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音場工房

[ 2021年 11月 9日付 ]



ラックスマンより発売された、フラッグシップ・パワーアンプ「M-10X」をご紹介!



  • ichinose
  • こんにちは、ハイエンドオーディオ担当の "ichinose" です。

    今回は、10月下旬に発売された、ラックスマンのフラッグシップ・パワーアンプ「M-10X」をご紹介します。

    ラックスマンの増幅回路の心臓部である「ODNF」を一新し、最新の高音質・増幅帰還エンジン「LIFES-1.0」を初めて搭載しているのが最大の特徴です。

    2025年に100周年を迎えるラックスが送り出す、渾身の仕上がりを誇るパワーアンプです!!

ラックスマンの増幅回路の原点「ODNF」とは?

高次元の音楽再現を求め、音楽信号と歪の関係を根本から見直して作り上げた次世代回路が、ODNF回路です。

ラックスマンはまず、増幅回路のために位相補正を必要としない超広帯域、ハイスルーレート、低歪回路を開発、従来の負帰還回路(NFB)では避けられなかった位相補正を排除しました。

また、NFBの在り方そのものにも着目し、出力から歪成分だけを増幅回路の最終段へフィードバック。NFB手法を音楽信号から切り離すことで、初期スルーレートの速さと超広帯域を獲得しています。

さらに、NFB回路において低域に不自然なカラーレーションを与える要因となっていたDCサーボアンプを排除。これにより全帯域の音色が統一された自然な音楽再生を実現しています。

ODNFを進化させた「LIFES」の誕生!!

「出力と入力の差分により検出された歪成分だけをフィードバックする」という従来のODNF回路の概念を継承しつつも、回路全てのパーツの特性を見直し、数々の試作と試聴を繰り返した末に辿り着いた、新しい増幅回路方式とのことです。

ラックスマンは2025年に迎える創業100周年を見据え、さらにリアルで瑞々しく豊かな音楽性と圧倒的なオーディオ性能を獲得した、新しい増幅回路方式“LIFES”を完成しました。

LIFESは、主アンプと歪検出回路からなる増幅帰還回路を統合し、音楽信号を司るアンプ製品の心臓部を担う、ラックスマンの新しい生命(LIFES)ともいえる、増幅帰還エンジン『 Luxman Integrated Feedback Engine System 』の頭文字を取った略称です。

1999年以来、長らくラックスマン製品の音質を支えてきたODNFを刷新するにあたり、ラックスマン開発部門では、オーディオ性能のドラスティックな改善を果たすため、すべての回路に対してソフトウェアによる再シミュレーションを実施しました。

その過程では、バージョンアップを重ねて肥大化した回路箇所を一旦シンプルにそぎ落とし、回路を構成するパーツひとつひとつの特性を再確認する作業が必要でした。

そして、論理的に完成した机上の理想回路をもとに、現状入手できるオーディオ性能に優れたパーツを時間をかけて吟味し、各回路に当てはめていきました。

その後、組み上げた実験基板を既存製品に仮接続しながら、試聴と試作を繰り返した結果、性能も音質も、ラックスマンの次世代製品に採用するにふさわしいグレードを実現したと判断し、”LIFES 1.0″として、満を持して8年ぶりのフラグシップとなる、ステレオ・パワーアンプ「M-10X」に搭載したのです。

4X2アウトプット構成の「LIFES1.0」を搭載

@シンプルかつ高性能化を追及

増幅回路の静特性を大きくステージアップするため、歪を検出する差分アンプの改良は必須でした。

多くのアプローチを検討した結果、差分アンプの初段に優れた特性のNチャンネル・デュアルJFETを採用することで、歪の検出精度を大幅に向上させました。

性能を改善しながら素子のパラレル数の削減にも成功し、増幅回路全体の動作構成を大きく変更することによって、増幅時の歪をおよそ半分に低減しました。

A定電圧回路の高レギュレーション化

音楽信号の細やかなニュアンスを伝えるデリケートな増幅動作をサポートするため、新たな高性能・定電流源と米ビシェイ社製ツェナーダイオードの組み合わせにより、ドライバー段、および入力変換アンプの定電圧回路を一新しました。

入力変動と負荷変動に強く、交流ゲインと直流ゲインを変化させるハイイナーシャ電源により、音楽のディテールをしっかりと再現する、レギュレーション性能に優れた電源供給回路を採用しました。

B環境変化に対する改善

増幅回路の安定動作を目的として、デュアル・トランジスタを採用したカレントミラー型の定電流回路を、LIFESの内部に片チャンネルあたり4基配置し、製品の設置される環境温度や電源電圧の変動による影響を徹底的に抑えました。

さらに電流増幅段の温度補償はトランジスタとサーミスタを組み合わせ、バイアス変動を抑える構成とすることで、より安定して製品を動作させるための回路に改良しました。

瞬時最大出力:1,200W+1,200W(1Ω)の圧倒的なパワーリニアリティ

パワーアンプの役割は、スピーカーの持つ特性を十全に引き出しながら、コントロールアンプから送られた音楽信号を入力に忠実に増幅し、スピーカーユニットを正確に振動させること。

M-10Xに搭載されたLIFESでは、回路全体をシンプルに再構築することで、性能を改善しながら素子のパラレル数削減にも成功し、増幅時の歪をおよそ半分に低減しました。

また、一新された定電圧回路は交流ゲインと直流ゲインを変化させるハイイナーシャ(高慣性)電源を構成。より安定的に高性能を維持可能な方式を採用しました。

様々な負荷状況に追従する3段ダーリントン4パラレルプッシュプルの増幅回路をチャンネルあたり2モジュール組み合わせた4×2アウトプット構成の電流増幅段は、定格出力150W+150W(8Ω)から瞬時最大1,200W+1,200W(1Ω)までの完全なパワーリニアリティを実現。

綿密なバイアス電流設定による12Wまでの純A級動作とともに、圧倒的な力強さと密度感のある音質を高次元で両立しました。

存在感を増した立体的なパネル構成

「M-10X」は、先代の「M-900u」を引き継ぐオーセンティックなフロントフェイスに、側面を大きくスラントさせた極厚のフロントパネルとボンネットとの間に大胆で繊細な“くびれ”を表現。

真空管コントロールアンプ「CL-1000」やSACDプレーヤー「D-10X」といったフラグシップモデルに共通する立体的で官能的な筐体デザインを採用し、最上級モデルとしての存在感とグレードを極めた音楽性を具現化しました。

音楽の躍動を表現するアナログメーター

シンプルながら気品に満ちたデザインのフロントパネルには、存在感が際立つ針式の大型アナログメーターを装備。

白色LEDによる電球色の照明が、リスニングポジションから見やすく視認性を向上させたスケール板を上品に照らします。

BTL(モノラル)モード時には、動作メーター(Lチャンネル側)がフロントパネル上のセンターに位置するよう、リデザインも行いました。

スーパーレギュレーション・トランス

M-10Xの圧倒的なパワーとドライバビリティを支える電源部には、平角型の銅巻線を隙間なく巻くことにより損失空間を無くし、線間容量の低減と結合力の向上、磁界の安定化を実現するEI型のスーパーレギュレーション電源トランスを搭載。

1,250VA(瞬時最大2,500VA)という大容量によって、あらゆる負荷変動に揺らぐことのない絶大なレギュレーション性能を手に入れました。

伝統のハイイナーシャ電源構成

LR独立20,000μF×4の新開発・大容量ブロックコンデンサーと大型電源トランスを組み合わせた、ラックスマン伝統のハイイナーシャ(高慣性)電源構成。

そして、4接点をパラレル接続した低抵抗の大容量スピーカーリレーや、スピーカー端子までのバスバー直結方式など、信号の徹底的なローインピーダンス伝送設計により、M-10Xの強力な負荷追従性能がサポートされています。

こだわりの高音質カスタムパーツ

回路を構成するパーツのひとつひとつは、製品のオーディオ性能や音楽性を左右する重要な要素となります。

M-10Xでは、音声信号の経由する各種コンデンサーや抵抗、そして配線材や端子類にいたるまで、徹底した試聴を重ね、高度な技術と感性でこだわりぬいたオリジナルのカスタムパーツ群を大量に投入。

ラックスマンの求める音質哲学を実現するためには努力を惜しみません。

振動対策とループレスシャーシ

48kgを超える本体を支えるボトム部には、外来振動を遮断しながら内部で発生した振動を素早く逃がすことで、デリケートな音楽信号を不要な振動から守る、大型のグラデーション鋳鉄製レッグを装着。

また金属筐体には、アースのループを発生させず、シャーシ電流によるアース・インピーダンスの上昇や発生磁界の影響を隔絶するループレスシャーシ構造を採用しました。

音質重視のRCA端子とACインレット

本体背面の入力端子には、銅と同等の導電率と真鍮に匹敵する硬度を併せ持つ、カッパーアロイ合金製の高性能RCA端子を装備しました。

また、接触抵抗を低減する金メッキ仕上げのACインレットは、従来モデルと装着方向を天地反転させ、端子全体でケーブルの重量をサポートする構造に改良。電源ケーブルのグラつきを抑え、安定的な保持を実現します。

D.U.C.C.導体採用の電源ケーブル

M-10Xには、ハイエンド製品専用電源ケーブル「JPA-15000」をベースに、伸びやかな音質が得られるノンツイスト構造の採用や、3.5mm2径の導体断面積はそのままに、芯線の30%を世界最高水準の純度の銅を使用した「7N-Class D.U.C.C.※」に変更して性能と音質を大幅にグレードアップした、新開発の「JPA-17000」を付属しました。

※ D.U.C.C.は、三菱電線工業株式会社の登録商標です。

ハイエンドオーディオ担当:ichinoseより

先代の「M-900u」の発売が2013年でしたので、何と8年ぶりのフルモデルチェンジとなりますね!

一見すると同じフロントデザインかと思いましたが、フロントパネルが浮いて見える凝った構造になっており、比べるとかなり高級感があります!!

内部の回路構成やレイアウトも基本的には継承されているようですが、部材や回路は細部にわたり見直されており、究極の完成度を誇ります!!

音質的には、最新のラックスマンのサウンドは、非常に瞬発力があり、音場の空間表現力が飛躍的に高まって、開放的なサウンドに仕上がっています。

この洗練されたサウンドは、100周年を迎える今後のラックスマンサウンドの指標になりえる、高いクオリティーと音楽性を両立しているサウンドとの事です。

※ 店舗に導入されましたら、改めて試聴レポートさせてもらう予定です。





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