春畑セロリのアレンジにデュエットゥの演奏が冴える!ピアノ連弾の新しい世界がはじまります!
「ベートーヴェン連弾パーティー」を書きながら、私はこの、少し狂おしいくらいの彼の音楽に、かなりうなされ気味だった。バッハ、モーツァルトの編曲に比べ、「もう、どうにもならん」感が付きまとって、ヘトヘトになった。極め付けは、シンフォニーの断片を年代順に全楽章並べた、荒技リレー連弾。実のところ、この人は楽聖などと言われてはいるが、案外、融通の利かない唐変木なオジサンで、バッハのような自由さも、モーツァルトのような闊達さもなく、忍耐と根性で作曲していた努力の人なのではないか、と思ったことがある。逆に、そこが人間的で愛すべきだなんて……。ところがどうしてとんでもなかった。9曲のシンフォニーはとにかく凄い。天才とか、名手とか、したたかとか、そういうのとは違う。どう言ったらいいだろう。「なんだかイッちゃってる」のだ。常人が思いつかないような楽想が多々ある。というか、これを全部ひとりの人間が成したというのが信じ難い。紙一重に近い。一気に9曲並べて、それを実感したとき、まさしくあの熱情ソナタの爆笑を卒然として思い出し、少なからず背筋が戦慄したのであった。[春畑セロリ 解説より抜粋]