SHM-CD
アシュケナージ最愛のチャイコフスキーの名作へのアプローチであり、もちろん潤い豊かで初々しい。導き出される音ひとつひとつが実に詩的で抒情的だし、聴き手を包みこむような広がりがある。それはただ単に鳴り響く音の美しさに心奪われる演奏ではなく、音の背後に聴き手がもうひとつ自分の世界を見出していく、そんなかけがえのない憩いとも慰めともいえる経験に誘う演奏といってもよいだろう。音楽家としてさらに円熟し、前人未踏の領域に立ち始めたアシュケナージの世界の豊かさに改めて圧倒される素晴らしいチャイコフスキーである。諸石幸生(ライナーノーツより) (C)RS