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[ 2018年6月26日付 ]

 "MQA-CD"特集 第一弾 〜画期的なフォーマットがハイエンドオーディオの世界を変える!? 〜
ハイエンドオーディオ担当の "あさやん" です。
今回は、画期的なハイレゾ音源"MQA-CD"を取り上げます。"MQA"というフォーマットとは何かという解説と、既存のSACDやBD/DVDとは違う、"MQA-CD"最大のメリットを試聴結果とともにご紹介いたします。

■ 最初に

"MQA"とは《Master Quality Authenticated(マスター品質認証済み)》の略です。筆者がこの単語を初めて目にしたのは、今から約2年前の2016年の秋口のことで、クリプトンが小型高級アクティブ・スピーカー『 KS-9Multi 』を発表した際でした。その謳い文句には「今一部のオーディオメディアや、最先端を自認するオーディオファイルが注目する、最新配信フォーマット"MQA"に対応した世界初のスピーカーシステム」とありました。

しかし当時、筆者には"MQA"の理論的な話(折り紙理論など)をお聞きしても、全くちんぷんかんぷんであり、しかも当初は、配信フォーマットのみということもあって、正直あまり興味が湧かなかったというのが本音です。まずは、"MQA"とは何ぞや?から話を始めたいと思います。

■ "MQA"とは

ハイレゾという言葉が一般化してかなりの年月が経過しますが、ハイレゾ音源の品質を高めようとすればするほど、その音楽ファイル1件当たりのデータ量が、ギガビット単位で膨らんでしまいます。結果、オーディオ機器のストレージ領域やネットワーク再生時の通信容量・速度が問題になってきており、それらを節約する技術が求められていました。

そんな中、2014年に英国メリディアン社が"MQA"を発表したのでした。"MQA"はスタジオの感動をマスター品質のまま、リスナーの耳に届けるべく開発された「アナログ・トゥ・アナログ」の音楽再生プロセスです。そのベースになっているのは「カプセル化」と呼ばれる独自のエンコーディング技術です。

従来のアナログ音声のPCM化の際の問題点は、音楽信号波形の直前と直後に、必然的にリンギング(ノイズ)が発生してしまい、時間軸の「音ボケ」(過渡的な音に滲み)が生じることです。結果、一つ一つの音がどこから来ているのか、厳密には聞き取れなくなってしまいます。録音された音楽がライブと比べて、平坦に聞こえるのはこのためだと言います。

■ 「オーディオ折り紙」が「音ボケ」問題を解決
その「音ボケ」の解決のために"MQA"は、大容量の高解像度ファイルを扱いやすいサイズに、ロスレスで折りたたみます。これを折り紙に例えて「オーディオ折り紙」とも言われます。これによって、既存のプレイヤーでもCD以上の音質で再生でき、さらに"MQA"デコーダーや専用アプリがあれば、「オーディオ折り紙」を展開させて、臨場感に溢れるマスター・クオリティのサウンドを再現できるのです。これはあくまで「圧縮」ではなく「折り畳み」です。

具体的には、音楽を「0〜24kHzまでの音楽信号」と「それよりも高周波な音楽信号」に分け、高周波な信号をまるで折り紙を折りたたむように、「0〜24kHzまでの音楽信号」の中に、ある耳に聞こえないレベルのノイズ信号の中に移動させる、というイメージだそうです。これにより、192kHzのPCMデータが、48kHzのPCMデータ程度のサイズにカプセル化され、データレートは1Mbpsを少し超える程度になります。再生時には、ノイズの中から高周波を元に戻して再生するカタチだと言うことです。
※さらに詳しくはメリディアンHP( https://www.hires-music.jp/mqa/ )をご参照下さい。

■ "MQA-CD"の最大のメリット
"MQA"は、扱えるデータ量に限りがある環境下で、ハイレゾの高音質を維持しながら、ファイルサイズをWAVデータの数分の1程度に抑えられます。その"MQA"の保存や伝送が手軽という能力を存分に発揮するメリットを、既存のメディアで実用化したのが"MQA-CD"です。さらに"MQA"に対応していないCDプレーヤーやネットワークプレーヤーでデータを再生した場合もCD相当の音質ではありますが、そのまま再生が可能であるという互換性にも優れています。

すなわち、従来のCD製造時のプレス行程や、プレーヤーのドライブメカなどの基本的な部分を大きく変更することなく、あくまで通常CDとほとんど同じプロセスで、ハイレゾ音源を手にすることができるのです。これは実に画期的なことで、SACDやBD/DVDとは違う、"MQA-CD"の最大のメリットといえます。

■ ハイレゾ配信の"MQA"ソフトはすでに3000タイトル!
今回"MQA"の特集を組ませていただいたのには2つの理由があります。その1つが"MQA-CD"がユニバーサルミュージックから大量にリリースされたため。もう1つは、筆者のリファレンスD/Aコンバーターである『 Brooklyn DAC+ 』を含む、MQA完全対応のMytek Digital製品の輸入元が、従来の今井商事からエミライに変更になり、『 Brooklyn DAC+ 』と『 Manhattan DAC II 』に、よりリーズナブルな新製品『 Liberty DAC 』が加わったためです。

さらには、筆者が常用している『 Brooklyn DAC+ 』による"MQA-CD"のサウンドがあまりに素晴らしく、是非ともオーディオファイルの皆様に"MQA"の素晴らしさを知っていただきたく思ったからに他なりません。

そして、"MQA-CD"をそのままデジタル入力で楽しんでいただける"MQAデコーダー"を搭載した、Mytek Digital製品の他に、一旦"MQA-CD"をリッピングする必要はありますが、M2TECH『 Young III 』やCocktail Audio『 X45 』、ネットワーク経由で再生可能な機器ではLUMIN『 D2 』やTEAC『 NT-505 』、ESOTERIC『 N-01 』などがあります。

また、"MQAレンダラー"という"MQA"の直接デコードは出来ませんが、前段階の展開に対応した再生ソフトウエア(Audirvana Plus3以降やAmarra Luxe※なお6/1時点ではMacのみ対応)が必要ですが、iFi audioやaudioquestなどの製品があります。これら以外にも対応機が今後増えることは確実です。

現時点で、ハイレゾ配信の"MQA"ソフトはすでに3,000タイトルを数え、6月20日に大手レコード会社ユニバーサルミュージックから100タイトルの"MQA-CD"ソフトが発売されます。ジャンルはクラシック、ジャズ、ロック、ポピュラーと多岐に亘っています。

その「 ハイレゾCD 名盤シリーズ 」は"MQA-CD"と"UHQCD"という2つの仕様を併せ持ち、CDプレーヤーでは通常CDとして、"MQA"デコードに対応したDACにデジタル出力を繋ぐと24bit/352.8kHzのハイレゾ再生ができます。さらにCDプレーヤーの再生時にもUHQCDの長所だけでなく、"MQA"エンコードにより前述の通り、時間軸の「音ボケ」改善効果が得られるため、従来CDよりも高音質で楽しめるとしています。

その"MQA-CD"のサンプラー(音元出版オーディオアクセサリー誌169号付録)を筆者宅『 Brooklyn DAC+ 』と貸出機『 Young III 』で再生しました。

■ 試聴しました

CDプレーヤーのデジタル同軸出力を両機に繋ぎますと、『 Brooklyn DAC+ 』では24bit/352.8kHz、『 Young III 』では352.8kと表示されました。

サウンドは通常CDを大きく上回っており、試聴メモには、実にリアル、低域が深く沈む、音数が非常に多い、響きが豊か、ミュジシャンの気配さえを感じる、音像が立体的、楽器の一つ一つに実在感がある、Dレンジが広い、スケールが大きい、ホールの空調まで感じると、素晴らしいコメントが残っています。

一方『 Brooklyn DAC+ 』では"MQA"デコードをOFF出来るため、試してみると、OFFで再生しますとサウンドが全体に軽くなってしまい、左右のスピーカー間だけに集まり、奥行きは浅く、キメも粗くなった様に感じました。やはり44.1kHzの通常CDのサウンドとなってしまいました。


■ 最後に
このように"MQA"は、実感としてPCMの厚み・立体感とDSDの滑らかさ・音場感の"いいとこ取り"をしているとも感じました。

"MQA-CD"の素晴らしい可能性と簡便性を実感し、ハイエンドオーディオ界に新しいハイレゾ音源"MQA-CD"が普及することを大いに期待したいと思います。(あさやん)