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[ 2020年 9月 29日付 ]

 AVALON『 Precision Monitor 1 』を聴いて《 アメリカ・ハイエンド 》の凄さを改めて実感!

こんにちは、ハイエンドオーディオ担当の "あさやん" です。
このコーナーで初めて、AVALON(アヴァロン)を取り上げます。同社のカタログでは「Tesseract」約4,500万円(時価/税別)、「Saga」1,870万円(税別)など、我々庶民には到底手の届かない超々ハイエンドスピーカーがズラリとラインナップされています。


そんな中で、決して安くはありませんが、そのサウンドに惚れ込んでどうしても欲しいとなれば、頑張って手を伸ばせば届くアヴァロンがあります。それが今回取り上げます『 Precision Monitor 1 』225万円(ペア/税別)です。

9月某日、日本橋1ばん館で試聴の機会がありましたので、詳しくレポートしてまいります。


■ アヴァロンについて

アヴァロンの正式名は「Avalon Acoustics」で、1986年米国コロラド州ボルダーに設立されました。スピーカーデザインを手掛けるニール・パテル氏は、「開発は感動から始まる」という哲学を持っており、開発スタッフによって具体化された試作品は、氏のブティックで試聴、改良が繰り返された上で製品化されると言います。

そのサウンドは、演奏情景を透明かつ明晰に描き、ピシッと定まった焦点、音の立ち上がりや消えゆく様子を克明に描き、時間的に音の混濁を起こさないよう、過渡特性を高め、楽器の自然な音色、音楽の表情やニュアンス、そして演奏家の熱意などを聴き手に伝えるスピーカーを作り続けているとのことです。

アヴァロン『 Precision Monitor 1 (以下PM-1) 』には、「PM1-STD-NAT(バーズアイメイプルナチュラル)」と「PM1-STD-GRP(バーズアイメイプルグラファイト)」の2色が日本に輸入されています。本国ではオプションとしてより高価格のハイグロス仕上げも展開しているようです。

『 PM-1 』は《 PMシリーズ 》の末弟ではありますが、その仕上げの素晴らしさは勿論、緻密で豊潤なサウンドは、国産は勿論海外のスピーカーの中でも傑出したものがあります。それでは詳しく見てまいりましょう。

《 PMシリーズ 》の設計目標は、心に奥深く浸みわたる音楽を、いまここに蘇らせ、爽やかな風となるような、深く、軽やかで、しかも重厚な演奏を聴きたい。それには、ローレベルの精密なディテール表現、高い解像度、トランジェント精度の高さ、そして今までにないような広大なダイナミックコントラストという要素を備えるスピーカーだと言います。そのためのテクノロジーとして・・・。


【 エンクロージャー 】


アヴァロンの魅力は、何と言ってもその美しいエンクロージャーでしょう。オブジェのような気品のある丁寧な仕上げには感動さえ覚えます。仕上げは伝統的な家具製造技術をそのまま応用し、時間を掛けてハンドメイドで作られます。ペアとなるスピーカーは同じ原木から切り出された板で仕上げられ、横からも正面からも一体感のあるものとなっています。

面が接する部分の下地材は小刀とヤスリによって丁寧に仕上げられ、その上に専門職人が選別した木材を貼り、そして仕上げ加工されます。木材を張るのに、2000kgプレス機で各面2時間の行程を経て完成するそうです。このように手の込んだ非常に多くの行程を経て素晴らしい外装が完成するのです。

エンクロージャー内部も非常に凝ったもので、密閉された個室のようなトゥイーターチェンバーと複数の音響迷路を組み合わせたユニークな構造を取ることで共振を除去しています。これにはアヴァロンの30年を超えるスピーカー造りの経験が生かされているのです。バスレフポートは底面にあり、デザインを壊すこともありません。

一方で、音楽の核心に迫るために、共振を利用して余分な音を排除するという同社のノウハウを生かし、2枚の板の間に物性の異なる粘弾性シート(新しいポリマー素材)を挟むサンドイッチ構造をメインバッフルに採用しています。これによって制振ができ、理想的なエンクロージャーが完成したのです。

例えば、1枚では、叩けばカンカンと鳴ってしまう板を、2枚重ねると鳴きはぐんと小さくなります。なぜなら、2枚の板が合わさることでその隙間によって、振動エネルギーを熱エネルギーに変えることで制御されるのです。結果、エンクロージャーは非常にうまく微調整されたバイオリンやギターのように機能し、音の伝播においては共振を許さず、同時に時間軸位相が整った倍音が加わるのだと言います。


【 ユニット 】


ウーファーは同社において実績のあるノーメックス/ケブラー(異なるアラミド繊維)を用いた18cm複合コーンウーファーが2基搭載されています。設計目的に適合させるため特別に開発、調整されたドライバーを使用することで、純粋なピストンモーションを達成。高い周波数でのコーンのたわみ、共振、共鳴などを起こさないのです。

非常に堅いノーメックス/ケブラー製の複合ウーファーダイアフラムは、アヴァロン独自の二重マグネット構造の磁気回路で駆動されます。そのため、エネルギーの貯蔵やロスは最小限に抑えられ、入力信号のすべてを音響的に放出します。音楽情報は一切圧縮されずに、ダイナミックコントラストが明瞭に再現できるのです。

トゥイーターは高エネルギー、位相整合タイプの2.5cmのリングラジエーター型を搭載しています。トゥイーターのネオジムマグネットは振動板に活力を与え、たわみやゆがみが一切なく、完全に位相整合された音楽信号が20kHzを超えてまで放射されます。トゥイーター周りとウーファーとの間にはフェルトが装着され、音の反射を抑えています。


【 クロスオーバーネットワーク 】

独自の低ノイズと時間軸位相整合を達成したクロスオーバーネットワーク技術を採用しています。これにより全てのドライバーが、立ち上がり、ブレーキングという音楽再生にとって大切な要素である高度な過渡特性、きめ細かい音の粒立ち、陰影の表現などを可能とし、音楽に生命感(ダイナミックス)を与えるのです。

クロスオーバーネットワークにはプリント基板を使用せず、完全にマッチングした高精度の部品を立体配線しています。ドライバー間の絶対位相リニアリティーと、極めて低いノイズフロアを実現したことで、サウンドイメージが安定し、ステージがリスナーの眼前に浮かび上がるのだと言います。

インピーダンス負荷に対しては、アンプに影響を及ぼさない設計で、低出力の真空管アンプやソリッドステートアンプを使用しても、しっかりとした音楽再生を行います。演奏会場のローレベルのディテールはオリジナルの録音に忠実かつ高い精度でリスナーに伝えることができるのです。


■ 日本橋1ばん館での試聴記


寸法はW250 x H940 x D330mmとアヴァロンとしては比較的小振りで、重量は34kgです。一般家庭のリスニングルームでの使用も十分可能な、程良い大きさです。端子はシングルワイヤーのみ。カラーはナチュラルとグラファイトのスタンダード仕上げです。今回はアヴァロンらしい明るいナチュラル色の『 PM-1 』を試聴しました。

とにかく、透明でクリーンな極めてスムーズな説得力のあるサウンド、広々として深々とした三次元的な音場、アーティストや楽器が浮かび上がる立体的な音像は絶品です。スピーカーが視界から消える程、音離れも抜群です。

高解像度で情報量も凄いのですが、単なるハイファイ指向ではなく、音楽の特質を的確に描き分け、録音現場の空気をリスニングルームにそのまま届けてくれ、モニター的な精確さと同時に音楽の楽しさも届けてくれると感じました。

しかも押し一辺倒の積極的なだけのサウンドとは違い、控えめで奥ゆかしい面も併せ持っており、自然な質感、潤いに満ちた響きなど、実に多彩に音楽を表現する飛び切りの能力を持っているのです。

艶っぽい弦、立ち上がりの素晴らしいギター、フルオーケストラのスケール、伸びやかなボーカル・・・、これ程楽しいサウンドはあまり経験したことはありません。

アヴァロン『 PM-1 』は、エンクロージャー、ユニット、ネットワーク、仕上げといったスピーカーの4大要素を非常に理詰めで、しかも丁寧に作り上げているスピーカーです。

しかも、その彫りの深い、説得力のあるサウンドはまさに《 アメリカ・ハイエンド 》の世界です。改めてアメリカのオーディオ技術の底力と凄さを実感しました。
(あさやん)


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