかにもドイツらしい名前です。ここでは「理論を適用し製品を創る」という会社の理念を表したものです。

言い換えれば、発想し、創造し、さらに細かく突き詰めて高品位なハイエンドオーディオ機器を、厳しい要求を持っているユーザーに贈ることが、T+Aの理念ということになります。

T+Aの歴史は長く、1978年の創業で、ドイツ・ブルメスターやスイス・ゴールドムンド、英国・メリディアン、EARなどのハイエンドブランドとほぼ社歴が同じと言います。当初はスピーカーの製造からスタートしています。

全ての製品が「Made in Germany」であり、世界標準を楽々とクリアーした優れた製品で、各国の批評家から高く評価されているとのことです。

T+Aは、ドイツ北西部ヘルフォルトという都市に本社を構えており、研究開発部門に14人の科学者(物理学者、工学者、技術者)を擁し、合計約100人規模の総合オーディオメーカーです。同社の製品ラインナップは幅広く、9シリーズにも及び、内HiFi&ハイエンド機は5シリーズあり大型の真空管アンプまであります。

その数あるオーディオ製品の中で、従来日本国内には200万円前後の「HVシリーズ」のハイエンド・セパレートアンプのみが紹介されていました。スピーカーやユニバーサルプレーヤーなどもありますが、今の所輸入されていません。

そんな中、今年5月、8シリーズのD/Aコンバーター「DAC 8 DSD」が新登場しました。続いて6月には「AMP 8」も登場。いずれも27cm×27cmのコンパクトな製品で、トップとボトムには肉厚のある、見るからに高精度なアルミプレートが採用され、高級感のある仕上げの製品です。

本シリーズは、同社フラッグシップのHVシリーズのエッセンスを受け継ぎつつ凝縮サイズに納めた製品で、発売直後からヨーロッパで大変人気を呼んだとのことです。

「DAC 8 DSD」を試聴しました。

今回、DACプリ「DAC 8 DSD」を試聴する機会を得ましたのでレポートいたします。

「DAC 8 DSD」は、PCM(32ビット・8倍オーバーサンプリング)とDSD(T+Aの独自回路)に独立したDACを搭載しており、出力直前まで別経路で動作する仕組みで、これは同社の高級ディスクプレーヤーのDAC部分から、技術・回路を受け継いでいるとのことです。PCM/DSDのデジタル信号はコンバーターで処理される前に、独自のジッター低減ステージを通過します。

その後、DSDデータは直接コンバーターモジュール『True 1bit Converter』に送られます。DSD DACをPCM DACから完全に分離し、DSDデータにとって最高のアナログ変換を行うことで、DSDデータの特質を最大限に活かした再生音を堪能できるようになったと、T+Aの資料にはあります。

一方、PCM信号は、上級モデル「PDP 3000 HV」にも搭載されている『クアッド ダブル ディファレンシャル D/Aコンバーター』で処理されます。PCM信号に対しては4種類フィルターが用意されており、アナログ波形に最も近いと言われるビジェフィルターが搭載されています。

USB入力のサンプリング周波数は、PCMでは384kHzまで、DSDでは11.2MHz、さらに22.6MHzという超ハイスペック対応です。デジタル入力は、RCA同軸:4系統、BNC:1系統、AES/EBU:1系統、光TOS:1系統と豊富で、LAN端子もありますが、これはアップグレード時の受信用で、本機にはネットワークプレーヤー機能はありません。

アナログ出力は、RCAとXLRの各1系統が装備されており、内蔵ボリュームを使うことで、デジタルプリアンプとして機能します。リアパネルにはスイッチが用意されており、出力の可変と固定が切り換えられ、固定とすることでDACとして使うことが出来ます。今回は固定出力のRCA出力で試聴を行いました。

試聴は、「DAC 8 DSD」を自宅パソコンとUSB接続して主にUSB-DACとしてPCM/DSDのCDからのリッピングデータとハイレゾソフトで行い、CDプレーヤーのデジタル出力をS/PDIF入力して、一般的なD/Aコンバーターとしても使用してみました。PCM入力では4種類のデジタルフィルターの内、「1」のポジションで行いました。※切り換えることでサウンドのニュアンスは変わりますが、今回は固定して本機の実力を探ります。

まずは、いつものジェニファー・ウォーンズの「THE HUNTER」(44.1kHz/CDリッピング)から行いました。非常に伸びやかで、しっかりした安定したボーカルが聴けました。バックの楽器は位置や大きさが解る程に分解能が高く、繊細さの表現も格別でした。超低域は曇ることなくクッキリと再現され、重くない軽やかな弾むような低域につながっていました。

リヴィングストン・テイラー「ink」(96KHz/FLAC)の冒頭の口笛も抜けが良く、艶のある滑らかな自然なもので、続くボーカルもPCMソフトで感じるきつさは全くなくコクがあり、楽器との分離も明確でボーカルが浮かぶ感じが再現出来ていました。

一方、DSDではビル・エヴァンス「Waltz for Debby」(2.8MHz)では、演奏会場が立体的に再現され、音数が非常に多く、特に拍手のリアルさは格別でした。

アナログディスクからDSD(5.6MHz)にアーカイブしたソフトは圧巻の一言でした。サウンド全体が力強く、立ち上がりもすこぶる良好で、実に生々しく、演奏会場のエコー感や臨場感もとてもリアルに感じました。ボーカルには全く引っ掛かりが感じられず、非常に抜けの良いもので、まさにアナログそのものでした。

最後に

私自身、ドイツ製品のサウンドには勝手な思い込み(過去の製品で感じた)があり、神経質で几帳面なサウンドという、やや硬派なイメージを持っていたのですが、「DAC 8 DSD」のサウンドは、それらを微塵も感じさせない本格的なハイエンドサウンドとなっています。

この凝縮感のある小型の筐体には、上級モデルの技術とノウハウがつまっており、性能に対して非常に厳しい目を持つドイツならではのこだわりとクラフトマンシップを感じることができます。しかも高級機の多いドイツ製品にあってこの価格でこの性能を実現できていることには正直驚異さえ感じました。

音楽を知り尽くした耳の良いエンジニアが、あえてサウンドを演出しようとせず、自然に音楽の美味しい部分を最大限引き出そうと努力した結果の製品だと実感したのです。ドイツ製のデジタル機器の超一流製品が、日本市場に紹介されたことに拍手を送りたいと思います。

今回も最後までお読みいただき、ありがとうございました。(あさやん)



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※ご紹介した製品は販売を終了いたしました。



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