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[ 2019年 5月 14日付 ]

 凄い『 達磨 』スピーカーが登場!

こんにちは、ハイエンドオーディオ担当の "あさやん" です。

凄い『 達磨 』スピーカーが登場! 今回は、デンマーク発の鋳鉄製「オンリーワン」スピーカー『 JERN 12WP 』を取り上げます。


■ JERNとは
JERNは「ヤーン」と読み、デンマークの歴史ある鋳造メーカーです。ちなみに、JERNとはデンマーク語で「鉄」(英語のアイアン)の意味だそうです。

同社は、高度な鋳造技術を生かしたスピーカーエンクロージャーを開発。その素材は「特殊ネズミ鋳鉄(Vibrakill)」で、アルミニウムやMDFに比べて遙かに振動減衰率が高く、しかも比重が高いことが大きな特徴です。

※鋳鉄:2%以上の炭素を含む鉄合金で、一般的にいう鋳物(いもの)のこと。通常より多い、4%近くまで炭素量を増やしたものをハイカーボン鋳鉄といい、炭素量が多いと黒鉛(グラファイト)の結晶が固化するため黒色をしており、その断面の色からネズミ鋳鉄とも呼ばれます。

■ 鋳鉄製スピーカー『 JERN 12WP 』


この後ろ姿、どう見ても夜店に並んでいた、あの赤い達磨そのものです。これが、JERNの鋳鉄製スピーカー『 JERN 12WP 』です。でも、このデザインは決して奇を衒(てら)ったのではなく、必然から生まれた姿・形なのです。

鋳鉄製、しかも密閉型と聞いて、おそらく過去に鉄製スピーカーやガラスの球形スピーカーを一度でもお聴きになったオーディオマニアの皆様は、伸びやかさのない「ふん詰まり」で、乾いた「無機的なサウンド」を想像されるに違いありません。

かく言う私自身も、実際に現物を聴くまではそう思っていました。(過去にそういうスピーカーが存在したのも事実なのですから…)

JERNは、自由に形が作れる鋳造技術によって以下のメリットが得られるとしています。

  1. エンクロージャー全体を曲面で構成できるため、対向面を持たず、内側に定在を抑える凹凸加工を施すことで、特定の周波数で「共振しない」理想の形状です。

  2. エンクロージャー内部の角などで音波の波面が乱れ、はね返って周波数特性の劣化を招く「回析効果」が抑えられる。

  3. ウーファーとツイーターからの音波の到達時間を、形状によって調整できる「タイムアライメント」が図れます。いわゆる「リニアフェーズ」です。

  4. 鉄を使うことで、その剛性と重さを利用して、振動板以外のユニットの不要な振動を抑えつけ、箱鳴りを完全に回避できます。

しかし、従来の同種のスピーカーは角形のエンクロージャーが殆どで、これらのメリットが享受できず、どうしても前述のようなヌケの悪い重苦しいイメージが付きまといました。

『 JERN 12WP 』のユニット構成は、146mmウーファーと19mmツイーターの2ウェイで、低域にはWavecor(デンマーク由来で中国生産)製グラスファイバーコーンウーファー、高域にはSEAS(ノルウェー)製ソフトドームツイーターを採用しています。

ネットワークは位相特性と音質を重視して、高品位Mundorf(ドイツ)製ポリプロピレンコンデンサーと、空芯コイルによるシンプルな6dB/octとしています。このネットワークとリニアフェイズにより、2ウェイでありながら、あたかもフルレンジの様な一体感を狙ったのです。




また、付属のゴム製リングによる台座を使用することで、左右はもちろん、仰角の調整も可能で、ご使用シーンでの自由な設置が可能です。

エンクロージャーのカラーは赤(デンマークレッド)の他に、黒(ノルディック・ブラック)、灰(キャスティング・グレー)、白(ポーラー・ホワイト)の4色あり、お部屋に合わせてお選びいただけます。なお、スピーカー端子は、定評のあるWBT(ドイツ)です。

JERNの本国HPによりますと、『 JERN 12WP 』の開発意図は、「小さなお部屋の壁の近くに置いて、サブウーファーなしで聴くためのスピーカー」とあります。

また、JERNは量産メーカーではなく、スピーカー一台一台を数十年の経験を持つ熟練工によって手作りされているとのことです。

さらに、JERNはスピーカーは家具やアートと同様、私達の家の一部であり、美しくスタイリッシュなことも非常に重要だと考えています。鋳鉄を使うため、他のハイエンドスピーカーとは違い四角い箱にこだわる必要がなく、素材や形状を自由に選ぶことができ、音質を犠牲にすることなく、新しいスタイルのスピーカー作りにチャレンジできたのです。

■ 『 JERN 12WP 』の白色をお借りして、日本橋1ばん館で試聴しました。

▲ 正面から


▲ ネット付


▲ 後ろから


▲ 真上から


写真のように、白は雪だるまそのものです。

メーカー名の通りの鉄(JERN)製で、その大きさからは想像できない重さです。私自身、思わず落としそうになりました。

重さ約12kgですが、見た目がかわいいだけに余計に重く感じるのでしょう。ゴムのリングの上に乗っていますので滑ることはないのですが、持ち上げたり移動する際は十分な注意が必要です。

試聴には、ESOTERIC「P-05X」→「D05X」→「F-03A」を使用しました。

一聴して、想像とは違うその高品位なサウンドに度肝を抜かれました。音を出した瞬間、思わずスピーカーセレクターを間違えたのかと思いました。いつも試聴室に置いてある後ろのB&Wが鳴っているのではないのかと、思わず耳を近づけたほどです。それほどにスケールが大きく、奥行き感があり、音離れが良いため、スピーカーから音がしなかったのです。

過去に聴いた鉄箱やガラススピーカーとは真逆の、実にヌケの良い伸びやかなサウンドで、詰まった感じは微塵も感じませんでした。密閉方式ならではの反応の素早さが素材によってさらに生かされ、聴き手に迫って来るものを感じました。

高域は滑らかで透明感があり、中域にはハリがあり、低域は締まり、まとわりつく感じもありません。超低域こそ大型システムのそれとは違いますが、中低域のキレが良く、解像度も高く、ダブついたりこもることは皆無でした。

『 JERN 12WP 』の形状が最も生きているのが空間表現力です。スピーカーから完全に音が離れ、立ち上がりも素早く、立体的で、前後感も正確に表現されました。特に、ボーカルは口が非常に小さく、女声は艶めかしささえ感じました。

そして音が消えた瞬間の静けさこそ、JERN(鉄)の本領発揮と言ったところで、とにかく静かで抜群のS/N感でした。また、刺激音がなく、長時間リスニングには持って来いではないかとも思いました。

いつもの試聴ソフトであるLivingston Taylor「ink」の冒頭の口笛や、井筒香奈江「Laidback2018」のボーカルのリアルさは秀逸でした。ソフトはもちろん、オーディオ機器やアクセサリーの違いまでもダイレクトに出してくる、繊細なスピーカーでもあります。

■ 最後に
確かに、解像度や迫力、スケールや大音量を狙うなら、ほかに幾らでも選択肢はあると思いますが、このJERNにしかない表現力、そして何よりこのユニークなフォルムこそ『 JERN 12WP 』が、新時代のオーディオへの一つの指針になるかも知れません。

まさに、『 オンリーワン 』スピーカーです。
(あさやん)


今回ご紹介した『 JERN 12WP 』はこちら