カテゴリから選ぶ


音場工房

[ 2022年 6月 7日付 ]



DENON 注目の新世代ミドルレンジ・プリメインアンプ「PMA-1700NE」を聴いてみた



  • こんにちは、ハイエンドオーディオ担当の "ichinose" です。
    今回は、エントリーモデルからハイエンドモデルまで、幅広いラインナップを誇る、DENONのプリメインアンプより、ちょうど中間クラスで、メーカーの主力モデルとなる「PMA-1700NE」をご紹介します。


◆新世代のAdvancedUHC-MOSシングルプッシュプル増幅回路

「繊細さと力強さ」を高い次元で両立するために、出力段には微小領域から大電流領域までのリニアリティに優れ、大電流を流すことができるUHC-MOS(UltraHighCurrentMOS)FETをシングルプッシュプルで用いるシンプルな回路を採用。多数の素子を並列駆動して大電流を得る手法において問題となる素子の性能のバラツキによる音の濁りを解決し、楽音の繊細な表情までを描ききる表現力を実現するために、デノンは1ペアという最小単位の素子による増幅にこだわり続けてきました。

PMA-1700NEは、デノン創立110周年記念モデル「PMA-A110」の構成に準じ、従来の差動3段アンプと比較して、発振に対する安定性に優れる差動2段アンプ回路を採用し、より素直な音質傾向となりました。UHC-MOSの大電流出力と安定性の高い回路構成により、様々なスピーカーを正確に、そして力強く駆動します。


◆超低ノイズ可変ゲイン型プリアンプ

PMA-1600NEでは、ハイゲインアンプによる一段増幅を採用していましたが、PMA-1700NEは、PMA-A110と同様に可変ゲイン型プリアンプとパワーアンプによる二段構成を採用。

音量に合わせてプリアンプのゲインを増減させることにより、一般的に使用される音量の範囲内ではプリアンプでの増幅を行わず、パワーアンプのみで増幅することにより、ノイズレベルの劇的な改善を実現。限りなく繊細で透明感の高い空間表現力を獲得しました。


◆高精度な電子ボリュームコントロール

PMA-1700NEは、アナログボリュームのノブを操作する感触はそのままに音量の調整を電子化しました。センサーによりノブの回転角を検出し、その情報を元に高精度な電子制御ボリュームで音量をコントロールします。

左右バランスやトーンコントロールにも同様の構成を採用。これによりフロントパネル上のノブとプリアンプ基板を行き来していた信号ラインを短縮することが可能となり、理想的なミニマムシグナルパスを実現することができました。


LCマウントトランス&カスタムブロックコンデンサー

PMA-1700NEは、電圧変動が小さく、より安定した電源供給が可能な新型のEIコアトランスを採用。ノイズの原因である漏洩磁束の影響を打ち消すために、2つのトランスを対向配置するLC(リーケージ・キャンセリング)マウント方式を採用。

整流回路には低損失、低ノイズなショットキーバリアダイオードを採用。ブロックコンデンサーにはPMA-1700NE専用の大容量カスタムコンデンサーを搭載し、十分かつクリーンな電流供給を実現。

シンプル&ストレートな回路構成を生かし切るために、ダイオードユニットとブロックコンデンサーの接続部を最短化し、パワーアンプへの電源供給ラインを極限まで短くしています。


◆MM/MC対応フォノイコライザー

MM/MCのカートリッジ両方に対応するフォノイコライザーを搭載しています。フォノイコライザーは高いゲインを持ち、パターン上のループによる音質への悪影響を受けやすいため、回路のシンプル&ストレート化を徹底することによって大幅に音質を向上させることができます。

PMA-1700NEでは、基板上のレイアウトを刷新して信号ループを小さくしたことにより、漏洩磁束の影響が軽減され、S/Nが向上しています。MM/MCの切替はリレーよって行うため、基板上の余分な信号ラインの引き回しを必要とせず、繊細なアナログ信号をより純粋に増幅することができます。


◆11.2MHzDSD、384kHz/32bitPCM対応USB-DAC機能

PMA-1700NEは、PCと直接接続できるUSB-B入力を搭載。11.2MHzDSD、384kHz/32bitPCMに対応しています。DSDの伝送方式はASIOドライバーによるネイティブ再生とDoP(DSDoverPCMFrames)に対応。PC側のジッターを多く含んだクロックを使用せず、PMA-1700NEの超低位相雑音クロック発振器によって生成されるマスタークロックで制御を行うアシンクロナスモードにも対応しています。

また、192kHz/24bitPCMに対応した光デジタル入力を2系統、同軸デジタル入力を1系統装備しています。


◆テレビ自動再生機能

光・同軸デジタル入力は、テレビなどの外部ソースからの入力信号を検出すると自動的に電源が入る自動再生機能を搭載しています。3系統の入力から1系統を選択、または機能をオフにすることができます。


◆PCからのノイズを遮断するアイソレーター

USB接続されたPCから流入する高周波ノイズを遮断するために、USB-DAC回路と周辺の回路を電気的に絶縁する高速デジタルアイソレーター回路を搭載しています。
同時にグラウンドも独立させることで、ノイズ対策を徹底。また、電源回路も回路ごとに独立させ、電源ラインを介した干渉も防止しています。

さらに、デジタルオーディオ基板を専用のシールドケースに収めることにより、デジタル入力回路からの不要輻射によるアナログオーディオ回路への悪影響を排除しています。


◆アップサンプリング&ビット拡張技術「AdvancedAL32ProcessingPlus」

デジタル入力用に、PCM384kHz/32bit信号の入力に対応した、デノン独自のデータ補間アルゴリズムによるアナログ波形再現技術「AdvancedAL32ProcessingPlus」を搭載。進化した独自のアルゴリズムによって補間ポイントの前後に存在する多数のデータからあるべき点を導き出し、限りなく原音に近い理想的な補間処理を行います。

デジタル録音時に失われたデータを精巧に復元することで、歪みのない繊細な描写、正確な音の定位、豊かな低域、原音に忠実な再生を実現します。入力されたデジタル信号(PCMのみ)は、AdvancedAL32ProcessingPlusによってデジタル化される前の本来の波形に復元され、後段のアンプブロックに送り出されます。


◆DACマスタークロックデザイン

デジタルオーディオの再生においては回路の動作の基準となるクロック信号の精度と低ジッターがパフォーマンスの鍵を握っています。D/Aコンバーターに供給するクロックの精度を最優先するために、D/Aコンバーターの近傍にクロック発振器を配置。DACをマスター、周辺回路をスレーブとしてクロック供給を行うことでD/A変換の精度を高めています。

PMA-1700NEは、2つの超低位相雑音クロック発振器(44.1kHz系/48kHz系)を搭載。ソースのサンプリング周波数に応じて切り替えることでジッターを徹底的に抑制しています。


◆アナログモード

PMA-1700NEは、2種類のアナログモードを搭載しています。アナログモード1に設定すると、デジタルオーディオ回路がオフになり、繊細なアナログ入力信号への干渉を防ぐことができます。アナログモード2の設定中はディスプレイ表示も消灯し、PMA-1700NEは純粋なアナログアンプとして動作します。

※アナログモード中はUSB-B、同軸デジタル、光デジタル入力は無効になります。


◆PMA-A110譲りの高音質パーツ&専用カスタムパーツを多数採用

PMA-1700NEは、PMA-A110の回路構成を踏襲したことに加え、オーディオ回路に使用されるコンデンサーや抵抗などのパーツのほとんどがPMA-A110と共通化され、飛躍的な音質向上を果たしました。

PMA-SX1LIMITEDEDITIONやPMA-A110の開発過程において、音質担当エンジニアとサウンドマスターが試作と試聴を繰り返して生み出した デノン専用のカスタムパーツを多数投入することで、デノンの理想とする「Vivid&Spacious」なサウンドを実現しています。


◆振動を抑制するリブ入り高密度フット

電源トランスやヒートシンク、シャーシの大きな重量を支えるフットには、高密度で高剛性なリブ入りフットを採用。防振効果をさらに高めるとともに、入念な音質チューニングも施しています。


◆金メッキスピーカー端子

PMA-1700NEのスピーカー端子には経年劣化を防ぐ金メッキが施されており、長期にわたり高い信頼性を維持します。また、Yラグやバナナプラグにも対応しています。2系統のスピーカーの接続、およびバイワイヤリング接続が可能です。

※2系統のスピーカー端子からは常に同じ信号を出力します。個別にオン/オフすることはできません。


◆外部プリアンプ入力端子

PMA-1700NEには、外部プリアンプを接続してパワーアンプとして使用するための「EXT.PRE」入力端子(固定ゲイン入力)を装備しています。AVアンプのプリ出力を接続し、フロントスピーカーをホームシアターシステムと共有することもできます。


◆その他の機能・特長

・ダイレクト・メカニカル・グラウンド・コンストラクション
・金メッキ入出力端子
・録音出力端子
・左右音量バランス調整機能
・トーンコントロール(BASS:100Hz±8dB、TREBLE:10kHz±8dB)
・4段階のディスプレイディマー
・オートスタンバイモード(30分)
・デノン製CDプレーヤーの操作もできるリモコン


◆試聴してみました

一見すると「PMA-1600NE」と変わらない外見で、大きさや重さも同じ事から、純粋な後継モデルかと思われましたが、中身を見ると高品位な部品がふんだんに使われており、構成も異なるので、全く違う製品になっていました。DENONのサウンドマスター「山内慎一」氏が、高級モデルの開発時に、パーツメーカーと共同で開発した様々なカスタムが贅沢に採用されています。

部品や回路構成を見るとデノン創立110周年記念モデルとして2020年に発売され話題となっている「PMA-A110」の弟分といえ、「PMA-1600NE」から音質の大幅な向上を実現しており、「PMA-A110」の優れた音場感表現力も継承されていると感じました。そのサウンドはまさに、山内氏が提唱する“ビビッド & スペーシャス”を体現するようなサウンドと言えます。

さらに、低域の沈み込みや、キレの良さといった再現性も進化しており、この低域の安定感や情報量の多さは明らかに価格帯を超えた実力を誇ります。ノイズ感が少なく、透明で広い音場感を再現出来るDENONの新しいサウンド系統の主力モデルとして発売された注目のアンプと言えます。

デジタル音源との相性も高く、コストパフォーマンスに優れた、ハイエンド・アンプに通じる本格的なアンプがほしい方にお勧めいたします。






DENON「PMA-1700NE」はこちら

商品はこちら