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[ 2020年 12月 15日付 ]

 デノン創業110周年記念モデル「専用ヘッドシェル付きMC型カートリッジ:DL-A110」をご紹介

こんにちは、ハイエンドオーディオ担当の "ichinose" です。

今回は、デノン創業110周年記念の専用ヘッドシェル付きMC型カートリッジ「DL-A110」を取り上げます。

この「DL-A110」は、DENONのMC型カートリッジ「DL-103」の性能を100%引き出すことを目指して開発された専用設計のヘッドシェルを組み合わせた特別仕様として発売されています。


「○○○○」を聴かずしてカートリッジを語るべからず。

と言われるカートリッジは、DENON「DL-103」、ortofon「SPU」、SHURE「TYPE3」あたりで、カートリッジ界のBIG3と言ったところでしょうか。また、全て持っていた(持っている)方も多いのではないでしょうか。

ご存知のように、SHUREはヘッドホン屋さんに、ortofonの「SPU」は原器にこだわった設計ですが、何度もマイナーチェンジされています。

そんな中でも「DL-103」は1963年の発売以来、何と56年間一切モデルチェンジをしていないオリジナルモデルなんです。


■ DENONとは

デノンの源流は日本電気音響株式会社で、その後、日本電気音響(電音機に由来=デンオン)になりました。

デンオンは放送機器を製造、歴史的にNHKとは関係が深く、1963年にNHKがFMステレオ放送を開始するにあたり、そのレコード再生のためにNHKからオーダーされて「DL-103」が生まれました。その時点では会社は日本コロムビア(株)に。

海外では元々デノンと発音されていたそうですが、日本でデノンになったのは2001年株式会社デノン設立の頃でしょうか。

ちなみにレコードのクラシックレーベル部門では現在もDENON=デンオンとして販売されています。


■ DL-103とは

まず放送局用のレコードプレーヤーのMCカートリッジとしてNHKからのオーダーで1963年に開発されました。



忠実な再生を行うための音響的性能と安定度・信頼性など、放送機器として要求される厳しい仕様を満たすカートリッジとして、NHKの協力を得て開発したもの。

以降、国内のほとんどの放送局でDL-103が使用され、放送局用のスタンダードとなっています。

当時としてはかなりハードルの高い仕様で開発が進められた結果、現在まで生き残るに至る性能を獲得しているんですね・・素晴らしいです・・。

ortofonの「SPU」に対抗する国産カートリッジとして開発されたと言う噂も聞いたことがありますが・・定かではありません。

金属製ケースは共振で鳴くことがあるため、音質研究を繰り返した結果、色付きのない音にするためにABS樹脂が採用されたそうです。

当初はプロ市場のみの取扱いでしたが、闇流通などで高値取引などが発生して問題となった事もあり、また、自宅の再生システムでも使用したいというオーディオファンの声に応えてコンシューマー市場での発売が開始されたのが1970年の事。

そして現在に至るまで56年にわたって同じ仕様で製造されています。



DENONのカートリッジは2001年から始動している福島県にあるDENONの自社工場「白河オーディオワークス」において厳格な品質管理の下で一つ一つ手作業で作られています。

製造された「DL-103」は業務レベルの全数特性チェックをしてから出荷しており、不良品は全くと言えるほど発生しません。

数名の女性熟練工のみで生産されているため、度々長期欠品なども発生しますが、品質重視の姿勢が守られています。



「DL-103」の派生モデルは1974年「DL-103S」、1977年「DL-103D」、1985年「DL-103LC」、1986年「DL-103LC2」、1994年「DL-103R」と5種類発売されました。

限定モデルも、1982年「DL-103GOLD」、1989年「DL-103SL」、1990年「DL-103GL」、1991年「DL-103C1」、1993年「DL-103FL」、2010年「DL-A100」と、これまで6種類の限定モデルが発売されましたが、この間にもオリジナルの「DL-103」が途絶えることは一度もありませんでした。



■ 110周年記念モデル「DL-A110」とは



「DL-103」と、その開発当時に作られたDL-103専用ヘッドシェルを完全復元したのが「DL-A110」です。

1960年代の設計ながら、現在のCADを使っても難しいほどの完成度を誇るDL-103。

DL-103のカートリッジ本体はそのままに、持てる性能を100%引き出すことを目指して開発された専用設計のヘッドシェルを組み合わせた特別仕様となっています。

DL-103の専用ヘッドシェルは業務用としてしか流通しておらず、今回初めて民生用として復刻発売されています。オリジナルシェルはベージュ色。

カートリッジ本体のDL-103は変更はありません。

DL-103の性能を100%引き出すことを目指して開発された専用設計のヘッドシェルを組み合わせた特別仕様として発売されています。

実際に放送局ではどんな音で鳴っていたのかについて焦点を当てたのが「DL-A110」の開発の狙いです。


■ 110周年記念モデル特別仕様

◆110周年記念ロゴプレート付き収納革ケース&針先清掃用ブラシ付属



◆110周年記念モデル専用シェル、ブラック&グラファイト・シルバー



◆5年間の無償保証サービス (※針の磨耗や、お取り扱い中の不注意による針の破損等は保証の対象にはなりません。)


■ 110周年記念ヘッドシェルとは

素材は特殊な素材ではなく普通のプラスティックで基本的にDL-103のボディーと同じ素材です。



この形状、この素材が最もDL-103がDL-103らしく音を再生出来るとの事で、あえての形状、素材となっているそうです。

DL-103に最適な寸法および形状であるため、カートリッジを理想的な位置に確実に固定することができます。

付属のアダプターを接続すれば標準的なアームに取り付け可能です。







樹脂製のヘッドシェルはわずか6gと軽量ながら、不要な振動を抑え、深みのある低音と繊細で透明感の高いサウンドを両立します。





■ 試聴しました

自前のDL-103に市販のシェルを取り付けた音質と、「DL-A110」の音質を較べてみました。 これでこのシェルの音質が、DL-A110の開発意図が感じられるのでは。



日ごろから「DL-103」は使っている、最もスタンダードな聴きなれたサウンドです。

放送用製品と言うとモニター的なウンドと思われるかもしれませんが、「DL-103」は決して無気的なサウンドではありません。

音の表現の豊かさ、エネルギー感、コントラストやエモーションの表現力も一級品です。

一度は使ってみる価値があります、この「DL-103」を基準として好みのカートリッジバリエーションを増やすのが確実で正解となります。

「DL-103」をベースに傾向の異なるカートリッジを揃える事によってお使いのシステムの音が大きく広がって、ますます楽しく音楽を聴くことが出来ます。


■ 「DL-A110」は「DL-103」と較べてどうでしょうか?



基本的には聴き馴染んだ良い音ですが、少し異なるのは、より色付けを感じさせないサウンドで、良い意味で何か部分的な誇張を感じさせないサウンドです。

軽量のシェルらしかぬ、スケールの大きさを感じさせるのは、この金属より固有の共振モードが少ない樹脂製の絶妙なバランスの効果かもしれません。

最新型のMCカートリッジとの共存は問題なく、聴く音楽によってまだまだ活躍できる実力を持っています(もちろんメインカートリッジとして使えます。)

樹脂製と言われてチープな感じと思われる方もいるかと思いますが、カートリッジに合わせて専用設計されており、しっかりと固定できる優れた構造で全く心配は要りません。

「DL-103」はどんなシェルをつけるかでやはり色付けを感じさせるので、純正として設計されている「DL-A110」はお勧めできますね。

もちろん、簡単に取り外せますので、針交換は通常の「DL-103」として申込できます。

※取り付けているネジは専用のものでネジ径が異なるためネジを交換することは出来ません。
※シェル内のスペースはミニマムなので太いリード線への交換は出来ませんのでご注意下さい。

(ichinose)




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