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[ 2020年 3月 17日付 ]

 マランツ「12シリーズ」の国内専用プリメインアンプ『 PM-12 OSE 』の全貌に迫る!

こんにちは、ハイエンドオーディオ担当の "あさやん" です。
本日は、マランツの中核を担う、人気のプリメイン「PM-12」のもつ潜在能力を、限界まで引き出そうと果敢に挑戦した意欲作『 PM-12 OSE (Original Special Edition) 』をご紹介します。


次回取り上げる予定のSACD/CDプレーヤー『 SA-12 OSE 』と共に、”マランツの耳”とも言われる”マランツ サウンドマネージャー”の尾形氏に、日本橋1ばん館のリファレンスルームで試聴を交えながら、オリジナルとの違いを中心に、お話を伺いました。

オリジナルの「PM-12」は、その前年に登場したマランツのフラッグシップモデル「PM-10S1」のコア技術である「電流帰還型プリアンプ+スイッチング・パワーアンプ構成」を継承しながら、約半分の価格を実現するという、非常に難しい使命を帯びて誕生したのだと言います。具体的には「PM-10S1」の60万円に対して30万円と(いずれも税別)、本当に半額を実現したのでした。

そのために、構成パーツの選択にはコストと性能のバランスをとる必要があり、前作にはある程度の妥協は実際あったと、尾形氏は正直に述べられていました。しかしそのプリアンプ回路やパワーアンプ部などの完成度は現時点でも十分高いうえ、一から設計をやり直すとなると、開発期間と開発コストが必要で、かなりのコストアップは避けられないとの結論に達したのだそうです。

そこで、日本国内専用モデルとして音質にかかわる部分を見直すことで、音質の向上を目指したのです。仕様的にはマイナーチェンジと言えますが、実際には大幅なグレードアップを果たしたのです。その主な改良部分を順に見てまいりましょう。

■ オリジナルからの改良部分
(1)金属皮膜抵抗の採用
オリジナルの「PM-12」の潜在能力を引き出す、最も近道として選んだのが、音質に最も影響するプリアンプ部に使われている抵抗のうち、17個を高性能な金属皮膜抵抗に置き換えることでした。

なお尾形氏曰く、基板に使われているコンデンサーは一切変更してないとのことでした。設計段階ではコンデンサーの交換も考え、実際に試してみたものの、オリジナルの持つ”旨み”以上のものは引き出せなかったそうです。結果、抵抗のみの変更になったのです。

(2)銅メッキシャーシの採用

本機を前面から見ると分かりませんが、リアパネルや内部を見るとシャーシがオリジナルのシルバーのシャーシと違い、銅メッキされたシャーシに変更されているのが分かります。非磁性体で導電性の高い銅をシャーシにメッキすることで、うず電流を抑え、シャーシ上の電位差が少なくなり、結果ノイズを減らすことができると言います。見た目にも高級感があり、これは上級機「PM-10」に用いられた手法です。

(3)5mm厚アルミトップカバー
オリジナルの一般的な叩けば音のする通気口の開いた薄手スチール製の天板に換えて、重量級5mm厚のしっかりした天板になっています。これも上級機「PM-10」に採用された手法で、コストは明らかにアップしますが、音質的なメリットは計り知れないものがあります。

(4)アルミ削り出しインシュレーター
オリジナルのアルミダイキャスト(鋳造アルミ)製のインシュレーターに換え、アルミの無垢材から削り出されたインシュレーターを採用しています。実際に現物を手に持って比較しましたが、その重量、信頼感の差は歴然で、コストに見合う音質向上に貢献するのは疑いのない所です。

そして、オリジナル「PM-12」を継承した完成度の高い技術は以下の通りです。

■ オリジナルからの主な継承部分
(1)電流帰還型プリアンプ
マランツ独自の高速アンプモジュール「HDAM-SA3」を用いた電流帰還型アンプに、JFET入力とDCサーボ回路を組み合わせた1段構成のプリアンプとすることで、情報量が豊かでハイスピードなサウンドを実現。

(2)プリアンプ専用電源
大容量トロイダルコアトランスやエルナー製のカスタムブロックコンデンサーによるプリアンプ専用電源とすることで、パワーアンプの影響を受けることなく安定した電源の供給が可能。

(3)リニアコントロール・ボリューム
経年劣化のある可変抵抗ではなく、左右のクロストークや音量差を生じないJRC製の最新型のボリュームコントロールICを使用。ゆっくり回すと0.5dBステップで高精度に、早く回すと素早い音量調節が可能な加速度検出システムを採用。

(4)スイッチング・パワーアンプ・モジュール「NC500」
どうしてもスペース的に制約のあるプリメインで、音質を犠牲にせず、大出力と強力なスピーカー駆動力を実現する手段として、Hypex社製NCore「NC500」スイッチングアンプモジュールを採用。スピーカーのインピーダンスにかかわらず周波数特性が変化せず、200W/4Ωの大出力を獲得。パワーモジュールとスピーカー端子間が僅か1cmというのもメリット。

(5)その他のフィーチャー
MM/MCカートリッジ対応フォノイコライザー。純銅削り出しピンジャック&スピーカー端子。視認性に優れた有機ELディスプレイ。本機2台(最大4台)のボリュームを連動させられるF.C.B.S機能によりバイアンプドライブが可能。

■ 試聴しました
『 PM-12 OSE 』のサウンドは、SACD/CDプレーヤーを『 SA-12 OSE 』に固定して比較しました。


まず感じたのは静けさの違いです。明らかに透明度が上がり見通しが良くなっています。S/Nが良くなったため、スケール感も向上し、音楽が生き生きとしてきました。ボーカルにあった若干のかすれ感もなくなり、驚く程ヌケが良くなりました。そして、低音楽器はより深々と力強く沈み込み、鈍さが取れ、歯切れも良くなったのです。

マランツ サウンドマネージャーの尾形氏も、回路は一切変更せず抵抗を換えただけで電気的な変更はなく、実際測定しても全く差は出なかったと言います。しかし、”現実に出てくる音がこれ程変わるとは…”と、設計者自身でさえ正直驚いたそうです。


今回、快く取材に応じて頂いた「マランツ 尾形氏」

それが、5万円(税別)のアップで済んだことに正直驚くとともに、マランツの中核プリメインが大幅なグレードアップを成し遂げたにもかかわらず、それが限定モデルではなくレギュラーモデルだと言うのが最大のトピックです。成熟しつつある国内のオーディオ製品開発の今後の指針にもなりそうです。

(あさやん)


 今回ご紹介した マランツ『 PM-12 OSE 』『 SA-12 OSE 』はこちら
★価格の制約を取り払い、限界を突き詰めたサウンドチューニング
マランツ“12シリーズ”の前作「PM-12」は、新世代のフラッグシップモデルである10シリーズの半額の30万円という価格を実現するという使命を帯びて誕生しましたが、本機『PM-12 OSE』と、SACD/CDプレーヤー『SA-12 OSE』は、製品ラインアップにおける役割や価格帯という制約から解き放たれ、「“12シリーズ”というプラットフォームに秘められた潜在能力を限界まで引き出したい」というスペシャルモデルです。さらに音楽性も高められました。