ビートルズと東欧の歌姫の出会いから生まれた、大人のウィンター・ボッサ。
ポーランドを代表するジャズ・シンガー、グラジーナ・アウグスチクのシックな歌声と、サウダージ感溢れるブラジリアン・ギタリスト、ポリーニョ・ガルシアの軽やかなアコースティック・ギター&哀愁を帯びたヴォーカル。
ガット・ギターで紡がれる柔らかなボサノヴァと、アンニュイな雰囲気をもった歌声。互いに寄り添い、耳馴染みのあるメロディーを、時折ギタリストのジェントルな歌声を交えてそっとつぶやく。それはまるで黄昏時の潮風の香りに誘われるような、またはまどろみの中を泳いでいるような、どこかノスタルジックな印象を思い起こさせる。
この『Beatles Nova』は、ポーランド出身のジャズ・ヴォーカリストのグラジーナ・アウグスチクと、ブラジル出身のギタリストのポリーニョ・ガルシアが、ビートルズの楽曲をボサノヴァで綴ったカヴァー・アルバムである。この作品、実は2012年にポーランドのMTJというマイナー・レーベルから、ひっそりと発売されていたが、当時はあまり情報がなく、熱心なジャズ・ファンでない限り知られることはなかった。本作は単なるビートルズ・カヴァーとは、一線を画す内容であり、もちろんボサノヴァ・アルバムとしても十分にクオリティーは高い。程よい温度感に包まれたサウンドは、晴れ渡る午後、というよりは夕暮れや静かな夜、それこそ雨の休日にもふさわしい。それはつまり東欧と南米というアーティストの出会いから生まれた稀有な結晶でもあり、たしかにボサノヴァではあるけれど、一体どこの国なのか、いつの時代なのか、一聴してもはっきりとはわからない無国籍の音楽が描かれている。
メンバー:
グラジーナ・アウグスチク (vo)
ポリーニョ・ガルシア (vo, g, perc)
エイトル・ガルシア (perc)
ブレット・ベントラー (b)
スティーヴ・アイゼン (fl, s)