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[ 2018年9月11日付 ]

オーディオケーブルの"伝統と革新"に迫る Vol.1 キンバーケーブル編 〜 純度や素材の追求とは一線を画す キンバーのケーブルとは〜
ハイエンドオーディオ担当の "あさやん" です。
今回は、「オーディオケーブルの"伝統と革新"に迫る Vol.1」と題し、他のアメリカのハイエンドケーブルブランドとは一線を画し、ほぼ発売当時の製品のまま超ロングセラーを続けている、「キンバーケーブル」を取り上げます。同社のケーブル哲学や、ラインケーブル『 HERO/CU 』と、スピーカーケーブル『8TC』のご紹介もいたします。


■ キンバーケーブルとは


KIMBER KABLE(キンバーケーブル)は、1979年に現社長レイ・キンバー氏によって設立されました。研究所と工場を兼ねる本社は創業以来アメリカ・ユタ州オグデンに置かれています。同社のケーブル哲学は、価格と性能の相関関係において最も価値ある製品を開発・製造することで、「伝える信号に何も加えない、外部からの影響を受けない、外部に対しても影響を与えない。」としています。

そのポリシーの下、キンバーケーブルを最も特徴づけている「ブレイド(編み組み)構造」(※)により、外来ノイズの誘導を遮断し、一般的にはシールドで対処する所を、シールドは音を悪くするという理由から排除し、独自のテクノロジーを確立したのです。このため同社は独自の編み機を導入し、複雑な編み組みも自動で行うことが可能となったのです。
※導体を逆方向に螺旋状に編み込む構造

また、絶縁体にも導体以上にこだわっており、エレルギーの残留をゼロとするため、各種テフロン(デュポン社のフッ素樹脂類の商標)、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニール、シリコン等ケーブルの特性に合わせて使用することにより、細密な音像とディテールの再現を目指しているのです。

導体には、銅ないし銀、さらにそのハイブリッドを使用し、そしてヴァリストランドと言われる複数の異なる径の導体を複合した撚り線も使用。ラインケーブルのコネクターやバナナプラグ、Yラグなども全てオリジナル品とし、ハンダにもこだわって最新装置を導入し、全品自社の熟練工が製造しているとのことです。

筆者は河口無線在籍中の90年代の終わり頃、当時の輸入元デノンラボの紹介でレイ・キンバー氏とお話する機会がありました。氏の印象は非常に真面目で誠実そうで、製品作りへの絶対的な自信と、製品の安定感と信頼性を最重視しているのだと感じました。当時の製品の完成度は非常に高く、完成品の電源ケーブルがまだあまり一般化していなかったのにもかかわらず「PK-10G」「PK-14G」(※)が飛ぶように売れたことを鮮明に記憶しています。※PSEの取得が必要なため、現在は輸入されていません。

あれから約20年近く経過していますが、同社は他のアメリカのハイエンドケーブルブランドとは一線を画し、ほぼ当時の製品のまま超ロングセラーを続けています。現在の輸入元D&Mがしばらくプロモーションを控えていたこともあり、最近は当時程注目されなくなっていました。しかし言い換えればそれだけ完成度が高かったとも言えるのです。


■ 『 HERO/CU 』

珍しい4芯タイプのケーブルで、信号ライン2本・グランド2本の強固に編み込まれたCQ-ブレイド構造を採用することで、通常のケーブルと比較した場合に、ブレイド構造の特長である、RF(高周波)ノイズのキャンセルとともに、音声信号の伝達性とリニアリティの向上が得られるのです。

編み組みスリーブには、上位シリーズ同様Tecflex(PET)が採用され、ケーブルのブレイドが正しい位置に固定されることで、磁気変調による直流抵抗を低減できます。これらにより『 HERO/CU 』は、十分な低域を含むリッチなサウンドと瞬発力のあるタイトなサウンドを両立できたとしています。

導体には前述のヴァリストランド高純度銅を採用。径の異なる導体を複合することで、ワイヤー内部で発生する共振や外部からの振動の影響を抑え、整った実在感のあるサウンドとなり、自然な減衰感が得られるのです。

また、高純度で線径の太い線材を使用していますが、単線に比べ柔軟性(取り回しし易い)があり、絶縁体には「空気の次に優れた絶縁体」と言われるフルオロカーボン(フッ素樹脂FEP=テフロン)の被覆が使われ、低損失で内部の導体にも影響を与えないことから、色付けのない透明なサウンドが実現できます。


アンバランス・ケーブルのコネクターには、ソリッドメタルで精密加工された同社オリジナルのULTRAPLATEを使用。接触面は高導電性と耐久性を備え、優れた伝送性能を発揮、中心部はフルオロカーボンの絶縁体と2分割したセンターピンで構成し、高性能を実現しています。一方バランス・タイプのXLRプラグには、信頼性の高いスタジオ・グレードのSwitchcraft製を採用して万全を期しています。

『 HERO/CU 』のサウンドは、同社のケーブル哲学通りのニュートラルなもので、低域や高域の強調感は皆無で、癖のようなものは全く感じませんでした。切れ込みがどうの、高域のアクセントがどうの、低域の量感がどうの・・・という最近のデジタルサウンドをことさら強調するようなケーブルとは全く違う方向性の、安定感・安心感のあるバランスの整った落ち着いたサウンドです。


■ 『 8TC 』




同社のお家芸でもあるへリックス・ブレイド構造を採用したスピーカーケーブル。『 8TC 』のへリックス・ブレイドとは、8+8で16本の導体を、±それぞれ反対の方向に螺旋状に編み込んでおり、複雑で美しい外観をしています。

これにより、外部干渉からのRFノイズのキャンセル、ケーブル自体からのノイズ輻射も防止するのです。またシールドを持たないため、伸びやかで開放的なナチュラルサウンドが得られるとしています。

へリックス・ブレイドは一般的なツイストペア(2本対で撚り合わせたケーブル)とは違い、へリックス・ブレイドではペア8組の導体を反対方向に撚り合わせることで、RFノイズのキャンセルだけでなく、ケーブルの直列インダクタンスを大幅に低減することができ、伝送特性、特に高域特性が大きく改善されるのです。


『 8TC 』は両端バナナプラグ(SBAN)仕様または、両端Yラグ(POSTMASTER33/7.0〜8.75mm径に対応)仕様と、お好きなコネクタを後付けできる、端末処理なしのフリー(プリストリップド)が選択できるようになりました。またインターナル・バイワイヤー仕様(16本の導体を、高音域側8本、低音域側8本に分割して使用)も用意されています。

■ 最後に
そしてもちろん『 HERO/CU 』を含めキンバーケーブルのすべてのターミネーション作業(ハンダ付けやコネクタの取付け)は、米国の工場でのみ、しかも完全手作業で行われ、信頼性を確保しています。特にハンダ付けは最新の窒素支援型ハンダ付けユニット(ニトロゲン・アシスト)を使うことで、より低い温度でのハンダ付けを可能にし、空気を遮断してハンダ箇所の酸化を防止する従来より優れた方法で、音質向上を果たしたのです。

特に『 8TC 』は加工の難しいことで有名で、綺麗に仕上げることは至難の技でした。今回プラグ付きケーブルの製作作業は、すべて熟練のクラフトマンによって行われ、ケーブルの長さより端末と端子の圧着の強さでの抵抗値の変化も考慮して作られており、外観の仕上がりはもちろんのこと、音質にも大きな差となって表れているとしています。

サウンドは、キンバーケーブルに共通のナチュラルなもので、強調感や、はったりを感じさせない余裕のある伸びやかさ感じさせるものです。豊かな音楽性は、数あるケーブルの中での標準モデル(基準ケーブル)と言えるケーブルだと感じました。

お使いの愛機が本来持っているサウンドを全て引き出してみたい方にこそ、キンバーのラインケーブル『 HERO/CU 』とスピーカーケーブル『 8TC 』をお勧めします。(あさやん)


『HERO/CU』の主なラインナップ


    『8TC』の主なラインナップ