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音場工房

[ 2022年 6月 14日付 ]



インフラノイズ ターンテーブルアキュライザー「TACU-1」をレポート!!



  • こんにちは、ハイエンドオーディオ担当の "ichinose" です。
    今回は、品質の高いフェルトの形状でターンテーブルの響きを最適に整音してくれる、インフラノイズのターンテーブルアキュライザー「TACU-1」をご紹介します。


◆インフラノイズという会社(メーカーHPより引用)

『 インフラノイズがオーディオ機器を開発、製造する目的はただ一つです。私達は偉大な演奏家が残した音源がたくさん残っている幸福な時代にいます。これらの録音の中に入っている素晴らしいものを残すことなく味わいたい。この動機がインフラノイズの製品を生み出す力の全てなのです。

偉大な演奏家の録音の殆どが装置のグレードアップのたびに新たな感動を湧き出させます。演奏を再現できる装置の能力とはオーディオ用語で美音とか分解能で語られる部分ではありません。音楽に対する忠実度、正直さ、表現力などの動的、偶発的かつ抽象的な部分の再現能力なのです。

逆に高いレベルに達しない演奏や自然音の再生の場合ではオーディオ機器の物理的性能が充分であれば再生音は頭打ちとなり満足が得られる結果となります。再生する内容によってはインフラノイズが目指すレベルは必要でないということになります。

全てのオーディオ機器には固有の音があります。この個性音がオーディオ的な良い音である一方、演奏の内容に付加され脚色された再生音ともなります。演奏にはない良い音が音色の魅力となることもありますが同時に音楽表現にはマイナスに作用することもあります。いわゆる音楽の内容を聴くか、音のかたちを聴くかの違いにもつながります。

この意味でインフラノイズの製品は音の違いを楽しむオーディオには役立たないかもしれません。しかし音楽を愛する皆様には音楽のジャンルにかかわることなく、全ての方に満足いただけるのは間違いないと信じています。

今後とも世界に類のない音楽のためのオーディオ機器の製造開発に努力いたしますのでどうぞよろしくお願いします。 』


◆現在のレコードの問題点

ターンテーブルはレコード盤を回転させ音溝に記録された波形をカートリッジで電気信号に変換させるための機器です。レコード盤を定速で回転させる目的で回すためのモーター、制御電子回路、ベルト、ギヤ、アイドラー、そしてまるで釣鐘のような形状の鳴きやすい円板(ターンテーブル)などから構成されています。これらはアコースティックなノイズや電子雑音を発生します。

カートリッジは音溝のピアニシモまで拾う能力が有りますから、発生するアコースティックなノイズを常に拾うことになります。ターンテーブルの軸受けに使うオイルでも音質が変わります。軸受けの軋みやベアリングの音がオイルの音響的性質により変わるからです。オイルの違いくらいで音質が変わるのですから、モーターの回転音、ターンテーブルの形状と素材、アイドラーのゴム、ベルトドライブのベルト、糸、材質などの組み合わせで複雑に音質が変わります。

カートリッジ、アームの優劣を検討する以前に物理的な性能の優劣だけで構成すればどんな結果になるのか設計者にも予測出来ません。手で持てないくらいの石臼のような円板をガット弦で回せば素晴らしいものが出来るに決まってると反論されるかもしれません。

定速性能、慣性モーメントの関係する物理性能のおかげで卓越した性能が約束されても音楽再生に良い結果が出るとは限りません。歴史のふるいにかけられてプレミアの付いた、トーレンス、コラーロ、ガラード、EMTなどの名器は物理的な性能だけで無く、音楽再生に良い結果が出るよう設計されていたからこそ歴史的評価が高くなっていると思われます。


◆ターンテーブルアキュライザー ORTHO SPECTRUM「TACU-1」の発想

ターンテーブルアキュライザーは物理的性能を追求して造られたターンテーブルでも素晴らしい音楽再生が実現します。ピアノのメカニズムからアイデアを頂きました。ピアノという楽器はメーカーや年代により優劣が有りますが、調律、整音により音質は大きく変わります。またそれ以上に演奏家により大きく変わります。他の楽器と比べ構造的には幼児がキーを押しても名人が押しても同じ音が出る扱い易い楽器のはずです。

しかし実際には音楽的に聴くと音色は似たものの大きな差が有ります。指で押すだけの行為なのに、スピード、加速度、ストップなどの細かい、口で言えない、技術的に第三者には説明しにくい僅かな差なのですが音色でなく音楽として比べると雲泥の差となる不思議。

この様にとても演奏の難しい楽器ですので、キー以外の操作も大きな音楽的差を起こします、それがペダル操作です。名演奏家はいろいろなペダルテクニックを持っていますが、中でもハーフペダルというテクニックが有ります。一番良く使われるペダルのダンパーペダルはピアノ弦の響きをフェルトを押し付けることで鳴らしたり、止めたりする機能が有ります。

ハーフペダルとは止める、鳴らすのON/OFFとして使うだけで無く、半分踏んだ状態、すなわちフェルトがわずかにピアノ弦に触れるようにするテクニックです。音質は音の濁りが無く、響きもあると同時にある極めて音楽的なものとなります。これは誰でもやればそうなるというもので無く演奏者の表現意図にしたがって行う事で初めて値打ちが出るという高いレベルのものです。


◆ターンテーブルアキュライザーはこのハーフペダルの原理をターンテーブルに応用したオーディオでは初めての発想による製品

フェルトは品質で大きな差が有り、著名なピアノ、スタインウエイ、ベーゼンドルファー、ベヒシュタインなどのハンマーは自社生産では無く、ドイツのレンナーと言う会社がそれぞれのブランドに音質を合わせたものを提供しています。

ターンテーブルアキュライザーは品質の高いフェルトの形状をターンテーブルの響きを最適に整音するように加工、特殊な樹脂による音質調整を行っています。このフェルトがターンテーブルの軸に触れることによりターンテーブルの響きを整音します。
上述のハーフペダルのテクニックをターンテーブル軸に行っていることになります。

フェルトはピアノハンマーにも使われますが、実際の整音は一つのキーごとに音を聴きながら針を入れたり、ヤスリをかけたり、樹脂を含ませたり、ピアノワイヤーに当たる場所の凹凸を変えたりとかなり面倒な作業で、調律師さんの経験と感性に左右されます。フェルトはこんなに扱いが難しい素材ですので、ターンテーブルアキュライザーはターンテーブルの音質向上以外への応用はお勧め出来ません。

フェルトは細かい羊毛を固めたもので、圧力をかけ過ぎるとその性質は大きく変化し、弾性の無いブロックと化します。ターンテーブルアキュライザーの外観はEPアダプターやレコードスタビライザーと間違うような形状ですので、インシュレーターとしてはどうか?

当然に思い付かれるでしょうが、フェルトに圧力をかけてはだめだということを思い出してください。軽くタッチして音が良くなりそうな部分がオーディオ装置にあれば可能かも知れませんが、ターンテーブル専用に音を徹底的にチューニングして合わせましたので、これもまたお勧めできません。

どうぞターンテーブル専用にお使いください。外観はいつもの様にと言うよりは、一切の外観のためのデザイン的な配慮は行っていません。

※ハンドメイド品のため寸分違わぬ機械工作のような精度等は追求されておりません、音質に影響の無い範囲の、円心や厚みのバラツキがありますので、あらかじめご了承ください。


◆アキュライザーの使い方

レコードをターンテーブルの上にセットしてからターンテーブルアキュライザーをスピンドルに差し込みます。一般的なレコードスタビライザーと同様の使用方法です。

セーム革の面が上面です(上面は穴が2カ所)。
側面の「ORTHO SPECTRUM」のロゴの上下でも確認できます(フェルトに印刷なので少し分かりにくいですが・・?)。

逆に使用することは整音が狂いますのでご注意下さい(底面は穴が6カ所)。

EPアダプターを使用する45回転盤の場合は可能であるならレコードをセットしてEPアダプターを抜いてからターンテーブルアキュライザーを差し込んでください。サイズ的には32mmとEPアダプターより少し小さいのでアダプターとしては使えません。

エージングは特に必要有りませんが数時間使用後くらいから音質はアップしていきます。整振樹脂が蒸発して抜けて音質が劣化することは有りません。音質改善効果は半永久的です。

・内容:ターンテーブル用整音デバイス
・外形寸法:直径32mmx厚さ11mm
・重量:4.5g
・構造:特殊フェルト、整振樹脂、セーム革


◆使ってみました

ファーストインプレッションは音が躍動的でリアルな表現力となり思わず聞き入ってしまいました。今まで聴いていたのと同じレコードが、より音楽に集中して聴く事が出来るようになりました。

もちろん、間違いなくアナログの音で、レコードならではのノイズはありますが、演奏の音が躍動的になったおかげか鑑賞の邪魔になりません! 一音一音の質感と精度が向上、各パートの音はもちろん、倍音なども聞き取りやすい印象です。

音楽再生のための表現力が改善するためか、演奏が整った印象ながら躍動的になったおかげで、自然に楽しく聞き入ってしまいます。特に印象的だったのはピアノ演奏で、正確な打鍵のタッチや、ペダル操作などのテクニックが良く分かる様になりました。

しばらく聴いてから「ターンテーブルアキュライザー」を外すと、音の粒子が粗くなったように感じてしまいます。これは困りました・・・・個人的には昔から重量級のスタビライザーが好きなので兼用は出来ないですね〜!!

特に、ハード系のターンテーブルシート(SAEC、ティグロン、フィデリックス等)をお使いの方には厳しいかもしれません。しかしここまで音が変わる事が分かってしまうと使わない訳にはいきませんので、しばらくはどの様に使うか試行錯誤して行きたいと思います。

音楽を聴く選択枠が広がるのは大変楽しみなので、その意味でも大変価値のある製品としてお勧め致します。






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