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[ 2020年 3月 24日付 ]

 マランツ 国内専用SACD/CDプレーヤー『 SA-12 OSE 』の全貌に迫る!!

こんにちは、ハイエンドオーディオ担当の "あさやん" です。
本日は、SACD/CDプレーヤー『 SA-12 OSE 』を取り上げます。マランツの中核を担う人気SACD/CDプレーヤー「SA-12」が持つ潜在能力を限界まで引き出そうと果敢に挑戦した意欲作で、日本国内専用モデルとして、プリメインアンプ「PM-12 OSE」と同時に発売されました。ちなみに、型番にある「OSE」とは「Original Special Edition」の略です。



■ マランツ サウンドマネージャーの尾形氏にお聞きしました。

『 SA-12 OSE 』(最上段)、『 SA-12 』(最下段)

SACD/CDプレーヤー『 SA-12 OSE 』について、"マランツの耳"とも言われる、マランツ サウンドマネージャーの尾形氏に、オリジナルの「SA-12」との違いを中心に、日本橋1ばん館 リファレンスルームでの試聴を交えながらお話を伺いました。

オリジナルの「SA-12」は、マランツのフラッグシップモデル「SA-10S1」のコア技術である「ディスクリートDAC (Marantz Musical Mastering)」を継承しながら、半分の価格を実現するという、常識的には非常に困難な使命を帯びて開発されました。その価格は、「SA-10S1」の60万円に対して30万円(いずれも税別)と、本当にそれを実現してしまったのでした。

しかし、そこにはどうしても、ある程度妥協しなければならなかった部分があったそうです。

使用パーツは、コストと性能のバランスを考えながら選択する必要があり、やむを得ず採用を諦めたものもあったと、尾形氏は正直に述べられていました。とは言え、前作の「SA-12」はその価格としては非常に完成度が高く、今回新たに一から設計をやり直す「全面的なモデルチェンジ」となると、膨大な開発期間とコストが必要になり、当然、製品価格も跳ね上がってしまうと言います。

そこで今回、日本国内専用モデルとして、耳の肥えた日本のユーザー向けに「SA-12」の音質傾向は変えることなく、クオリティにかかわる重要な部分のパーツのみを再度見直すことで、僅かなコストアップで大幅な音質向上を目指したのです。その主な改良部分を順に見てまいりましょう。

■ オリジナル「SA-12」からの改良部分
  1. 金属皮膜抵抗の採用

    オリジナルの潜在能力を引き出す最も近道として尾形氏が選んだのが、DAC以降のアナログステージで使用されている抵抗の一部をカーボン抵抗から金属皮膜抵抗に変更することでした。その数、何と35個(プリメインアンプ「PM-12 OSE」は17個)に上り、それにより若干ではあるものの(ハイエンドではそれが大きい)雑味が取れ、音場空間がさらに広がったのだと言います。

    アンプ同様、コンデンサーは一切変更してないとのことでした。実際にコンデンサーの種類を変えた結果は、明らかに音質傾向が変わってしまったのだそうです。オリジナルの「SA-12」の音質チューニングも手掛けた尾形氏としては、あえて大きく音質を変えたくなかったのだと言います。

  2. 銅メッキシャーシの採用


    リアパネル

    写真のリアパネルや内部を見ると、シャーシがオリジナルのシルバーシャーシと違い、銅メッキされたシャーシに変更されているのが分かります。尾形氏によりますと、銅メッキシャーシの起源は、実に1989年発売のマランツが設計した、フィリップスのセパレートCDプレーヤー「LHH-1000」まで遡るのだそうです。

    非磁性体で導電性の高い銅をシャーシにメッキすることでノイズが低減し、明らかにS/Nが向上して静寂感が改善され、情報量の多さや音楽の深みの再現に結びついたと言います。勿論、見た目の高級感にも繋がっています。

  3. 5mm厚アルミトップカバー

    オリジナルの一般的な、叩けば音のする通気口の開いた薄手スチール製の天板に換えて、重量級5mm厚のしっかりとした天板になっています。コストは明らかにアップしますが、音質的なメリットは計り知れないものがあったと言います。

    ここにも実はマランツ伝統のノウハウが生きているのです。確かに、私が同社の試聴室を訪ねた時、天板を外したリファレンス機器がズラリと並んでいました。それは音の開放感を引き出すためだと、その時聞いた記憶があります(私もある時期、それをまねてプリアンプの天板を外していました)。

    しかし、その状態では市販はできないため、オリジナルの「SA-12」では天板裏側に特殊素材を貼って同様の効果を得ようとしましたが、やはりアルミ製の天板の方が一枚上手だったそうで、空間感が増し、音場感が損なわれなかったとのことです。

  4. アルミ削り出しインシュレーター

    オリジナルのアルミダイキャスト(鋳造アルミ)製のインシュレーターに換え、アルミの無垢材から削り出されたインシュレーターを採用しています。実際に現物を手に持って比較しましたが、その重量、信頼感の差は大きいものがありました。実際に余韻や透明感が向上したのだと言います。

    そして、オリジナルの「SA-12」から受け継がれている基幹技術は以下の通りです。


■ オリジナル「SA-12」からの継承された技術
  1. ディスクリート DAC(Marantz Musical Mastering)

    何と言っても、フラッグシップ「SA-10」と同一回路構成の完全オリジナルのディスクリートDACです。一般的なESSやAKMなどのDACチップを使うのではなく、パーツ選定が自由なディスクリートで組むことができます。独自のアルゴリズムによってPCM信号を一旦1bit DSDデータ変換し、アナログFIR(デジタルフィルター)によって、ダイレクトにD/A変換します。

    また、デジタルフィルター(2通り:トーンバランスを変える)、ノイズシェーパー(4通り:デジタル負帰還技術により、リニアリティとノイズ特性を改善)、ディザー(3通り:信号処理の過程で発生する誤差を回避するため、入力信号にランダムな値を加える機能)はユーザーが任意に設定変更でき、トータル24通りの組合せから好みの音色が選べるという非常にマニアックな機能です。

  2. オリジナルメカ「SACDM-3」

    フラッグシップ「SA-10」と同様のメカで、高剛性なスチールシャーシとアルミダイキャストトレイによって、ディスク回転による振動を抑制し、データの読み取り精度を上げています。さらに、2mm厚のスチールメカブラケットを介して、2重構造のボトムシャーシに強固に固定し、制振性を高めています。

  3. USB-DAC機能

    最大DSD:11.2MHz、PCM:384kHz/32bitに対応。DSD入力時はASIOドライバー(Windowsのみ)でのネイティブ再生とDoPの両方式に対応しています。

  4. フルディスクリート・オーディオ回路「HDAM-SA3」

    マランツ独自の高速アンプモジュールにより、ハイスピードかつ情報豊かなサウンドが得られたとしています。

  5. その他のフィーチャー

    最大192kHz/24bitのPCMに対応する同軸/光デジタル入力。上位機「SA-10S1」に搭載されているクロックより15dBもの位相雑音を改善した超低雑音クロック。純銅削り出しニッケルメッキ出力端子。


■ 新旧試聴比較
SACD/CDプレーヤー『 SA-12 OSE 』のサウンドは、プリメインアンプ『 PM-12 OSE 』に固定して、新旧比較しました。


まず感じたのは音の深みです。オリジナルが綺麗でクリアなサウンドながら、何となく薄く感じられたのに対し、低域の厚みが増し、超低域への沈み込みも感じられるようになりました。しかもそれは透明感を維持したままで、これにより全帯域に渡って透明感が統一されたように感じました。

また、明らかにS/Nが良くなっており、微妙なニュアンスやミュージシャンの動きまで感じたのには正直驚きました。そして余計な音が取れたためか、余韻が増え、空間も広く感じられ、音場感も確実に向上していました。そして極めつきはボーカルで、スピーカーの間にすっくと実物大に浮かび上がったのには驚きました。

マランツ サウンドマネージャーの尾形氏は、回路は一切変更せず抵抗を換えただけで電気的な変更はなく、実際測定しても全く差は出なかったと言います。しかし、正攻法である銅メッキシャーシやアルミトップカバー、アルミ削り出しインシュレーターの採用によるS/Nの改善効果が大きくものを言ったのだそうです。


マランツ サウンドマネージャーの尾形氏

SACD/CDプレーヤー『 SA-12 OSE 』も、プリメインアンプ『 PM-12 OSE 』と同様に、5万円(税別)のアップで済んだことに驚きます。明らかに、1クラス以上グレード上がっています。実力派のミドルクラスのSACD/CDプレーヤーとして本機を自信を持ってお勧めします。

(あさやん)


今回ご紹介した、マランツ 日本国内専用モデル『 SA-12 OSE 』はこちら

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