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[ 2020年 8月 11日付 ]

 トライオード『 TRV-CD6SE 』は高信頼の”純国産”CDプレーヤー
〜 シリーズ:メインソースとしての「CDプレーヤー」をもう一度見直しませんか。その2 〜

こんにちは、ハイエンドオーディオ担当の "あさやん" です。
前回のLUXMAN「D-03X」に続き、人気の中堅CDプレーヤー・トライオード『 TRV-CD6SE 』にスポットを当てます。本機は過去に一度レポートしていますが、音質を含め詳しくレポートしてまいります。



■ いまCDプレーヤーに再度注目する訳とは?
その前に、前回に続いて私が、いまCDプレーヤーに再度注目する訳をお話しておきたいと思います。

それは、私自身が今、過去に買い集めたCDライブラリーの聴き直しにハマってしまっているからです。私は最近でこそ月に数枚程度しかCDソフトを購入していませんが、1982年のCD黎明期から蒐集したCDソフトはかなりの数に上り、その置き場所にも困っているのが現状です。困ったあげく物置行きになったCDソフトも結構あります。

CDプレーヤーが発売された当初、CDソフトは1枚3,500〜3,800円もしました。今の貨幣価値なら恐らく2倍位でしょう。それでも給料をもらう度に、待ってましたとばかりに購入したものです。しかし、当時のCDプレーヤーで聴くそのCDの音は、細身で甲高く、耳にきつく感じるものばかりでした。

結局、思っていた音と違うため、お蔵入りになってしまったソフトが何と多かったことか・・・。その後アナログディスクとCDソフトが共存する時代が90年頃まで続き、どうしてもアナログを聴くことが多くなってしまったのでした。今思えば、それはソフトだけの問題ではなく、ハードすなわちCDプレーヤーの技術的問題の方が大きかったのです。

さすがに今聞き直しても、CD発売当初のCDはデジタル録音技術がまだ未熟で、ソフトの完成度も今一で、ギスギスした冷たい乾いた音のソフトが多く存在します。しかし80年代も後半になると、録音が明らかに良くなり、技術が進歩し、不自然さが少なくなって来ています。でもまだCDプレーヤー自体、その辺りを十分出し切れていなかったのです。

その結果、CDは音が今一、「今からはもっと上のフォーマットであるSACDでなければならない」との風潮が支配的になってしまい、「当初のCDソフトをもう一度見直そう」などの流れが起きることなく、PCオーディオやネットワークオーディオ、果てはデジタルを捨て、再度アナログレコードを見直すアナログブームにまで至ったのでした。

ここで私からのご提案です。
「貴方のCDライブラリーをもう一度聴き直してみませんか。」
きっと、きっと、”新しいサウンド”の発見があり、”新しい感動”が生まれることでしょう。

その理由は、最新CDプレーヤーは、当時のCDプレーヤーと比べ「DACの高性能化」「デジタルノイズ対策の進歩」「クロックの高精度化」など大きく進み、デジタル回路はもちろん、アナログ回路にも新しいノウハウが活かされて、完成度が格段に高まったためです。

前述の80年代後半から90年代のCDソフトには、実は当時からかなりの情報量が収録されていました。でもその情報量は、当時の民生機器レベルでは出し切れなかっただけなのです。その結果、最新CDプレーヤーでは、想像以上にいい音で聴けるCDソフトがかなりあるのです。(※もちろん全てではありません。それを探すのが面白いのです。)

貴方が音が悪いからとCDライブラリーの隅に追いやっているソフトの中に、「実は意外といい音のCDが有ったりして・・・」。私自身、その再発見のワクワク感にはまってしまっている今日この頃です。

という訳で、お勧めの最新CDプレーヤーの第2弾として、トライオード『 TRV-CD6SE 』を取り上げます。

■ 『 TRV-CD6SE 』の特徴をチェック
『 TRV-CD6SE 』は、日本を代表する真空管アンプメーカー・トライオードが、2019年創業25周年を迎え”同社CDプレーヤーの集大成”として発売したモデルで、発売前から注目を集め、今もベストセラーが続いています。

『 TRV-CD6SE 』の最大の特徴は、何と言っても同社ならではの真空管出力と半導体出力の両方の音色が楽しめることでしょう。そしてアップサンプリング機能、MQA-CDのフルデコード対応。その上で”純国産”であると言うのが、中国製や東南アジア製のオーディオ機器が一般的となった今では大きなメリットでもあります。

本機は横幅345mmのミドルサイズです。このあたりは異存のある方もお有りでしょうが、最近の安価なCDプレーヤーによく見られるような筐体内の無駄な空間が無く、ギッシリ詰まって凝縮感があります。筐体の色は落ち着いた赤で、同社TRVシリーズの真空管アンプと共通です。

次に本機の先進性にも触れておきたいと思います。それは外部クロック入力(ワードクロックと10MHzクロックの2系統)を装備していることと、HDMIによるデジタル出力「I2S」までも装備していることです。将来の発展性やCDトランスポートとしての活用も十分可能です。一方、本機はあえてUSB入力を持たないことでCD再生に特化しています。このあたりは実に潔いとも感じました。

(1)出力段の素子に真空管と半導体を採用し、真空管出力と半導体出力を装備
真空管には”6922(6DJ8/E88CC)”が2本搭載されており、出力はRCAシングル1系統です。一方、半導体出力はRCAシングルとXLRバランスの2系統を装備しており、CDプレーヤー側で真空管/半導体出力を切替えるのではなく、アンプの入力側で切替える方式です。

(2)SRC(サンプリング・レート・コンバーター)によるアップサンプリング機能
音楽信号を内部でPCM:352.8kHz/32bit(DXD=業務用フォーマット)またはDSD:5.6MHzにアップコンバート処理してからD/A変換を行う再生モードを搭載。過去にも同種の機能を持った製品はありましたが、後述の最新DACチップ採用の効果もあって、そのサウンドの緻密さやサウンドステージの再現性には素晴らしいものがあります。

(3)MQA-CD対応
MQA-CDに対応(USB入力がなくMQAファイルには非対応)しており、勿論フルデコード対応で、MQA-CDによって「スタジオ」(MQA自身の手によってMQA化)と「オーセンティック」(ソフト側によってMQA化)のソフトの表示もされます。
※「スタジオ」時はディスプレイに「MQA.」、「オーセンティック」時は「MQA」とだけ表示されます。MQA-CDのパフォーマンスが手軽にかつ最大限発揮されます。後はMQA-CDソフトの充実を望むばかりです。

(4)最新の32bit型DACチップ/SABRE「ES9038Q2M」搭載
ESSテクノロジー社の最上位の「ES9038pro」の技術を踏襲し、「ES9038pro」の8chに対して2ch出力で、ダイナミックレンジ:129dB、全高調波歪率:-120dBと、ほぼ同等の高性能DACです。

(5)2系統(ワードと10MHz)のクロック入力を装備
これら2系統とも装備しているのはこのクラスでは珍しく、かなり設計者のこだわりを感じます。ワードクロックは44.1kHz/11.2MHz/22.6MHz/45.2MHzに対応、もう1系統は高精度10MHzクロック・ジェネレーター専用で、いずれもBNC端子です。クロックの強化により更に分解能が上がり、サウンドの密度感、中低域の厚みは格段に向上します。

■ 聴いてみました

最初はSRCオフでの半導体出力です。解像度が高く良い意味でデジタルらしい、脚色のないストレートで切れ味が良く、伸びやかな爽やかサウンドです。これでも価格相応の本格的な音質です。

SRCをPCM:352.8kにすると、更に細かな部分まで見通せるようになり、高域が伸びやかで余韻感、音場感がアップしました。DSD:5.6Mでは、更にきめが細かくしなやかで、繊細なSACDっぽい鳴り方になります。

真空管出力でのサウンドは、デジタルであることを忘れてしまいそうな程、湿度感や粘りけがあり、音の粒子の繋がった感のある、アナログっぽい滑らかさが魅力です。

真空管出力+SRC/PCM:352.8kでは中低域が厚くなり安定感が更に増します。DSD:5.6Mでは真空管の温かさとDSDの透明感が絶妙のバランスで、もっともアナログライクなサウンドです。

最後にMQA-CDでは、CDの限界を全く感じさせない、伸びやかでストレートなサウンドです。真空管出力では、更に安定感を増し、かつての良質なテープサウンドを思い起こさせる安定感のある音です。

サウンドはSRCやMQAによって明白な違いがありますが、それぞれが魅力的であり、その日の気分やソフトとのベストマッチングで選択するという、新たな楽しみが加わることでしょう。

とにかく『 TRV-CD6SE 』の先進性、拡張性には驚かされます。MQA-CD対応のみならず、DXDやDSD5.6MHzへのアップサンプリング機能、ワードと10MHzの外部クロック対応、同軸/光出力はもちろんHDMIデジタル出力によるCDトランスポートとしての活用、そして本機の最もトライオードらしい真空管と半導体出力の切替え機能と豊富です。

『 TRV-CD6SE 』は、オーディオ好きにとっては実に”いじり甲斐のあるCDプレーヤー”です。しかも純国産という信頼感も見逃せません。かつてのCDソフトが新たなサウンドで蘇ることでしょう。

(あさやん)


 今回ご紹介した、トライオード『 TRV-CD6SE 』はこちら