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音場工房

[ 2021年 10月 19日付 ]



アキュフェーズより発表された新製品プリメインアンプ「E-5000」を一足先に試聴レポート!



  • ichinose
  • こんにちは、ハイエンドオーディオ担当の "ichinose" です。

    今回は、アキュフェーズより発表された新製品プリメインアンプ「E-5000」を一足先に試聴しましたので、ご紹介します

    新製品「E-5000」は、 創立50周年記念モデル第4弾として開発された、ハイパワーAB級インテグレーテッド・アンプのフラグシップ・モデルです。

    プリアンプとパワーアンプの上級モデルの開発で培った技術をフルに投入し、セパレート・アンプと肩を並べるハイパワーと高音質を両立した製品です。

    ボリューム・コントロールにバランス回路『 Balanced AAVA 』を搭載、パワーアンプ部にもバランス回路『 インスツルメンテーション・アンプ 』を採用し、完全バランス型の回路構成を実現!

    また、『 バランスド・リモート・センシング 』や『 半導体スイ ッチ 』による出力インピーダンスの低減により、スピーカーの制動に大きな影響を与えるダンピング・ファクターは1,000を達成しています。

電力増幅段にはパワー・トランジスターによる5パラレル・プッシュプルのAB級動作を採用し、大型AB級パワーアンプに匹敵する定格出力、240W/8Ω、320W/4Ωを達成。

最新の回路と高品位な素材を投入し、磨き上げた感性と先進の技術で新境地を開く『 E-5000 』はセパレート・アンプに匹敵する力強いサウンドを堪能できます。

担当者からの第一印象

AB級のフラッグシップモデルとの事でかなりの大きさと重さがあります。横幅:465mm x高さ:211mm x奥行:502mm、重さ:33.8kgと堂々とした貫禄があります。

しかし、他のモデルと比べると新設計のメーターが一かなり大きく、全体のバランスが整っているために、あまり大きさを感じさせないのかもしれません。

「E-800」「E-650」「E-480」と比べてみるとよく分かりますね、非常によく考えられたデザインに仕上げっていると思います。

「E-800」のような超ド級の迫力感はありませんが・・。

写真は左上「E-5000」、右上「E-800」、左下「E-650」、右下「E-480」

新設計のアナログの大型メーターが特徴です! やはり、個人的にはアナログのメーターが嬉しいです!

ちなみに、今後のプリメインアンプの型番は、AB級モデルは「E-○○○○=数字4桁」で展開、A級モデルは従来通りの「E-○○○=数字3桁」で展開するそうです。

ボリューム・コントロール回路には『 AAVA 』の進化版、バランス回路『 Balanced AAVA 』を搭載

《 可変抵抗体 》を使用しない「AAVA(Accuphase Analog Vari-gain Amplifier)」は、 音楽信号がインピーダンス変化の影響を受けず、高SN比、低ひずみ率を維持しながら、音質を変化させずに音量調整が可能です。

本機ではAAVAを2回路平衡駆動し、バランス入力→バランス出力の完全バランス回路を実現する『 Balanced AAVA 』を搭載しています。

※《 AAVA(音量調整)システム 》は、アキュフェーズ株式会社の特許回路です。

『 一般的なボリューム ・コントロール 』と『 AAVA方式ボリューム ・コントロール 』の比較。

※・一般的なボリューム ・コントロール:一般的な音量調整は、入力信号を可変抵抗器や固定抵抗器の組み合わせで一旦減衰させた後、固定ゲインのアンプで増幅して音量を変化させるため、以下のような課題があります。

・音楽信号を減衰させる際、SN比やひずみ率が悪化する。

・可変抵抗器の接点の経年変化によりガリが発生する。

※・AAVA方式ボリューム ・コントロール:AAVAはボリューム位置に合わせて、 ゲインの異なる複数の電流信号を組み合わせて音量を調整します。

一般的なボリューム ・コントロールと違い、入力信号を減衰させないため、以下のような特長があります。

・アンプのゲインで音量を直接調整するため、高SN比や低ひずみ率を実現できる。

・可変抵抗器を使わずに回路が構成できるため、 長期に渡り信頼性を確保できる。

E-5000では、AAVAの雑音性能を大きく左右する入力アンプ及びIV変換アンプをディスクリート構成にすることで、高S/N化を実現しています。

『 AAVA方式ボリューム ・コントロール 』の特長

AAVAはアナログ・アンプで構成された純粋なアナログ回路です。

変わらない周波数特性や音質:可変抵抗器による音量調整では、実用的な音量レベルでインピーダンスが高くなりノイズが増えてしまいます。 信号経路に可変抵抗器がないため、高いSN比の維持が可能、ボリューム位置を変えても周波数特性に変化がなく、ボリューム位置の違いによる音質の変化がほとんどありません。

音量の微調整が可能:重み付けされた16種類の電流信号を電流スイッチで組み合わせて音量を変更します。つまり電流スイッチは 『 2の16乗=65,536 』 通りの組み合わせが可能であり、従来の可変抵抗器を使用したボリューム ・ コントロールを凌駕する音量の微調整が可能です。

正確な左右の音量バランス:従来使われていた可変抵抗器では、左右チャンネルの連動誤差により左右で音量差を生じていました。精度の高い固定抵抗器を使用するため、左右で音量差がほとんどありません。

優れたチャンネル ・セパレーション:左右のチャンネルが独立した回路になるため、チャンネル間のクロストークがほとんどなく、理想的なチャンネル・セパレーションを実現しています。

正確に機能するアッテネーターやバランス ・コントロール:左右のバランス ・ コントロールやアッテネーターといった機能もAAVAが実現しており、音楽信号が余分な回路を通らないため、 高い性能と高音質を維持しています。

優れた操作性:操作性を考慮して、従来のボリューム ・ コントロールと変わらないボリューム・ノブによる音量調整が可能です。

ディスプレイ部に音量レベルを表示:ボリューム・ノブを最大に回した状態を基準(0dB)にした減衰度を表示。もちろん、消灯も可能です。

動作音にも配慮した、 高精度・高剛性の《 ボリューム ・センサー機構 》

AAVAでは、ボリューム・ノブの位置に応じて電流スイッチのON/OFFを切り替え、音量を調整します。

この時、ボリュームの位置を検出するのが『 ボリューム・センサー機構 』です。このボリューム ・センサー機構を自社開発、アルミニウム・ブロックを超精密加工で削り出した硬く重い素材を用いることで、ノブ回転時の滑らかな動作、重厚な操作感、緻密な位置検出を実現。

歯車は、互いにかみ合う際に動作音を発生させやすい部品ですが、このボリューム・センサー機構では、歯車が常に一定の圧力でかみ合うように改良を施してあり、動作音を感じさせない静かで快適な音量調整が可能です。

「E-800」や「C-2900」と基本的に同じ構造の超高級パーツが使われています。

パワー・トランジスター、5パラレル接続※@・コンメンタリ・プッシュプルAB級動作※Aが実現する240W/8Ω、320W/4Ωのハイパワー

スピーカーのポテンシャルを100%引き出すため、パワーアンプ部は激しく変動するスピーカーのインピーダンスによる影響を受けることなく、スピーカーを定電圧駆動することが大切です。

スピーカーを定電圧駆動するためには、パワーアンプ部はインピーダンスに反比例する電流をスピーカーに供給しなければなりません。例えば、4Ω負荷では8Ω負荷の2倍の電流になります。

パワー・トランジスターの数を増やして電流供給能力を上げ、出力インピーダンスを下げることで、動的な定電圧駆動を実現。

低出力インピーダンス化はリアクタンス成分を含んだ負荷の駆動にも優れ、スピーカーのヴォイスコイルで発生する逆起電力を吸収し、IMひずみの発生を防ぎます。

電力増幅段には、高周波特性に優れ、許容損失電力約150W、レイン電流約15Aの大電力パワー・トランジスターを採用。この素子を5パラレル接続プッシュプルAB級動作させることにより、非常に低い出力インピーダンスを実現。

さらに1ペア当たりのパワーの負担が1/5に軽減されるため、大電力領域での動作が安定し、諸特性が向上します。出力素子は大型ヒートシンクに分散しながら搭載されることで、効率の高い放熱を行っています。

これらの技術により、定格出力(240W/8Ω、 320W/4Ω)のハイパワーを実現しています。

※@:5パラレル接続とは!

一般的な高周波用の半導体素子は、素子の内部で小さなトランジスターやFETを並列接続し、素子が持つ固有のインピーダンスや内部雑音を減少させて、リニアリティを改善しています。

また並列に接続することでチップの総面積が大きくなり、素子から発生する熱を分散させ、安定した動作を行います。

これらの手法を応用し、出力段の半導体素子を5回路並列接続することで、電流Tを1/5ずつに分散し、大きな電流供給能力を獲得しています。

※A:コンプリメンタリー・プッシュプルAB級動作とは!

コンプリメンタリー・プッシュプルとは、対称的な動作を行うNPNトランジスターとPNPトランジスターの2つの素子がペアとなり、信号を出力する増幅回路です。

AB級アンプの場合、小さな振幅ではNPNトランジスターとPNPトランジスターが同時に動作するA級動作をしますが、大きな振幅のプラス側ではNPNトランジスターが動作し、マイナス側ではPNPトランジスターが動作します。

そのため、A級アンプと同等の低ひずみを維持しながら、低い消費電力とハイパワーを実現しました。

新設計・高感度アナログ式ピーク・パワーメーター搭載

出力電力をモニターできる視認性に優れた大型のアナログ式ピーク・パワーメーターを装備。

このパワーメーターは対数圧縮型ですので、広いダイナミックレンジを確保、感度が高く、-50dBといった小音量再生時にも指針の動きを確認できます。

さらに、ピークを捕捉するので、時々刻々と変化する音楽信号を正確に捉えることができます。

メーター内の照明にはLEDを採用し、明るく見やすくムラのない表示が可能です。もちろん、照明を消すことも可能です。

大型高効率トロイダル・トランスと大容量フィルター・コンデンサーによる強力電源部

大電力容量の高効率トロイダル・トランスを採用、ドーナツ状のコアに太い銅線を捲くトロイダル・トランスは、インピーダンスが非常に低く、変換効率が極めて高いため、オーディオ用として優れた特性を備えています。

また、平滑用アルミ電解コンデンサーには、100V/40,000μFの大容量 ・高音質タイプを2個搭載し、余裕ある電源部を構成。

さらに、小信号を扱うプリアンプ部には専用電源回路を搭載し、パワーアンプ部との干渉を防止。

加えて、プリアンプ部とパワーアンプ部の搭載位置を分離することで、相互干渉のない理想的な動作環境を実現しています。

インスツルメンテーション ・ アンプ構成のパワーアンプ

パワーアンプ部には『 インスツルメンテーション・アンプ(Instrumentation Amplifier) 』 構成を採用。

この方式は、信号入力段を含めたパワーアンプ全体で、バランス・アンプを構成しており、入力端子から出力段までの信号経路をバランス伝送化。

このため、機器内で発生する雑音を除去する能力や低ひずみ率などの諸性能に優れているだけでなく、周囲の環境変化に非常に強く、パワーアンプとしての安定度・信頼性がより一層向上。回路の改善や部品定数の最適化により低雑音化を図っています。

インスツルメンテーション・アンプを構成するパワーアンプ部分に、優れた性能と音質を誇る独自の『 MCS+ 』 回路を搭載しました。

MCS(Multiple Circuit Summing-up)は、同一回路を並列接続することで諸特性を向上させる、アキュフェーズ・オリジナルの回路方式です。

『 MCS+ 』はMCSをさらに進化させたもので、初段バッファアンプのバイアス回路を改善して回路安定度を高め、並列動作させる部分を『 電流-電圧変換部 』のドライブ段にまで拡張して、さらなる低雑音化を実現する回路です。

プリアンプ部とパワーアンプ部を単独で使用可能

プリアンプ部とパワーアンプ部を分離して、独立したプリアンプとパワーアンプとして使用することが可能。使い勝手を考慮し、切り替えはフロントパネルの『 MAIN IN 』スイッチで可能。この機能を活用すれば、別のプリアンプとの兼用なども可能です。

また、パワーアンプ部の利得(28dB)はアキュフェーズ・パワーアンプに合わせてあるので、パワーアンプを追加したバイアンプ接続を行っても、高域と低域の間に利得の違いは発生しません。

なお、プリアンプ部の出力(PRE OUT)はこのスイッチに関係なく、常時出力されます。パワーアンプ部の入力にはバランス端子とライン端子の2系統を装備しており、バランス入力端子の極性は位相切替スイッチで切り替えることができます。

出力信号を電流で帰還するカレント・フィードバック増幅回路を採用、ゲインが変化しても周波数特性の変化がほとんどなく、高域の位相特性も優れています。

ダンピング ・ ファクター1.000を実現

ダンピング・ファクター(DF)とは、パワーアンプの出力インピーダンス(Z)とスピーカーのインピーダンス(R)の比(DF=R/Z)のことであり、 数値が大きいほどアンプがスピーカーをコントロールする能力が高いことを意味します。

つまり、DFが高いほど短い時間でスピーカーからの逆起電力を吸収して不要な振動を抑え、理想的なスピーカー駆動を実現します。

アンプ回路やNFB経路等の最適化によって、アンプの出力インピーダンスを小さくすることで、E-480と比べて67%向上し、ダンピング・ファクター(DF)1.000を実現しています。

担当者による試聴記

日本橋店にて試聴しました。

価格的にはA級ハイエンドモデルの「E-800」98万円(税別)と並ぶ、アキュフェーズのプリメインアンプの最上級モデルとなります。

AB級モデルとしては今まで「E-480」55万円(税別)が最上級モデルで、A級シリーズが上位モデルとして発売されていましたが、今回発売された「E-5000」は90万円(税別)と、「E-800」と並ぶグレードとして発売されていて、プリメインアンプとしては新たな展開と言えます。

試聴に使ったスピーカーはB&Wの新製品で今後のスタンダードとなるであろう805D4で行いました。

比較試聴には「E-800」を用意しました。

とうふの試聴記

E-5000はアキュフェーズ50周年を記念し作成されたモデル。アキュフェーズのAB級最上位モデルにふさわしい表現力を目指し設計された、とのことで気を引き締めての試聴です。

一聴して感心したのは中域の密度とリアリティです。エネルギッシュで瑞々しい音色は、一音一音の説得力がE-800と比較しても決して負けていません。

分離や音の奥行き感もよく表現されており、プリメインアンプとしては破格の表現力と言えるでしょう。

低域のアタック感がE-800と比べ若干耳当たりがやさしく感じる事もありますが、AB級らしい反応の良さが不満と感じさせず、むしろ長時間聴くのならばE-5000のほうが良いかも?と私は感じました。

E-800同様、「プリメインアンプ」という枠でアキュフェーズが現状できるすべてが込められた最上のAB級アンプE-5000。音楽の旨さを味わい尽くすプリメインアンプとして感動させて頂きました。

ichinoseの試聴記

純A級の「E-800」とはまた違ったアプローチでAB級ならではのサウンドが魅力的です。ダンピングファクターの高さからか、無理なくスピーカーをドライブしている余裕感、聴感上のS/N感の良さを感じます。

ベールが取り払われたような3次元的な音場の表現力が素晴らしく、クリアで広い音場に、音像もしっかりと見せてくれます。

AB級ならではの反応が良く、ヌケの良いサウンドで、非常に気持ちよく音楽を堪能できた事をご報告いたします。

内容を見てみると、やはりプリ回路が非常に充実していることから、この「E-5000」も「E-800」同様プリメインアンプの域を超えた、セパレートアンプでなければ聴けなかった、新しいプリメインアンプの世界を感じさせてくれます。

今回接続したスピーカーは「805D4」でしたが、ドライブ力は、まだまだ余裕綽々といった感じでしたので、かなり難しい大型のフロア型スピーカーにも対応出来ると思います、個人的には「802D4」「801D4」でも是非試したいと思えるほどでした。

※次回は同時に試聴させていただいたハイエンドプリアンプ「C-2900」の試聴記をご報告の予定です。





今回試聴した機種