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[ 2020年 9月 23日付 ]

 ティアックが、MCカートリッジのバランス伝送可能な本格的アナログプレーヤー『 TN-5BB 』を投入!

こんにちは、ハイエンドオーディオ担当の "あさやん" です。

ティアックから、今話題のMCカートリッジの理想の再生方式であるバランス出力可能な本格的アナログプレーヤー『 TN-5BB 』が発売されました。

今回は、MCカートリッジのバランス再生のメリットを探りながら、こだわり抜いた『 TN-5BB 』をレポートいたします。



■ ティアックとは・・・

ティアックは、1953年 東京テレビ音響株式会社として創立、紆余曲折を経て、1964年 ティアック株式会社となった歴史ある会社です。 1960年代後半、「TN-80C」「TN-202」など独自のマグネフロート方式ベルトドライブ・ターンテーブルを、1973年にはマグネフロート方式のダイレクトドライブ・ターンテーブル「TN-400」を発売し、一世を風靡したのでした。

また1960年代、当時アカイと並んで世界市場を席巻したオープンリール式テープデッキに続き、70年代には据置型コンパクトカセットデッキが大ヒット、1990年前後からはCDプレーヤーが主力となり、アナログプレーヤーは同社のラインナップからは消えていました。

そのティアックがアナログプレーヤーに再参入したのが、2014年発売の「TN-350」からで、2016年「TN-570」、2017年「TN-550(限定生産:国内100台)」、「TN-100」「TN-400BT」、2019年「TN-4D」「TN-3B」、2020年「TN-280BT」とバリエーションは増えましたが、「TN-550(生産完了)」「TN-570(同)」を除くと、フォノイコライザー内蔵・USB出力付きやBluetooth機能付きと、決して本格的とは言えない、アナログブームにのったビギナー向けのプレーヤーという色合いが濃い製品ばかりでした。

そんなティアックから本格的アナログプレーヤー『 TN-5BB 』の登場です。

ティアックの『 TN-5BB 』への並々ならぬこだわりを感じさせる大きな特長は以下の5つです。
  • 1.異種素材を組み合わせたハイブリッドシャーシで不要な共振を遮断
  • 2.20mm厚のアクリル製プラッターとPRS3ベルトドライブ機構
  • 3.安定した読み取りを実現する SAEC × TEAC コラボナイフエッジトーンアーム
  • 4.MM型カートリッジ Ortofon 2M REDを標準搭載
  • 5.MCバランス伝送に最適なXLRバランス出力端子搭載


それでは順に詳しく見てまいりましょう。


【1】異種素材を組み合わせたハイブリッドシャーシで不要な共振を遮断


本機のベースプレート(シャーシ)は、内部損失が大きく重量級の36mm厚のMDFと、高剛性の12mm人造大理石を積層構造としており、キャビネットのみの重量が約8.8kgにも達しています。本機の前身とも言える「TN-570」以上の制振性とハウリングマージンを実現しています。

そして、トーンアームとプラッターは人工大理石のトッププレートに、振動源となるモーターはMDFのベースプレートに別々にマウントされています。それぞれの素材をダンパーによって遮断することで、モーター振動のトーンアームへの伝搬を低減し、S/Nを確保しています。

さらに、人工大理石とMDFの間には、同社の和紙ターンテーブルシートで得たノウハウにより、最適な響きのバランスを持つ厚みと素材の和紙をワッシャーとして採用しています。ゴムでも金属でもない、和紙を使用することで、レコードならではの自然な響きを引き出すことができたとしています。


【2】20mm厚のアクリル製プラッターと《 PRS3 》ベルトドライブ機構


プラッターには、本機を特長付ける20mm厚、1.7kgもの高い平面性と内部損失を持ち、固有音の少ないアクリルを採用。「TN-570」より3mm厚く、300g増しており、高い慣性モーメントを得て、安定した回転に寄与しています。

またアクリルは、レコード盤素材の塩化ビニルと同じくマイナスの電荷を帯びやすい素材ですが、比較的近い物質のため、直接こすれ合っても帯電し難い利点があるそうです。ターンテーブルシートを使用せずに直接レコードを載せて再生することで、クリアな響きが期待できます。

さらにプラッター下部の光センサーによってプラッターの回転数を検知し、モーターにプラッターの回転に応じたサーボを掛ける《 PRS3(回転数自動調整) 》機構により、慣性とモーターだけでは難しい高い回転精度を実現したのです。これによりベルトドライブとしては優秀なワウ・フラッター:0.1%以下、回転数偏差:±0.05%を実現できたのです。

回転数は、33、45に加え、78回転にも対応しており、SPレコードや高音質78回転レコードの再生も可能です。


【3】安定した読み取りを実現する SAEC × TEAC コラボナイフエッジトーンアーム


トーンアームには「TN-4D」「TN-3B」に引き続き、SAEC(サエク)とのコラボによるナイフエッジトーンアームを採用。垂直方向にはステンレス製ナイフエッジを採用して高感度かつ安定した読み取りを実現。水平方向には従来の1点ではなく、日本製の高精度ボールベアリングを使用。2点で支持する構造に変更して、ナイフエッジの動きを妨げることがなくなりました。アームの内部配線にはPC-Triple C 導体を使用。また6mmの範囲で高さ調整も可能です。

SAECはトーンアーム設計に40年の歴史を持ち、かつては「WE-308」や「WE-407/23」などの名アームを輩出。ジンバルサポート、ワンポイントサポート、オイルダンプ式ではない独自の無抵抗の軸受方式であるダブルナイフエッジ方式で、当時その反応の速さや軽快なサウンドで大ヒットしました。

この本格的なトーンアームにもかかわらず電動式のアームリフターを採用しており、ワンボタンでアームの上げ下げが可能です。また演奏終了後は、光センサー方式のオートリフトアップ機能が搭載されており、非常に使い勝手の良いプレーヤーで、ながら聴きには安心の機能です。


【4】MM型カートリッジ Ortofon 2M REDを標準搭載


カートリッジは、定評のある老舗オルトフォンのMM型カートリッジ「2M RED」を標準装備。付属品としては贅沢なカートリッジです。ヘッドシェルは調整して装着されており、組み立ててすぐお聴きいただけます。ユニバーサルタイプのトーンアームですので、お好みのヘッドシェルやMCカートリッジへの取り替えも可能です。


【5】MCバランス伝送に最適なXLRバランス出力端子搭載


最後に、本機の最大の売りである XLR端子によるアナログ出力が搭載されており、MCカートリッジを最大限生かせるバランス伝送が可能で、XLRバランス入力に対応するフォノイコライザーや昇圧トランスとの接続が可能です。

バランス伝送が有利な理由を簡単に申しますと、MCカートリッジはコイルにより発電されるのですが、コイルの両端はプッシュプルの信号が発生するバランス信号なのです。その微弱なバランス信号は、本来バランス伝送すべきなのですが、通常のフォノ入力はRCA端子のアンバランス受けとなっており、アンバランス信号にすることで、出力やS/Nの面で損することになるのです。

MCカートリッジのフルバランス伝送によりカートリッジ本来のサウンドが得られ、ワイドレンジかつ濃密な音に加え、繊細さやS/Nの良さが楽しめます。


■ まとめ

このように『 TN-5BB 』は、価格的にはミドルクラスながら、こだわり抜いた本格的な仕様に加え、MCカートリッジによるレコード再生時のフルバランス伝送を可能にした画期的プレーヤーです。フルバランスでのレコード再生は、“デジタル VS. アナログ論争”を超越した最高峰のクォリティでのオーディオ再生と言っても過言ではないと思います。

ただ、今のところ、バランス入力端子を備えた機器は限定的で、今後の採用に大いに期待したいところです。

※現時点(2020年9月)でバランス入力を備えた主なフォノイコライザーや昇圧トランス、プリアンプは以下の通りです。
TEAC「PE-505」、Accuphase「C-47」「C-3900」、Phasemation「EA-350」「EA-550」「EA-1000」「T-500」「T-1000」「T-2000」、SOULNOTE「E-1」「E-2」、ESOTERIC「E-02」などです。

(あさやん)


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