ショパン最晩年の芸術的傑作、幻想ポロネーズ。
傷つきやすさゆえか、誰も他人を寄せつけないカミソリのような鋭さを持ったショパンには、内面の苦悩や葛藤を表現した作品も多い。それも、ベートーヴェンのような強い意志の上に立つ哲学的な苦悩ではなく、繊細で感じやすい心がそのまま表されているような情緒面での苦悩だ。その苦悩を経て辿り着いたのは、ベートーヴェンで言うところの「悦び」ではなく、誰にも打ち明けることのなかった心のうちを最後の最後にそっと告白して天に昇っていくような「昇華」だったのではないかと思う。最後の大作、幻想ポロネーズはそんなショパンの生涯を振り返った独白なのではないか。
松本和将(CDライナーノーツより
収録:2012年1月18日 東京文化会館小ホールにてライヴ収録