音色の魔術師、アレクサンドル・タロー、2004年録音の「バッハのイタリア風の協奏曲集」が再登場します。タローは2001年録音のフランス・バロックの巨匠ラモー(1683-1764)の作品をモダン・ピアノで弾いて一躍注目されました。それに続くのがこのバッハ作品集です。イタリア風の協奏曲集、と題し、イタリア協奏曲をはじめ、バッハが魅了されて編曲したヴィヴァルディやマルチェッロの作品をセレクト。ディスク冒頭のシシリエンヌから、モダン・ピアノのひんやりとした質感を漂わせながら、ピアノ、しかもタローの手による演奏でないと為しえないような世界が広がります。イタリア協奏曲では非常に輝かしい第1楽章、第2楽章での静けさ、そして快速パッセージがきらびやかに飛び交う第3楽章は素晴らしい出来栄えです。快速な楽章での雄弁さはもちろんのこと、緩徐楽章での、タローの人の心をわしづかみにして放さないような、魅惑的なまでの官能すら感じさせる音楽はあらためて聴いても圧巻。 (C)RS