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[ 2020年 6月 23日付 ]

 アキュフェーズのヴォイシング・イコライザー『 DG-68 』の進化度を探る!

こんにちは、ハイエンドオーディオ担当の "あさやん" です。
本日は、理想的な音場環境を実現する、アキュフェーズのデジタル・ヴォイシング・イコライザー『 DG-68 』をご紹介します。


この《 ヴォイシング・イコライザー 》があれば、使い手次第で新たなオーディオ体験&音楽体験が可能です。それでは最新の『 DG-68 』に至るまでの《 デジタル・ヴォイシング・イコライザー 》の進化の程を見てまいりましょう。

■ 『 ヴォイシング・イコライザー 』とは?
アキュフェーズがいう《 ヴォイシング・イコライザー 》とは、一般的な「グラフィック・イコライザー(グライコ)」機能に加え、「自動音場補正機能」を内蔵しており、これこそ他のグライコとの決定的な違いです。一般的なグライコは測定機能は持っておらず、各周波数ポイントのレベルを手動で増減して調整します。

これに対し《 ヴォイシング・イコライザー 》は、ユーザーが希望する特性に自動で調整できます。これを使うことでリスニングルームの音場特性を自動測定し、ユーザーの思うままに補正する画期的な製品です。

ヴォイシング・イコライザーはアキュフェーズの造語で、その語源の「ヴォイス=Voice」は「声・歌声」であり、オーディオそのものを表しているそうです。また「声楽曲の声部、調律する」などの意味もあるそうです。
《 デジタル・ヴォイシング・イコライザー 》の第1世代機は1997年発売の「DG-28」で、それまでのグライコの概念を大きく変えたエポックメイキングな製品でした。それまでマニア層を中心に「ピュア信仰」「音質調整(トーンコントロール・グライコ)不要論」が蔓延していた当時、それは日本のオーディオ界に衝撃を与えたのでした。

1997年当時私が在籍したいた河口無線で、単一アイテムとしては全てのオーディオコンポーネンツの中で、年間で最も販売数・金額とも大きかったのがその「DG-28」だったのです。一般的なグライコしか存在しなかった当時、オーディオマニアが「DG-28」に飛びついたのでした。「DG-28」はそれ程インパクトのある製品で、当時のデジタル技術やデバイスのレベルでは本当に画期的だったのです。

今でも非常に印象に残っている出来事がありました。それは河口無線でのあるメーカー主催(アキュフェーズ以外)の試聴会でのことです。当日講師としてお招きした、故 菅野沖彦氏が突然店頭の「DG-28」を貸して欲しいと言われたのです。そして当日使用するプリとパワーの間にその「DG-28」を繋がれ、スーッと液晶画面をなぞられて「こんなのもですかね」と、ご自分がベストだと感じた試聴室の音場特性を示されたのです。
氏は勿論自宅でも「DG-28」を使っておられ、部屋の特性はそれぞれ違うのだから、「レコード制作者が意図してるサウンドを出すためには絶対にこれが必要なのだ。」と力説しておられました。当日の某主催メーカーはそっちのけで・・・。やはりそれはご自分がミキサーでもあり、レコード演奏家でもある菅野氏ならではの考え方で、その言葉の説得力は半端ではありませんでした。(それが前述の年間ベストセラーに通じたのだと思います。)

その後、2002年「DG-38」、2007年「DG-48」と改良を重ね、音場の自動測定と自動補正を進化させて来ました。2013年には「DG-58」を発売し、オーディオアクセサリーの範疇でありながら、一部のマニア層には必需品として、その存在価値を高めて来たのです。そして今回ご紹介します『 DG-68 』が、第5世代機として登場しました。

前作と大きく変わったのがユーザーインターフェースで、操作性が大幅に向上しました。これは高度な自動測定・補正機能を誰でも使いこなせるように見直した結果で、ディスプレイのメインメニューがシンプルになり、メモリーやキーボードの文字も大きく分かりやすくなり、見やすく使いやすいモデルとなっています。

ヴォイシング(音場補正)の時間が、補正の正確さを期すため前作より長くなっています。特にオーディオシステムにおける、低域での再生限界周波数を自動認識して、無理な補正を掛けずにスピーカーの空振りを抑制でき、安心して使用できるようになりました。さらに測定精度も向上させており、ヴォイシングの精度を上げています。

勿論、最新のデバイスを投入し、A/Dコンバーターは前作の176.4kHz/24bitのもの(未発表)から、旭化成(AKM)の「AK5578EN」で352.8kHz/32bitをサポート。このA/Dコンバーターの持つ8チャンネル差動入力を左右4回路(4パラ)ずつ並列駆動とすることで、更なる低雑音と低歪率を達成したのです。

一方、D/Aコンバーターについても前作のESS「ES9018」から「ES9028PRO」とグレードアップし、これを8回路並列駆動(8パラ)させています。これは同社のSACD/CDプレーヤー「DP-750」相当のグレードです。これらの最新デバイスのお陰で、プリ/パワー間にも安心して使える性能を実現できたのです。

その他、前作との違いは、サブソニック・フィルター(20Hz,-18dB/oct.)が付き、ウーハーに悪影響を及ぼす可能性のある超低域をカットし、低域の無理な補正を回避しています。マイクロフォン用のA/DにもAKMの「AK5357」を使用したことで、全高調波歪率+雑音(THD+N)を「DG-58」の0.001%→0.0007%(保証値)まで向上させています。

ヴォイシングの操作は、信号発生器からワーブルトーンを発生させ、音場空間を通過した信号を付属マイク(AM-68)で計測。人間の話し声や騒音などを自動で排除しながら計測するため、高精度な補正が可能です。自動で測定・補正を行うオート・ヴォイシング・コースと、補正後の特性修正を手動で行えるマニュアル・ヴォイシング・コースが用意されています。
また、オート・ヴォイシング・コースでは、フラット特性になるよう調整する「FLAT」と、スピーカーと部屋の特性を活かした調整を行う「SMOOTH」から選択可能です。スムーズ・ヴォイシングでは、音にならない低域の過度な補正をなくしスピーカーへの負担を減らすことで、歪み感のないエネルギッシュな低音再生が可能になったのです。

さらにA/Dコンバーター、D/Aコンバーターには、新たにノイズ対策として同社プリアンプなどで用いられている「ANCC回路(一種の帰還回路で更なる低歪率、低雑音化を実現)」を搭載。またアナログデバイセス製DSP「SHARC ADSP・21489」を採用することで、384kHzまでの入力信号をダウンサンプリングすることなくネイティブ処理が可能になりました。

入出力端子は、アナログは入出力ともRCAとXLRを各1系統、デジタル入出力はRCA同軸、TOS光、そして同社独自のHS-LINK(SACD/CDどちらも伝送可能)を各1系統装備と充実しています。また従来機同様、「目標特性、補正前・後の周波数特性、イコライザーカーブ」などを一つにまとめて、30個のメモリにデータ保存できます。USBメモリによる画面キャプチャーやデータの保存も可能で、他の「DG-68」へ設定を移すこともできます。

斜めからでも見える広視野角IPS液晶の7インチワイドカラーディスプレイを採用。操作は従来機を踏襲しており、イコライザーはカーソルキーでカーブを入力、または付属のスタイラスペンで直接なぞることで設定可能です。ヴォイシング後の周波数特性や、1/3オクターブ/35バンド・リアルタイム方式のスペクトラム・アナライザーと同時表示も可能で、特性を把握しつつ適切なイコライジングができます。

■ まとめ
『 DG-68 』の最大の進化は、A/Dコンバーター、D/Aコンバーターがそれぞれ最新のデバイスになっており、プリ/パワー間に接続しても、今まで以上に音質劣化が無いことです。また、アルゴリズムも見直しが入っており、よりスムーズでナチュラルな補正が可能となっています。

特に低域の補正については、スピーカーの特性や再生限界を把握した上で、無理な補正をあえて加えることなく、ユニットを保護し安全安心で使用できるようになったのは大きいと感じました。

お部屋の限界に直面しているベテランのオーディオマニアの方にこそ、デジタル・ヴォイシング・イコライザー『 DG-68 』をぜひお使いいただきたいと思います。

(あさやん)


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