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[ 2020年 7月 7日付 ]

 フィル・ジョーンズ氏が率いる エアパルス『 A80 』の新境地を探る!

こんにちは、ハイエンドオーディオ担当の "あさやん" です。
本日は、スピーカーエンジニアのフィル・ジョーンズ氏が開発したハイレゾ対応アクティブ・スピーカー『 A80 』をご紹介します。


『 A80 』は、リーズナブルな価格ながら、リボン型ツイーターと11.5cm口径のメタルコーン・ウーファーによる2ウェイ構成で、D/Aコンバーター機能、ウーファー部に40W+40W、ツイーター部に10W+10Wのパワーアンプを内蔵、デジタル入力(光、USB-B)、アナログ入力(RCA2系統)を装備、さらにBluetoothにまで対応しています。

それでは順に見てまいりましょう。

■ 『 フィル・ジョーンズ氏 』とは?
スピーカーエンジニアのフィル・ジョーンズ氏の名前を、一度でもお聞きになった事のあるオーディオファイルは多いと思います。氏は1954年にロンドンで生まれ、1980年コーナー・ホーン「CN-191」で有名な英国ヴァイタボックスにエンジニアとして参加しました。その後1987年にアコースティック・エナジー:Acoustic Energy(AE)を設立し、伝説の名スピーカー「AE-1」を開発。ツインウーファーの「AE-2」とともに一世を風靡したのでした。

その「AE-1」は、ロンドンのアビーロード・スタジオにもニアフィールド・モニターとして導入され、国内でも1990年前後に大ヒットを記録しました。9cmアルミ合金製の小型ウーハーに2.5cmアルミドームツイーターの2ウェイバスレフ型ブックシェルフで、コンパクトなサイズながら1本8kgとかなり重いスピーカーでした。

「AE-1」は人気が高い一方で、非常にアンプ食い(高性能なアンプを要求)の鳴らし難いスピーカーでした。しかしハイエンド大出力アンプでドライブした時のその超リアルなサウンドは圧巻でした。今でもその衝撃は忘れることができません。「AE1」は、それまでの小型スピーカーシステムの概念を変えてしまう程、業界にインパクトを与えた傑作スピーカーでした。

「AE-1」で一躍有名になったフィル・ジョーンズ氏でしたが、AEとの契約の関係でイギリスでのスピーカー設計が不可能になった彼は、1990年アメリカに渡り、ボストンアコースティック(Boston Acoustics)のサウンドデザイナーに就任し、リンフィールド・シリーズと言うスピーカーを発表しました。

その代表作である、ブックシェルフ型の「Lynnfield 300L」は、「AE1」のコンセプトを発展させ、AE時代に比べウーハー径は13cmと大きくはなりましたが、それでもアメリカのスピーカーとしては異例な程小さいウーハーを搭載していました。「Lynnfield 300L」は、一時期日本でも注目されました。

そして、1994年メーカーから離れ、自身のブランドであるプラチナム・オーディオ(PLATINUM AUDIO)を起ち上げ、氏のそれまでの主張を具現化した「SOLO」を開発。ウーハーに口径9cmのメタル製振動板を採用し、同心円状に3本のリブを加えて剛性を向上させ、小口径ながら26mmのストロークを確保し、サイズを超えた低域を実現していました。ツィーターも25mmのメタル製でした。

一方で、氏は奇才ぶりを発揮。それまで蓄積してきたスピーカー設計のノウハウを結集することで、1997年当時業界最高価格(2000万円)の、高さ180cm以上もある超弩級の巨大なオールホーン型スピーカー「Air Pulse 3.1」を発表。プロオーディオの経験を生かした高能率コンプレッションドライバーを搭載するなど、多くの点で画期的なスピーカーシステムでした。日本国内でも数セット販売したとか・・・。

その後、AAD(アメリカン・アコースティック・デヴェロップメント)のブランドでスピーカー開発しながら、自らもベーシストとして活躍する氏は、2002年にフィル・ジョーンズ・ベース(PJB)を設立し、ベースプレーヤー用のハイファイ・アンプを開発するなど精力的な活動を経て、2004年プラチナム・オーディオ・システム・カンパニーに参加し、エンジニアとしてエアパルス・ブランドを牽引しているのです。

■ 『 A80 』のユニット構成

本機の最大の特徴はホーンロードをかけたリボンツイーターの採用です。かつてのPIONEER「PT-R7」に似た形状で、強力なネオジウム・マグネットの磁気回路でアルミニウム・リボン・ダイヤフラムをドライブし、綿密に計算された独自形状のホーンによって均質で広い指向性が得られたとしています。


ウーファーは、フィル・ジョーンズ氏のアイデンティティでもある11.5cmの小口径ウーファーを採用。硬質アルマイト処理されたアルミ合金振動板と、軽量化されたアルミ製ボイスコイル、高剛性鍛造マグネシウム合金フレームに取り付けられた強力なネオジウム磁気回路によって駆動されています。

■ 『 A80 』のフルデジタルアンプ
本機の心臓部であるパワーアンプにはテキサス・インスツルメント「TAS5754 Class-Dアンプ」2個で構成されており、ウーハーとツイーター専用にブリッジモードで接続され、ウーファー用が40W、ツイーター用が10Wの出力を確保しています。

このデバイスは、最大192kHzの入力をサポートし、高出力PWMキャリア周波数を組み合わせた数少ないD級アンプで、高いS/Nと低歪みが特徴です。従来のClass-Dアンプの2倍にあたる768kHz出力PMWキャリア周波数というスペックは、高感度リボンツイーターの駆動にも適しています。

■ まとめ
さてサウンドは某店の店頭で短時間ですが聴きました・・・。

さすがリボンツイーターです。音のヌケが抜群で、ホーンロードのお陰でスピード感があり、適度な切れ込み感が小気味良いものです。メタルコーンとの音色的な繋がりもスムーズで一体感を感じました。特にリボンツイーターが40kHzまで伸びていることから、ハイレゾ再生では余韻や音場感まで十分出せそうです。

さすがベーシストのフィル・ジョーンズだけあってベースは実在感があり、ニアフィールドでは価格を感じさせないワイドレンジ感です。明るめのハイスピードなサウンドは、部屋の影響を受けにくいことから、スピーカーから離れた通常リスニングにはない、抜群のリアル感は本機ならではと感じました。

本機は、パソコンとの組合せが最も簡単ですが、USB接続が可能な機器やRCA接続が可能なポータブル機器での使用をお勧めします。オーディオファイルのサブシステムとしても十分な性能を有していると断言できます。

(あさやん)


 今回ご紹介した、エアパルス『 A80 』はこちら