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[ 2019年 2月 26日付 ]

 日本が世界に誇れるスピーカー!クリプトン『 KX-3Spirit 』 〜密閉型・アルニコマグネット・クルトミューラーコーンへのこだわり〜

こんにちは、ハイエンドオーディオ担当の "あさやん" です。今回は、最激戦区の2ウェイ ブックシェルフ型スピーカーにおいて、国産でひとり気を吐くクリプトン『 KX-3Spirit 』を取り上げます。


■ 2ウェイ ブックシェルフ型の現状
2ウェイ ブックシェルフ型、それには入門機から超ハイエンド機まで存在し、スピーカーシステムの構成としては、シンプルさと広帯域再生を両立できる唯一無二の存在です。

かつては国産が、各価格ランクに多数の機種をラインナップしており、人気を博していました。国内のオーディオ草創期には、パイオニアやオンキヨー、そして一世を風靡したダイヤトーン、ヤマハ、ビクターなど、超ハイエンドを除いて、国産が台頭していました。

しかし世は流れ、現状では国産スピーカー全体に今や見る影がないのはご承知の通りです。その国産が総崩れとなっていく過程で、ヨーロッパ系スピーカーがドドーッと押し寄せ、今や国内市場を席巻してしまった感さえあります。

その理由は、C/Pの高さはもとより、メーカーごとの音質・デザインの個性、さらには日本のマニア層、特にクラシックファンやボーカルファンが好むヨーロピアン・サウンドが牽引したのだと思います。

■ 独自の道を歩み続けるクリプトン
こんな中、独自の道を歩み続けるクリプトンは、今や国内では貴重な存在です。そして同社は、スピーカー事業に参入(2005年)して以来、一貫したポリシーのもと、世の中の動向に惑わされることなく、コンスタントに製品を開発し続けてきたのです。

初代機の「KX-3」以来、その製品開発と音決めを担っているのは、言わずと知れた元ビクターのスピーカーの設計者で、スピーカー技術者としてはレジェンドとも言える存在の渡邉 勝氏です。渡邉氏のスピーカー設計の出発点ともいえるスピーカーこそ、かの有名な名機ビクター「SX-3」なのです。
(余談:私が初めてのオーディオシステムに導入したのが「SX-3」でした。)

その「SX-3」こそ、クリプトン『 KX-3Spirit 』の原点ともいえます。まず型番からして「3」であり、いずれも密閉型2ウェイ、独クルトミューラーコーンのウーファー、ソフトドームツイーター、そしてアルニコマグネットなのです。更にそのまた原点こそ、エアーサスペンション方式で有名な米国Acoustic Research社の「AR-3a」だったと渡邉氏は言います。

渡邉氏がそのぶれることないポリシーを貫けてこられたのは、音楽性が豊かな中高域と、躍動感のある伸びやかな低音再生のために、かたくなに密閉型とMade in Japanにこだわってきたのだと言います。「KX-3」シリーズの第5世代にあたる『 KX-3Spirit 』こそ、渡邉イズムの集大成でもあります。

■ クリプトン『 KX-3Spirit 』とは
前作からの大きな変更点は2つ。ツイーターとエンクロージャーです。

【ツイーター】
これまでのピュアシルクドーム型から、上位機で採用されていた35mmピュアシルク・リングダイアフラム型ツイーターに変更され、高域再生限界が35kHzから50kHzへと大きく拡大しています。中心部分に砲弾型のフェイズプラグを持たせることで、高域反射波が中心軸をまたいでの干渉を防止し、高域特性を伸ばせたのだとしています。元来ハイレゾに積極的なクリプトンとしてはこれは当然の成り行きだと思います。

【エンクロージャー】
前作までの針葉樹系高密度のパーチクルボード・天然木突き板仕上げから、高級家具にも使われ音響的に優れて、見た目も美しい木目の「スモークユーカリ」のエンクロージャーに高級塗料のポリエステル仕上げ(ピアノ塗料と同じ)を施し、響きの豊かな中低音再生に貢献したのです。

更に外からは見えないため意外と見逃されがちですが、内部配線材には「マグネシウム単芯にPC-Triple Cの撚線を巻きつけた」特殊な最新のスピーカーケーブルを採用。定評ある「かしめ方式」を採用した低歪みの高音質ネットワーク回路と併せて、濁りのない透明でナチュラルな高音域再生を実現できたとしています。

勿論、同社のポリシーを具現化した従来技術を本機も踏襲しています。

【アルニコマグネット】
ウーファーとツイーターには、高価で貴重な「アルニコマグネット磁気回路」を採用しています。アルニコマグネットを継続して使い続けていることに敬意を表するとともに、同社の執念さえ感じます。ウーファーはこだわりの内磁型アルニコとしています。
※アルニコは希少金属のコバルトが必要で、国際情勢や戦争などよって価格が影響されやすく、かつてはJBLの4343と4343Bなどで音質の差に失望したマニアも多かったのではないでしょうか。それ程にアルニコマグネットは、締まりのある低域と密度感のある味わい深い高域再生が魅力です。

【クルトミューラーコーン】
前述の「SX-3」やタンノイ、かつての独ブラウンなどにも採用され、音質の良さと音楽性に定評のある伝統の「クルトミュラーコーン」をウーファーに採用しています。十分な剛性と内部損失を持ち、エッジワイズ巻ボイスコイルやハイコンプライアンス設計により、低域再生限界 35Hzを達成し、熟成した魅力的な中低域再生を実現しています。

【内部吸音材】
「ミスティックホワイト」と「ウール(純毛)」のハイブリッド吸音材と独自の吸音材チューニングにより、理想的な制動特性を獲得し、密閉型エンクロージャーのピュアな低域再生というメリットを生かすことに成功したのです。

これらの徹底したこだわりこそ、国産クリプトンのKRIPTONたる所以だと思います。

■ 日本橋1ばん館リファレンスルームで試聴


癖を全く感じさせない自然な音調で、ヌケの良さは抜群。付帯音やザワザワ感が皆無で、歪みのない透明感はまさに生音(なまおん)そのもの。

弦楽器は繊細で滑らか、棘や歪みっぽさは皆無で、素材の良さから来る木質感は絶品です。ピアノの立ち上がりがスムーズで、響きが豊かで混濁感は微塵もありません。

声は澄み切って爽やかに伸びきり、決して出しゃばり過ぎることはありません。特に日本人の女声ボーカルは抜群で、ちょっと他では味わえないしっとり感です。

密閉箱ならではの締まった低音ながら、厚みは十分確保しており痩せることはありません。この温かみを伴った鮮度感こそが、海外製にはない"クリプトンサウンド"なのです。

■ 最後に
日本が世界に誇れるスピーカー、クリプトン『 KX-3Spirit 』。これこそ、ポジティブな意味において、真の『 ジャパニーズ・サウンド 』の確立です。
(あさやん)


今回ご紹介した クリプトン『 KX-3Spirit 』 はこちら

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