1962年3月発売のデビューアルバムでは、ニューヨークで活動始めてわずか10ヶ月、弱冠20歳のボブ・ディランが既に何十年と熟成されたブルースマンの様な、老獪なトラッド・フォークのボーカルを聴かせましたが、それは「永遠に彷徨する魂」ディランの序章でしかなかったのです。セールス的に失敗に終わったデビュー作から、およそ1年間かけて制作されたセカンド・アルバム「フリー・ホイーリン」。プロデューサーのジョン・ハモンドは、1962年4月、6月、10月、11月と「フリー・ホイーリン」のためのレコーディングを重ねながら、リリースのタイミングを見極め、1963年春に遂に歴史に残るアルバムを完成させます。そこにはプロテスト・フォークの枠に収まりきらない、「風に吹かれて」、「はげしい雨が降る」など世界を変えるほどの曲が含まれていました。この1年間こそ、フォークの神、いや米国音楽の神がディランに与えた期間だったのでしょう。これはそんな奇跡のアルバムの制作を辿る、セッション録音集です。 (C)RS