アメリカの鬼才指揮者デニス・ラッセル・デイヴィスと、オーストリアの名門オーケストラ、リンツ・ブルックナー管弦楽団が、2003年から5年がかり進めてきた全10タイトルからなる「ブルックナー:交響曲全集」の完結編2枚のうちのひとつ「交響曲第5番」。
2003年9月の第4番に始まり、ほぼ1シーズンに2曲のペースで進められてきた全曲演奏と録音が5年がかりで完結する。
1935年にブルックナーの故郷リンツでその名を冠することになったリンツ・ブルックナー管は、名前の通り、ブルックナー演奏において卓越した伝統を持つ。2002年に首席指揮者に就任したD.R.デイヴィスは、録音面では、フィリップ・グラスの新作(交響曲第6番〜第8番、オペラ「ヴォヤージュ」「ケプラー」)と並行して、このブルックナーの交響曲全集にその力を傾注してきた。1878年に完成した交響曲第5番は、「対位法的」とも称されるように、特に第4楽章に大規模なフーガが組み込まれていることが特徴的。鬱然とした響きに始まり圧倒的な神の勝利を歌いあげるかのようなクライマックスをむかえる大曲で、ギュンター・ヴァントや朝比奈隆が愛奏した難曲でもある。