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音場工房

[ 2023年 12月 5日付 ]



トランス内蔵SPU「SPU-GT」が復活!!


ハイエンドオーディオ担当の "ichinose" です。
今回は、鮮烈と躍動。新規開発されたトランス内蔵の「GTE」をご紹介します。

ステレオ・ピック・アップ(STEREO PICK UP)の頭文字3文字を冠してSPUと名付けられたこのカートリッジ。これまでに多くのレコードファンやオーディオファンから復活して欲しいと多くの要望があったトランス内蔵のSPUです。

SPU-GTからしか出てこない、重厚にして骨太、艶やかで芯の通った特有のサウンドがなんと言っても魅力的です。これこそがSPU、そしてオルトフォンの音であり、ひいてはアナログサウンドのあるべき姿であると断言する方も少なくありません。

オルトフォンのオリジナルのSPUは1958(昭和33)年に発表されています。その前年に米国でステレオLP盤の量産がスタート(発売は翌年)したばかりであることを鑑みると、オルトフォンの動きは極めてスピーディーであったように思えますし、何もないところから突如としてステレオカートリッジのSPUが誕生したという印象を抱くこともあるでしょう。

しかし実際には、SPUの誕生に至るまでにオルトフォンの技術陣が総力を挙げて様々な方向からアプローチを行い、試行錯誤を繰り返した一大開発史がありました。オルトフォンは1940年代末のモノラルLP実用化に合わせ、レコード盤を刻むカッターヘッドと検聴用のカートリッジTYPE-Cを開発。

後に「ミスター・SPU」と称されたエンジニア、ロバート・グッドマンセンをはじめとする当時の技術陣が総力を挙げ、あらゆる試行錯誤を重ねた末に誕生したSPUの磁気回路は、基本構造は現在に至るまで変化していません。

この磁気回路は「オルトフォン・タイプ」という固有名詞をもって称されるほどに後世の規範となった事は有名です。日本のMCカートリッジの原点と言えるDENON「DL-103」の発電構造もオルトフォン・タイプを大いに意識して開発されています。


◆伝説の銘品として語り継がれてきた「SPU-GT」を復活

圧倒的なエネルギー感に支えられた鮮烈さ、そして躍動感。歴代のオーディオファイルたちに強烈な記憶を残し、伝説の銘品として語り継がれてきた「SPU-GT」が、オルトフォン創立105周年という節目の本年、楕円針の「SPU-GTE105」としてレギュラーモデル化され、復活します。

1980年の誕生当初よりアナログファンからの憧憬と期待を受け続け、その魅力的な音色によってこれに応えてきた「SPU-GT」は、オリジナルモデルの生産完了から約40年、1994年の「SPU Classic GT/GTE限定復刻」からも約30年が経過しており、年を重ねるごとに追憶の彼方へと消えつつあるのが現状です。

しかし、GTの奏でる骨太なサウンドは時代を超えて愛され、熱心なファンの皆様からの復活とレギュラー化を願う声は高まるばかりでした。

オルトフォンもなんとかこの想いに応えたいと考え、高性能トランスで有名な、北欧スウェーデンのLundahl(ルンダール)社と共同で「GT」の肝である内蔵トランスの開発に明け暮れること数年。この2023年、ようやくレギュラーモデルとしての製品化を実現させました。


◆SPU GTシリーズには音色以外にも大きな特徴が2つあります

@MC昇圧トランスをヘッドシェルに内蔵したことにより、別途のMCヘッドアンプや昇圧トランスを必要とせず、アンプのMM入力にそのまま接続可能であること。

A通常のMC型カートリッジの本体部分にあたるユニットのすぐ後ろに内蔵トランスがあるため、ユニット部分がピックアップした音声信号を減衰させずにすぐ後ろのトランスで昇圧でき、一般のMC型カートリッジよりも出力が高い状態でアンプまでの信号伝送(電圧伝送)が可能。

最初に述べた「MM用のPHONO入力に直結可能なMC型カートリッジ」という特徴は、結果的にもう1つの特徴へと帰結し、これがGTシリーズ固有のパワフルな音色へと繋がっているのです。


◆「SPU-GTE105」の仕様

・出力電圧(1kHz, 5cm/sec):4mV
・チャンネルバランス(1kHz):1.5dB
・チャンネルセパレーション(1kHz):20dB
・チャンネルセパレーション(15kHz):10dB
・周波数特性(20Hz〜25,000Hz):±3dB
・トラッキングアビリティー(315Hz、適正針圧下):60μm
・水平コンプライアンス:10μm/mN
・スタイラスタイプ:Elliptical(楕円針)
・スタイラスチップ半径:r/R 8/18μm
・カンチレバー素材:アルミニウム
・適正針圧:4.0g
・針圧範囲:3.0〜5.0g
・トラッキング角度:20°
・内部インピーダンス:610Ω
・推奨負荷インピーダンス:47kΩ
・コイル線材:OFC
・カートリッジシェル素材:ABS樹脂
・自重:34g 


◆スウェーデン・Lundahl(ルンダール)社との新規共同開発による昇圧トランス搭載

Lundahl社はスウェーデンにおいて、ハイエンド・オーディオ用トランスを製造している世界屈指のトランス製造会社です。真空管アンプ用のトランスを始め、プロオーディオ用のさまざまな種類のオーディオ入力、出力トランスを製造しています。

ハイエンドオーディオブランドでは、ジェフロウランドのプリやパワーアンプのバランス端子のトランスとして採用されている事は有名です。

本機を含むSPU GTシリーズの「T」は、トランスのTを現しています。
GTシリーズ専用に設計されたこのMC昇圧トランスこそ、本シリーズにのみ固有の鮮烈なサウンドを生み出す要であることは言うまでもありません。

「SPU- GTE105」の開発に際し、オルトフォンが最初に取り掛かったことは専用昇圧トランスのリニューアルでした。様々な候補を経た上で決定されたのは、同じく北欧スウェーデンに在するLundahl社との共同開発プロジェクト。

当初はLundahl社の得意とするアモルファス・コアの採用が検討されましたが、「GT」らしい鮮烈なサウンドとは異なったために更なる推敲が重ねられ、パーマロイのEIコアが採用されました。

なお、トランスの「リニューアル」は内部の巻線部分だけにとどまらず、歴代シリーズで初めてトランスケースをヘッドシェルに直接固定する構造としたことも挙げられます。 更にはGタイプユニット→昇圧トランス→ヘッドシェル間の配線方法も見直され、GTの鮮烈なエネルギーをそのままに伝送可能としています。


◆「GT」シリーズ専用、新規開発のGタイプヘッドシェル

オルトフォンといえばSPU、そしてSPUといえばGタイプのヘッドシェルだと評される程に象徴的な存在となった「Gシェル」は、SPUの誕生当初からの長い歴史をもっています。

そしてこのGシェルが開発された理由こそ、MC昇圧トランスをヘッドシェル内蔵とした旧「SPU-GT」シリーズの登場に他なりません。オルトフォンはこれを強く意識しており、今回「SPU-GTE105」の開発にあたって今までに存在したどのGTシリーズ用ヘッドシェルとも異なる、新時代のGT用ヘッドシェルを完全新規設計で製作。

このシェルは外観こそGシェルそのものですが、素材には軽質量で堅牢、更には理想的な共振吸収性能を得られるABS樹脂を採用。そして従来使用されていたシェル内部のスペーサーを廃してSPUユニットを取り付けるベース部分をシェル本体と一体成型とし、不要共振の低減を目指しています。

そしてトランスケース表面とヘッドシェル内側とのクリアランスも狭められ、シェル内部にトランスが嵌め込まれたかのような固定が可能となりました。

不要な共振は排除しつつ、Gシェル特有の豊かな響きはそのままに。
往年の銘機たちともひと味異なる、新世代のGシェルだけが持つ音色の妙味をお楽しみ頂けます。


◆王道のアルミカンチレバーとアルニコマグネット

半世紀以上にわたって愛されてきたSPUシリーズには、古くから受け継がれてきた「王道」ともいえる仕様があります。まずはカンチレバー素材にアルミパイプを用いることですが、これは現在に至るまで全てのSPUに共通です。

次にスタイラスチップを丸針か楕円針とすること、そして「オルトフォン・タイプ」と称される磁気回路のマグネット素材をアルニコとすること。

この2つはオールドSPU以来の伝統的な仕様で、一部の現代型モデルを除いた多くのSPUシリーズに用いられてきました。「SPU-GTE105」では、この王道をすべて踏襲することで本モデルの目指すところを示しています。

伝統の仕様はそのまま、リファインすべき箇所には全力を注ぐ! これが新たな「GT」に対する、オルトフォンの姿勢です。唯一無二ともいえる力強い「GT」のサウンドは、我々もまた長きにわたり復活を切望し続けていたものでした。

オルトフォン創立105周年にレギュラーモデルとして蘇ったこの音色は、半世紀前のオーディオファイルに与えた衝撃までも、そのままに具現化させたもの。

アナログの醍醐味という言葉は、このGTの為にあり。
愛聴盤の魅力を再認識させてくれる「伝説」とともに、より豊かなレコード再生を存分に堪能できるでしょう。


◆担当者より

待ち望んでいた方も多かったのでは無いでしょうか!! 待望のSPU-GTが遂に復帰しました!!
今回、復活したSPU-GTは従来モデルと比べると、かなり進化した製品となっております。

内蔵の昇圧トランスに、あの「Lundahl(ルンダール)」社との共同開発品を搭載する事により、絶対的な信頼を置けるカートリッジに仕上がっています。

Lundahl社はハイエンドオーディオ・アンプでも多く採用されている超高性能トランスで、オルトフォンのSPUとの組合わせはまさに夢の組合わせと言えます。

基本的な音色はオルトフォンのSPU-GTらしさを継承したエネルギー感溢れるサウンドですが、流石 Lundahl社と思わせる緻密で繊細さも兼ね合わせたサウンドが何とも魅力的なカートリッジに仕上げっています。

出力は少し控え目の4.0mVとなっていますが、最近のイコライザーはSNの優れた製品が多いため問題ないと思います。

ユニットは「Classic-GE-MK2」と同じものですが、シェルは今回の「SPU-GT105」専用に新規設計された物で、ユニットもトランスも専用シェルにダイレクトに取り付けられています。

ご購入時の注意点は、重量が34.0gと他のSPUより少し重い事ですね。
   SPU : #1S、ClaasiGE2、MeisterSMK2、RYALG2などは30.0g、SYNARGY=28.0g

現在販売されているアナログプレーヤーの中には対応できない製品もありますのでご注意ください。
※主要プレーヤーの適合カートリッジ自重
   DENON「DP-3000」=(付属補助ウエイト)37.0g:余裕でOK
   YAMAHA「GT-5000」=(付属補助ウエイト)34.0g:ギリギリOK
   LUXMAN「PD-151-2」=(別売り補助ウェイト)32.0g:針圧計要
   Technics「SL-1200G(1500)シリーズ」=(付属補助ウェイト)25.1g:無理(ベルドリーム製「BD-SW1725SPU」を用意すればOK)

市販のトーンアームの場合はほとんど問題なく取付け可能です。
※主要アームの適合カートリッジ自重
   FIDELIX「0-SIDEFORCE」シリーズ=(付属補助ウエイト)35.5g:余裕でOK
   GLANZ「MH」シリーズ=(別売り補助ウェイト)40.0g:余裕でOK
   ViVlaboratory「RIGID -FLOAT」シリーズ=50.0g:余裕でOK
   IKEDA「IT-345(407)CR1」=38.5g:余裕でOK
   KAJILAB「KL-UA01」=32.0g:針圧計要

上記で上限32.0gまでの製品もありますが、針圧計を利用すれば何の問題も無く取付けできます。
※本体は34.0gですが、適正針圧が4.0gなので、30.0gで0バランスがとれるアームであれば問題ありません。

針圧計で針圧を正確に把握する事は、カートリッジの性能をフルに発揮させるために必要な事なので是非お買い求めください。 針先のクリーニングと、針圧のチェックはマメに実施しましょう!!

※各メーカーの別売りの補助ウエイトは部品扱いとなりますので、ご購入希望の場合は別途お問い合わせください。





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