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ハープの革新者メストレの最新アルバムは、名協奏曲2編を中心に据えたロシアン・アルバム。
グザヴィエ・ドゥ・メストレは、出身地トゥーロンの音楽学校でハープを始め、1998年著名なUSA国際ハープ・コンクール(ブルーミントン)において1位と2つの解釈賞を受賞。同年、誰もが望む地位である世界最高峰のオーケストラ、ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団のソロ・ハーピストに就任。その地位を辞した後は、ハープという楽器の概念を大きく変える革新者として世界中を飛び回っています。
このアルバムでは、グリエールとその弟子モソロフのロマンティックで近代の最も重要なハープ協奏曲と、グラズノフの作品とメストレ自身の編曲によるチャイコフスキーの「こんぺい糖の精の踊り」という興味深い組み合わせによるものです。
レインゴリト・グリエール(1874-1956)のハープ協奏曲Op.74は、彼の作品の中でも最も頻繁に演奏され、愛されている作品のひとつです。流れるような美しい音型、流れ落ちるようなアルペジオとグリッサンドなど、ハープの名人芸が際立つ作品である。グリエールの協奏曲に対抗して、弟子のアレクサンドル・モソロフ(1900-1973)も作曲したハープ協奏曲は、フォークソングのようなシンプルなメロディを、ハープが和音や旋律の装飾やアルペジオで弾きまくるのが特徴で、特に第1楽章ではハープのソロやカデンツァが多く登場し、ヴィルトゥオーゾ的な雰囲気を醸し出しています。グザヴィエ・ドゥ・メストレがバレエへのオマージュとして選んだのは、アレクサンドル・グラスノフ(1865-1936)のバレエ『ライモンダ』から「前奏曲とロマネスカ」です。「前奏曲」は「ロマネスカ」の短い前奏に過ぎませんが、バレエの主役ライモンダがリュートを弾く様子が描かれており、リュートの名人芸ともいえるアルペジオをハープが演奏します。
アルバムの最後は、チャイコフスキー(1840-1861)のバレエ曲『くるみ割り人形』からの「こんぺい糖の精の踊り」を、メストレが自らハープに編曲した作品。元々はチェレスタが活躍する曲ですが、メストレはこの曲がハープでより鮮やかに響くことに気がつき、編曲・演奏しています。
共演は、最近では指揮者として活躍するナタリー・シュトゥッツマンにタクトと、ケルンのWDR交響楽団(旧称のケルン放送交響楽団)で、メストレの深い音楽性、色彩豊かな温かい音色など、絶妙なる演奏と、ハープという楽器の魅力を最大に引き出した演奏といえます。
【演奏】
グザヴィエ・ドゥ・メストレ(ハープ)
ナタリー・シュトゥッツマン(指揮)
WDR交響楽団
【録音】
2021年5月25-27日、ケルン、フィルハーモニー
収録情報
グリエール:
ハープ協奏曲 変ホ長調 Op.74
グラズノフ:
バレエ音楽『ライモンダ』より「前奏曲とロマネスカ」
モソロフ :
ハープ協奏曲
チャイコフスキー(メストレ編):
バレエ音楽『くるみ割り人形』より「こんぺい糖の精の踊り」
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