カテゴリから選ぶ

[ 2020年 10月 6日付 ]

 DENON 110周年記念モデル『 PMA-A110 』『 DCD-A110 』『 DL-A110 』誕生!
【 前編 】伝統のUHC-MOSと最新のアンプ設計技術を融合した プリメインアンプ『 PMA-A110 』

こんにちは、ハイエンドオーディオ担当の "あさやん" です。

今回は、日本のオーディオメーカーで最も長い歴史をもつ「デノン」から発売された、110周年記念モデルのプリメインアンプ『 PMA-A110 』をご紹介します。

まずは何と言っても最も象徴的なのはそのパネルカラーでしょう。110周年記念モデル専用カラーで、デノンとしては「グラファイト・シルバー」と名付けていますが、いわゆるガンメタリック(ガンメタ)です。その精悍さは抜群です。

「SX1 LIMITED」の流れを汲むアルミ製トップパネルやフットは、さらに本機に高級感を与えています。そしてフロントパネル右下に110周年のロゴが施された特別仕様です。

因みに、日本のラックスマンが創業95年、英タンノイが94年ですから、110年(1世紀以上)は圧倒的な歴史の長さです。


■ デノンとは・・・

1910年日本初の音楽会社「日本蓄音機商会」(国産蓄音機第一号「ニッポンノホン」発売)、1939年日本初の放送用録音機器メーカー「日本電気音響」、そして1963年両社が合併して「日本コロムビア」となり、1970年民生ブランドDENON(デンオン)が誕生。現在まで続く「DL-103」、1971年放送局用ダイレクトターンテーブルをアレンジした「DP-5000」などを発売。現在に至るのです。

その間、1990年代には80周年記念として今となっては懐かしい「POA-S1/PRA-S1」「DP-S1/DA-S1」「PMA-S1/DCD-S1」などのS1プロジェクト。2000年の90周年にはAVアンプの最高峰「AVC-A1SE」、2010年の100周年には「PMA-A100」「DCD-A100」などを記念モデルとして発売しています。

そして今回110周年記念モデルとして登場したのが『 PMA-A110 』『 DCD-A110 』『 DL-A110 』、AVアンプ『 AVC-A110 』の4モデルです。

それでは、まずは110周年記念モデルに相応しい注目のプリメインアンプ『 PMA-A110 』を詳しく見てまいりましょう。



■ Advanced UHC-MOSシングルプッシュプル増幅回路


本機の大きな特長は、伝統のUHC-MOSと最新のアンプ設計技術を融合させた「Advanced UHC-MOSシングルプッシュプル増幅回路」の搭載です。

UHC-MOS(Ultra High Current)は、1993年に発売された前述のS1プロジェクトの超弩級モノラルパワーアンプ「POA-S1」のために開発されたパワー素子で、その後改良が重ねられて、常にデノンのHi-Fiアンプの根幹を担ってきています。デノンは一貫してこのUHC-MOSによるシングルプッシュプル回路を踏襲してきています。

通常のパワーアンプでは、多数の素子を並列駆動して大電流を得るのに対し、デノンはUHC-MOS FET・1ペアという最小単位の素子による増幅にこだわり続けています。

その理由は、通常のアンプにように、多数の素子を使った場合にどうしても起こり得る、素子の性能のバラツキによって生じる音の濁りが、UHC-MOSシングルプッシュプルというシンプルな回路では回避でき、繊細な部分の表現力に差が出てしまうと言います。

本機では、従来機「PMA-2500NE」の差動3段から差動2段に変更しており、スピーカーの駆動能力がさらに改善され、発振に対する安定性にも優れるため、結果スピーカーを正確に力強く駆動できるのだとしています。


■ 可変ゲイン型プリアンプ+電子ボリューム

従来機「PMA-2500NE」に採用していたハイゲインアンプによる一段増幅に対して、『 PMA-A110 』では新たに可変ゲイン型プリアンプ(フラットアンプ)とパワーアンプとの二段増幅を採用しています。

通常のプリメインではプリとパワーで両方で増幅するのですが、本機では音量に合わせてプリのゲインを増減させ、パワーのみで増幅することで、ノイズレベルが劇的に改善され、透明度や空間感のアップに繋がるのです。

ボリュームを回した感覚は、通常の機械式ボリュームと同じなのですが、実は高精度な電子ボリュームです。センサーにより回転角を検出して音量をコントロールします。これによりアナログボリュームのフィーリングのままアナログボリュームの短所であるギャングエラーも回避できたのです。


■ CR型フォノイコライザー

アナログを大事にしているデノンらしくフォノイコにも手抜きはありません。かのプリアンプの銘機「PRA-2000」以来高級機にのみ採用しているCR型(PMA-2500NEはNF型)のフォノイコを搭載しています。

勿論MM/MCの両方に対応。NF型ではどうしても避けられない周波数による音色変化がなく、全帯域に亘って均一で素直な音色が得られます。


■ USB-DAC搭載+高周波ノイズアイソレーター


ここは賛否の分かれる所ですが、本機にはDAC「PCM1795」4基よる、DSD:11.2MHz、PCM:384kHz/32bit対応のUSB-DACが搭載されています。DSDではネイティブとDoPの両方に対応。クロックは本機の低ジッターのマスタークロックで制御する、アシンクロナスモードに対応しており万全です。

デジタル入力は、PCM:192kHz/24bit対応の光デジタル:3系統、同軸デジタル:1系統搭載の本格的なデジタルプリメインです。また、デジタル入力は外部ソースからの入力信号を検知すれば、自動的に電源が入る便利な自動再生機能が搭載されており、テレビ音声の再生などには大変便利な機能です。

そして最も気になる、USB接続されたPCから流れ込む高周波のデジタルノイズを遮断するため、USB-DAC回路と周辺回路を電気的に遮断する高速デジタルアイソレーター回路を搭載。グラウンドも独立させています。さらにデジタル入力回路を1.6mm厚の綱板3枚でトランスのベースの下に配置することで、アナログ回路への不要輻射もを遮断しています。


これらに加え、アナログモードが前面スイッチで選択でき、「アナログモード1」ではデジタルオーディオ回路が全てオフ、「アナログモード2」ではディスプレイ表示も消灯でき、完全なアナログアンプとして動作させることができるので、デジタルの干渉を気にされている方にも安心してお使いいただけます。


■ その他 主な特長

(1)強力な電源回路搭載


トランスからの漏洩磁束の影響を打ち消すため、2基のトランスを対向配置。本機専用の大容量カスタムコンデンサーを搭載しています。パワーアンプへの電源供給ラインを極限まで短くし、電源ラインには極太のOFC線を用い低インピーダンス化を図っています。

(2)Ultra AL32 Processing搭載

デノンのお家芸であるアナログ波形の再生技術「Ultra AL32 Processing」を搭載。従来の倍の1.536MHzにアップサンプリングし、32bitへの拡張処理をします。独自のアルゴリズムによって理想的な補間を行い、デジタル録音時に失なわれたデータを復元し、自然な原音に忠実な再生を実現します。


■ 日本橋1ばん館で聴きました


『 PMA-A110 』のサウンドは、次回取り上げます『 DCD-A110 』と組み合わせて、ディスプレイ表示も含め、デジタルオーディオ回路を全てオフにする「アナログモード2」で試聴しました。

非常に透明感の高いクリーンなサウンドが印象的です。S/Nが非常に高く、左右への拡がりや奥行き感が格別です。特に間接音が豊かで音楽のソノリティが十分伝わってきます。

弦は張りがあり実に艶っぽく、楽器の木の材質や表面の光沢まで分かる程のリアルさです。フォルテでも嫌な部分を全く感じさせないナチュラルさが魅力です。

ボーカルは伸びやかで表情豊かに朗々と歌います。空間に立体的にクッキリと浮かび上がりました。声質は自然で、生身の人間を感じさせます。

「アナログモード1」では、若干透明度は減退しますが、言われないと分からない程度です。

「通常モード」では、かすかなベールは感じられるものの瞬発力やパワー感は全く変わることなく、解像度の高いハイファイサウンドには変わりはありませんでした。

『 PMA-A110 』は、そのデザインから受ける印象がそのまま音に出た、上級機「SX1 LIMITED」に迫る音質を獲得したのです。110周年を飾るに相応しいハイエンド・プリメインアンプの完成です。
(あさやん)


 デノン創立110周年記念モデル『 PMA-A110GS 』はこちら

 その他の「110周年記念モデル」はこちら