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音場工房

[ 2022年 5月 3日付 ]



ウイルソンオーディオの新モデル「サブリナX」をご紹介



  • こんにちは、ハイエンドオーディオ担当の "ichinose" です。
    今回は、エントリー向けでありながら、フラッグシップの魂を注入した「Wilson Audio」の最小フロアスタンディングスピーカー新モデル「Sabrina-X」をご紹介します。

ウイルソンオーディオの歴史

米国オーディオ界のレジェンドであるDavid Wilson(ディビッド・ウイルソン)により、1974年に創設された米国を代表するハイエンドブランドです。

その歴史はアナログターンテーブルの製作からスタート。
その後、高音質レコードの制作をおこなうレコーディングエンジニアとしても活動を始めます。

ウイルソンの初期モデル「WATT(Wilson Audio Tiny Tot)」は、もともとディビッド・ウィルソンが個人的な使用のために製作したモニターでした。録音現場に不適切なモニターを置いた結果を経験し、レコーディングを続け、ライブイベントの実際のサウンドをキャプチャするには、高性能なモニタースピーカーが必要だと気付き製作。

最初ウィルソンは「WATT」を商品として販売するつもりはありませんでしたが、CESショーで「WATT」が録音のデモに使用された事で話題となり、オーディオファンがそれまで見たり聴いたりしたことのない次元を実現した、ウィルソンオーディオの展示は大勢の観客を魅了!

また、ディビッド自身も音響工学と音楽芸術の融合であるスピーカーの開発に魅力を感じたこともあり、スピーカー専業メーカーとして舵を切りました。


WATTの概要

・ツイーター:1インチグラスファイバー反転ドーム
・ミッドレンジ:6.5 インチ
・エンクロージャと材料:質量減衰アクリルポリマー

「Wilson Audio」の製品哲学は、音響工学と音楽芸術を高度なレベルで融合させるということで常に一貫しています。弛まない技術革新は単にスペックを向上させるのではなく、更に高度な音楽再生に向けての手段なのです。

他社に先駆けてスピーカーのタイムアライメントの重要性に着目したことが、その後のハイエンドスピーカー界に多大なる影響を与えるなど、常にハイエンドスピーカー界のベンチマーク的存在であり続けています。

残念ながら、創業者David Wilsonは2018年5月に逝去いたしましたが、Davidの後継者であるDaryl Wilsonにより、「Wilson Audio」はさらなる飛躍の時代を迎えています。

「Wilson Audio」の最小フロアスタンディングシリーズ「Sabrina」のオリジナルモデルが登場したのは2015年。オリジナル「Sabrina」が登場して以降、現在に至るまでの数年間は、創業者David Wilsonから後継者Daryl Wilsonへのバトンタッチなど、「Wilson Audio」にとって大きな変革の時期でありました。

2019年後半に発表された、新チーフエンジニアDaryl Wilsonの手によるフラッグシップモデル「Chronosonic XVX」8,000万円(ペア)はまさに、これからの新生「Wilson Audio」の指針となるモデルです。


最新モデル「Sabrina X」

そのフラッグシップの魂を注入した最初のモデルが「Sabrina」シリーズの新モデル「Sabrina X」となります。外観のプロポーションは前作「Sabrina」と変わりませんが、直近の「Wilson Audio」の変革により大きな進化を遂げて変貌した、フルモデルチェンジモデルです。


Xマテリアルを100%使用した高剛性かつ制振性に優れたエンクロージャー

「Wilson Audio」が誇るキャビネット用コンポジット材Xマテリアルは鋼鉄のような強度とずば抜けた振動吸収性能を併せ持つ、現存する最強のキャビネット材と言われています!!

このXマテリアルは、オリジナル「Sabrina」ではフロントバッフル面とボトムプレートにのみ採用されていましたが、「Sabrina X」では、エンクロージャーのすべての面にXマテリアルを採用。
また、向かい合うすべての面が平行にならない形状を採用することで、エンクロージャーの内部反射を排除。

この大きな進化により、エンクロージャーの振動は完全にコントロールされ、低音のトランジェントとサウンド全体のクリアネスを大きく改善。この設計には近年導入されたレーザーによる振動解析技術の進化も大きく寄与しているとの事です。

エンクロージャーの微振動をも正確に測定することが可能になり、今まで勘に頼っていたブレーシング(補強)の配置をより最適にすることができ、エンクロージャーの共振レベルの低減を実現しています。


Xマテリアルに直接加工されたエアーベント

Xマテリアルは鋼鉄のような強度と硬度を併せ持つ優れた材質で金属と同じように直接切削加工することが可能です。オリジナル「Sabrina」ではミッドレンジ用ベントにアルミニウム製のリアダクトを取り付けていましたが、「SabrinaX」のエアーベントはリアパネルに直接フライス加工されています。

複雑な通気口の形状が可能になり、ミッドレンジ帯域にベントからの付帯音が発生することを防いでいます。


「Audio CapX-WA」自社開発のクロスオーバー用コンデンサー

コイルやコンデンサなど電気信号が直接流れる素子の品質を高めることは、クロスオーバー回路の音質向上に大きく寄与します。抵抗やコイルは構造が比較的簡単であることから高品質の素子を手に入れることはそれほど難しくありませんが、コンデンサは簡単に製造することが不可能なために、オーディオ専用の高音質コンデンサというものは今の世の中に存在しないと言っても良いほどです。

その現状を打破するために「Wilson Audio」は数年前よりコンデンサの自社設計と生産を行なっています。

この専用コンデンサーはフラッグシップモデル「Chronosonic XVX」で初めて採用されましたが、同様のカスタムコンデンサを「Sabrina X」でも採用。ノイズフロアが更に低下、ダイナミックレンジの更に大きく改善。より細かな解像度でディテイルまでを再現可能となっています。


最新のドライバーを搭載した3ウエイ構成

・ツイータードライバー:1 inch(2.5cm) シルクソフトドーム (Convergent Synergy MK5)

限定生産の最高峰モデル「WAMM Master Chronosonic」用に開発された最新ソフトドームツイーター「Convergent SynergyMK5」を搭載。超低歪みで微小信号にも反応性が良く、かつ耐入力パワーも高い、現時点で理想的なツイーターです。

・ミッドレンジドライバー:5.75 inch (14.6cm) コートパルプコーン

「Wilson Audio」が定番的に使用している5.75インチ径コーティングセルロースパルプコーンドライバーを採用。使用帯域全体で非常にフラットな特性を持ち、音楽再生に重要な帯域を受け持つにふさわしいプレーンでナチュラルなサウンドが持ち味です。

・ウーファードライバー8inch (20cm) パルプコーン

「SASHA DAW」用に新たに開発された、8インチ径セルロースパルプコーンドライバーを搭載。軽やかに動く振動系を持つこの優れたウーファーは、Xマテリアルの堅牢なキャビネットと相まって、軽やかで深いベースサウンドを生み出します。


キャビネットに装着される部品はすべて堅牢な金属製

ポートダクト、端子、スパイク といったキャビネットに取り付ける構成部品は、すべてアルミニウムからの切削加工によって「Wilson Audio」社内で製作されています。

ポートダクトはポートノイズを低減させる形状を研究し尽くし切削され、端子のノブは手で締められる簡便性と強固なコンタクトの両立を可能にする形状を研究して製作されています。

大きめのアルミ製スパイクは、振動エネルギーの不可逆移動性(メカニカルダイオード)を実現。スピーカーからの振動エネルギーはスパイクを介し床面に放散され、逆に床面からの振動エネルギーはスピーカー本体には伝わりません。


カラーは2グレード、6色を用意

スタンダードカラー・GALAXY GRAY(ギャラクシーグレイ)
スタンダードカラー・QUARTZ(クオーツ)
スタンダードカラー・CARBON(カーボン)
アップグレードカラー・IVORY(アイボリー)
アップグレードカラー・Diamond.BLACK(ダイヤモンドブラック)
アップグレードカラー・Crimson.SATIN(クリムゾンレッド)

システム構成:3ウェイ・3スピーカー

エンクロージャー:Xマテリアル、リアポート(ウーファー)、リアベント(ミッドレンジ)

▼ドライバー
ウーファードライバー:8インチ (20cm) パルプコーン
ミッドレンジドライバー:5.75インチ (14.6cm) コートパルプコーン
ツイータードライバー:1インチ(2.5cm) シルクソフトドーム (Convergent Synergy MK5)


スペック

能率:87dB
定格インピーダンス:4Ω(最低インピーダンス:2.6Ω)
許容最小アンプ出力:50W/ch
再生周波数帯域:31Hz〜23kHz(+/-3dB)
寸法:1030(H)x310(W)x390(D)mm(スパイク装着時)
質量:51.0kg /pc


最後に

「Wilson Audio」はハイエンドスピーカーのブランドとして最上位に位置している高級ブランドと言えます。

今回ご紹介した「Sabrina X」は最も小型なフロア型スピーカーですが、「Wilson Audio」の最先端のノウハウを全力で、余すことなく導入されており、一切の妥協がない設計は上級モデルと何ら変わる事はありません。エントリーモデルと言えども「Wilson Audio」の最高のパフォーマンスを味わう事が出来ます。

ウーファーは20cmですが、キャビネットに強固に固定されているので、見た目以上の小型とは思えない雄大なベースサウンド再生能力があります。バッフル面を傾斜させた独特のキャビネット形状による正確なタイムアライメントが広大で正確なサウンドステージを再現してくれます。

「Sabrina-X」は高さが1030mmと非常にコンパクトで「Wilson Audio」のフロア型としては最も小さく、鳴らしやすいモデルです。普通のマンションでも設置が可能で、一般的な天井高と広さの部屋でも設置できるのではないでしょうか。





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