カテゴリから選ぶ


音場工房

[ 2021年 9月 28日付 ]



今話題の「Benchmark Media Systems」製品を試聴レポート!



  • ichinose
  • こんにちは、ハイエンドオーディオ担当の "ichinose" です。

    今回は、アメリカの「Benchmark Media Systems(ベンチマーク・メディア・システム)」製品を試聴しましたのでご紹介します。

    試聴したのは、D/Aコンバーターの「DAC3B」、プリアンプの「LA4」、パワーアンプ「AHB2」x2の3機種。そのサウンドは、ソース(音源)に対して徹底的に正しく、色付けしない音を聴かせてくれる。まさに社名の通り「Benchmark(指標)」となる音の出方と言えます。

    横幅22〜28cmのコンパクトな筐体サイズ、剛健で、男性的な、PRO志向の武骨なデザインながら、趣味性を兼ね備えたデザインも人気です。

「Benchmark Media Systems」とは、どんなメーカー?


一言でいえば、スペックと聴感、両方を徹底的に追い込んで設計する新進気鋭のブランド。1983年に米テキサス・ガーランドでガレージメーカーとして誕生。

創業者は、アレン・H・バーディックという人物で、当初はテレビ放送施設などで使用されるプロフェッショナル用機器を開発、販売して急成長し、その後プロフェッショナル/コンシューマー用オーディオ市場に進出。1985年に法人化され、その後コンシューマーのオーディオ市場にも本格的に進出しました。

創業者の引退後、現在はジョン・シアウ氏がエンジニアリング兼任ディレクターとして辣腕を振るっています。

メーカーとして最もこだわっているのは“TRANSPARENCY(透明度)”とにかく正確なインパルスレスポンスを追求し、歪みやノイズを限界まで抑える事。

技術的に優れているのはもちろんですが、最終的なサウンド決定は、聴感によって徹底的に追い込まれており、納得できる色付けのないリファレンスサウンドを実現。同社製品のコンポーネントは、ほぼすべてがニューヨーク州シラキュースの工場で設計、組み立て、テストも行なわれています。

CONTROL AMPLIFIER:プリアンプ『 LA4 』



最高級金接点コンタクトリレーと4つの独立した256ステップ・アッテネーターを搭載

最高級のゴールドコンタクトリレーを採用し、ゲインコントロールは0.5dB刻みで256ステップと細やかな調整が可能。バランス・コントロール機能も搭載しています。

リレーのクローズは、シルクのように滑らかな音量変化を実現するため、極めて正確なタイミングで行われ、類を見ないレベル精度とパフォーマンスを提供します。

加えて、0.5dB単位で音量調節が可能な、左チャンネル用と右チャンネル用の2つの独立した256ステップのアッテネーターを搭載。

これを実現するため、LA4には高精度のメタルフィルム抵抗により構成された合計40個の精密リレーが搭載されています。

純アナログ回路で構成された、SN比135dB・歪率0.00006%の超低ノイズ・超低歪回路

100%アナログ回路・アナログコンポーネントで構成されたアナログアンプで、外部D/Aコンバーターまたは外部アナログソースと接続することを前提に設計されています。

入出力間の究極のアナログ信号経路を提供するため、SN比135dBという驚異的な低ノイズ性能を実現、低ノイズ性能や低歪み性能は、一般的なハイエンドプリアンプの性能を凌駕するレベルに到達しています。

帯域幅0.01Hzから500kHz以上を達成しスピードと正確さを実現

再生可能帯域幅はきわめて広帯域で、0.01Hz〜500KHz以上を実現。これは、LA4がオーディオ帯域幅全体にわたって非常に正確な振幅と位相の精度を実現していることを意味し、波形は正確に再現され、スペクトル全体が正確なタイミングで伝送されることを保証しています。

音楽的な倍音を実物に近い精度で再現し、楽器の音の個性をそのままに表現することを可能にしています。


0.5dBステップを実現する高精度ロータリーエンコーダーを搭載

ボリューム・コントロール・ノブには、ヘビーユースにも耐えうる高品質の光学式エンコーダを採用しており、0.5dB/ステップの分解能を維持したまま256段階の音量ステップを簡単に移動することができます。

また、2系統のXLRバランスステレオ入力ならびに2系統のRCAステレオ入力を搭載。XLRバランスステレオ出力を1系統、XLRバランスモノラル・サム出力を1系統、RCAステレオ出力を1系統搭載してます。

多彩な操作を可能にするタッチスクリーン

タッチスクリーンでは、左右音量のバランスコントロール、入力レベルオフセット、入力名、画面調光、リモートコントロール、機能ロックなどの高度な機能に簡単にアクセスできます。

また、ヘルプ画面で各種機能の説明を参照することができます。

D/A CONVERTER:D/Aコンバーター『 DAC3 』について



ESS Technology社のES9028PRO DACを搭載。DACチップの真価を引き出すクアッド32ビット・バランスD/A変換システム搭載

ES9028PROは、8チャンネル出力を持つ32ビット・コンバーターチップで、出力を自由にルーティングすることが可能です。DAC3に搭載されているクアッド32ビット・バランスD/A変換システムは、4チャンネルをアナログドメインで和算し、各出力チャンネルをそれぞれ形成。ES9028PROの8チャンネルある出力を余すところなくフル活用しています。

これにより、ES9028PROの2チャンネル分出力を左右の出力チャンネルに割り当てる設計のDACと比べて、6dB分のSN比向上を実現しただけでなく、全高調波歪率も改善されています。

DAC出力の個々の変換チャンネルの非線形歪は、4つの和算されたチャンネル間で平均化され、音楽信号と相関関係のない非線形歪は6dB減衰されます。

Benchmarkは、優れたアナログオーディオ機器を構築してきた長い歴史を活かし、優れた出力ステージを実現しています。

ジッターに起因する歪みやノイズを140dB以上抑制する、ULTRALOCK3ジッター減衰システム

UltraLock3は、DAC2製品ファミリで使用されているUltraLock2システムの改良版です。位相精度でのロック速度はUltraLock2システムの400ミリ秒だったに対して、UltraLock3は、わずか6ミリ秒で正確なロックを実現しています。

DSP処理は32ビット、DSPヘッドルームは3dB、サンプルレートは211kHzで、ジッターに起因する歪みやノイズは音楽のレベルより少なくとも140dB低く、聴覚の限界値を大きく下回っています。BenchmarkのUltraLock3システムは、聴感上のジッターアーティファクトを全て排除します。

サンプル間ピークによる歪の発生を防止するハイ・ヘッドルームDSP搭載

ほとんどのD/Aコンバーターは、0dBFSを超える信号が入力された際にクリッピングしてしまう製品が多くあります。このような広帯域の歪み成分は、しばしばデジタル再生に不快なノイズや高周波数成分を追加すると考えられています。

DAC3のデジタル処理は、0dBFSを超えて+3.5dBFSのヘッドルームを維持することで、これらの問題を回避しています。

ハイ・ヘッドルームDSPは、特に高い音圧レベルが収録されているデジタル音源を適切に再生する上で、画期的な改善をもたらす技術と言えます。


マルチモード・アシンクロナスUSBオーディオシステム

BenchmarkのUSBシステムはUSB Audio 2.0、DSD、USB Audio 1.1に対応しています。すべてのモードにおいて、USB通信はジッターの不要なソースを排除するためにアシンクロナス(非同期)で行われます。

ジッターに起因する歪は、測定限界(-150 dBFS以上)に達しています。これはまさに最先端の技術です。アシンクロナスUSBシステムは、ハイレゾリューション192kHzのUSB Audio 2.0、DSD再生に対応しています。

電源由来のノイズを徹底的に排除する分散型電源レギュレーション設計

可能な限り低ノイズを実現するために、DAC3では分散型電源レギュレーション設計を採用しています。

重要なサブシステムには、それぞれ少なくとも1つの専用の低ノイズ電圧レギュレータを配置し、電源由来のノイズを徹底的に排除しています。

POWER AMPLIFIER:パワーアンプ『 AHB2 』について



ダイナミックレンジ132dB、周波数特性は0.1Hz〜200kHzに到達! 真のハイレゾリューション性能を実現する超高性能ステレオパワーアンプ。

ハイレゾリューションオーディオフォーマットの性能限界に理想的にマッチするステレオパワーアンプです。

ダイナミックレンジは132dBに達しており、リファレンス・クラスのパワーアンプと比較しても、10〜30dB優れた静粛性を実現しています。加えて、周波数特性は0.1Hz〜200kHzと圧倒的なリニアリティを誇ります。

これまで見落としていたニュアンスやダイナミクス、お気に入りのレコーディングのディテールを発見し、ハイレゾリューションフォーマットの可能性をフルに体験することができるでしょう。

6Ω時480Wを供給可能。A級アンプを凌駕するソニックピュアリティ

AHB2は、A級アンプを凌駕する音の純度を実現したAB級パワーアンプです。小型のパッシブ冷却シャーシは、ブリッジド・モノラル出力の場合、最大で480Wもの大出力を6Ωのインピーダンスのスピーカーにクリーンに供給可能なほか、鳴らすのが難しいスピーカー負荷を駆動するための追加のリザーブを備えています。

電力を大量に消費するA級アンプとは異なり、AHB2はD級(スイッチング方式)のパワーアンプに匹敵するパワー効率を実現しています。

最大29Aのピーク電流を供給可能な高出力

各チャンネルに同時に最大29Aのピーク電流を供給することができます。この堅牢な駆動電流は、最も要求の厳しいタイプのスピーカーであっても軽々とドライブします。

大電流を供給しながら出力をクリーンに保つために、厳密に調整された電源回路を搭載しています。

0.0003%未満と可聴域を下回る歪み率を達成

決して可聴レベルの歪みを発生させることはありません、ほとんどの再生システムでは、AHB2によって生み出される歪みは、聴感上の限界値である0dBSPLにすら到達しません。

古典的なアンプのトポロジーが持つ歪みの限界から抜け出し、ハイレゾリューションオーディオ再生の世界へと足を踏み入れることを可能にします。


「THX Achromatic Audio Amplifier(AAA)」テクノロジー採用

THXが特許を取得したTHX-AAA(Achromatic Audio Amplifier)テクノロジーを採用した唯一のパワーアンプです。THX-AAAは、いくつかの省電力技術を可能にすると同時に、歪みを限りなく低いレベルにまで低減します。

THXの特許回路と独自の優れた電源設計、信号配線技術、出力段設計のコンビネーションがもたらす、SN比132dBの実力! 2つの新しいフィードフォワード・エラー訂正技術により、ほとんどの歪みの原因を排除しています。

その特許技術を最大限に活かすため、様々な革新的な回路設計を搭載。その結果、クールランニング時のS/N比は132dBを実現し、歪みは最高級のテスト機器の測定限界以下となっています。

●磁場を最小限に抑えながらも、厳しいレギュレーションと低リップルを維持することを可能にしたこれまでの常識を覆す電源部を開発
●ローゲイン・トポロジーにより、ノイズを最小限に抑えながらD/Aコンバーターとパワーアンプ間のゲイン・ステージングを最適化
●洗練されたシールドとスターカッド信号分配技術により、干渉に対する優れた耐性を実現
●独自の出力段にはH級トラッキング電源レールを採用し、効率を向上

The First Wattの重要性

アメリカの著名なオーディオ評論家のディック・オルシャー氏はかつて「”the first Watt is the most important Watt”(最初のワットが最も重要なワットである)」と言いました。

THX-AAAテクノロジーは、最初のワットから最後のワットまで、クロスオーバー歪みを発生させることはありません。ハイパワーのメインアンプ回路と並列に動作する超クリーンな低消費電力のエラー補正用アンプ回路が搭載されており、この補正用アンプ回路は、メイン出力デバイスがプッシュ状態とプル状態の間で遷移している間に、出力をアクティブに駆動します。したがって、AHB2は、A級アンプのようにクロスオーバー歪みが発生しません。

また、フィードフォワード方式を採用しているため、メインアンプ回路の出力デバイスで発生する出力誤差をほとんど排除することが可能です。

POWER AMPLIFIER『 AHB2 』の製品名「AHB」の由来

A、H、Bの文字は、アンプの出力ステージのユニークなトポロジーを表しています。AHB2は、フィードフォワードエラー補正システムを使用して、AB級アンプ回路とクラスH電源のトポロジーを組み合わせています。

しかし、それだけではありません、1983年まで遡ると、Benchmarkの初期製品の回路図にはA.H.B.のイニシャルが見られます。これはBenchmarkの創業者であるAllen H. Burdickのイニシャルです。彼はBenchmarkの初期の製品の多くを自身で設計しました。

アレンはオーディオに対する生涯の情熱を持ち、プロオーディオ業界をリードするイノベーターの一人となりました。AHB2は、彼の名前にちなんで名付けられました。

試聴してみました

今回試聴したのは、D/Aコンバーターの「DAC3B」、プリアンプの「LA4」、パワーアンプ「AHB2」の3機種。パワーアンプの「AHB2」はBTL接続(MONO仕様)にしてL/Rで2台使って試聴。


「ichinose」の感想コメント

PRO現場から生まれて発展してきたブランドらしく、素晴らしくトランジェントの良いサウンドを聴かせてくれます。非常に駆動力の高いアンプでギュッとユニットの振動板を鷲掴みしているため、音が静止した瞬間の静寂感、音が出る瞬間の反応の良さが何とも魅力的。

力に満ちた躍動感あふれるサウンドで、歪感の無い澄み切った音場と、非常に高い精度の音の表情を聴かせてくれる!聴感的なSN比が素晴らしく高い!!

小音量時に音が痩せることも無く、気持ちの良いサウンドを聴かせてくれます。更にこのサウンドが最大音圧まで到達できる実力があるため、一般的な音量では余裕綽々で、パワーのある車を流しているときのあの気持ちよ〜い感覚を味わえます。

20年以上以前に愛用していた「WadiaPRO(ワディアのPRO機器D/Aコンバーター)」を少し思い出しました。あれを近未来的?に改良したサウンドでしょうか。

色付けや個性などは微塵も感じることはないため、接続する機器や部屋を選ぶ事もなく、サイズもコンパクトで総合的な使いやすさは一級品と言えますね。

近年のPRO機器はパワーだけでなく、しなやかさや、透明感が無いと評価されませんが、見事なまでに対応していると思います。プライスやスペック以上の実力の高さは本物で、評価や人気の高さも納得です。


「とうふ」の感想コメント

「モニター」系、と聞くと「かしこまったサウンド」「真面目過ぎるサウンド」という印象をお持ちの諸兄もいらっしゃるかもしれませんが、このBenchmark【LA4】【AHB2】の持つ表現力はそのような「モニター」とは全く無縁と言っていいでしょう。

ポップスやロックを聴くと、演奏が一歩前に出るような、エネルギッシュで有機的、躍動感のある表情を楽しめます。次にクラシックやJazz等を聴くと音の静から動への表現が特徴的な、鮮烈な表現に驚かされました。

一音一音を丁寧に表現することから、シンと静まった静寂の状態から器楽の音が響き渡る際の瞬発力、スピード感は他のアンプでは中々味わえない、オンリーワンの表現と言えるのではないでしょうか。

特徴的な表現力ではありますが、しかし、決して装飾的な音色というわけではなく、あくまでカラーレスで音楽が自然に耳に届きます。いつも聴きなれた音源なのに、躍動感、スピード感、静寂感の表現が大きく向上することで、同じ音源ながらも新たな発見をいくつもさせてくれる。

さらに、聴き入っているとつい忘れてしまいそうになりますが、本体はハーフサイズのプリ/パワーアンプ(今回はBTLで2台利用)である事も忘れてはなりません。このサイズ、設置スペースでこれだけの表現力を持つアンプ。まさに驚愕と言える存在でしょう!





今回試聴した機種