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音場工房

[ 2023年 12月 12日付 ]



iFiのフラッグシップ ヘッドフォン・アンプ
「iCAN Phantom」


ハイエンドオーディオ担当の "ichinose" です。
今回は、新発売のiFi フラッグシップ ヘッドフォン・アンプ「iCAN Phantom」をご紹介いたします。

先進のユーザー・インターフェースとネットワーク・コネクテッド・コントロール・システムを備え、静電型ヘッドフォン用エナジャイザーを内蔵した、新しいリファレンス・クラスのアナログ・ヘッドフォン・アンプです。


◆新たなる、並外れたリファレンス性能

iFiの新しいリファレンス・クラスのアナログ・ヘッドフォン・アンプ「iCAN Phantom」は「Pro iCAN」を受け継ぎ、さらにその性能を高めるために回路のあらゆる要素を洗練・強化し、今までは別個のコンポーネントであった静電型ヘッドフォン用の「Pro iESL」の技術を取り入れ、新たに先進的なユーザー・インターフェースとネットワーク・コネクテッド・コントロール・システムが追加されています。その結果、まさにフラッグシップにふさわしい、ハイレベルなヘッドフォン・アンプとなって登場いたしました。

卓越したビルド・クオリティ、洗練された技術力、比類のないスペック、驚くべき多用途性、あらゆるタイプのヘッドフォンのサウンド・ポテンシャルをフルに発揮できるよう、さまざまな専用設計が施されています。超高感度IEMから、最高級のダイナミック・ドライバー型や平面駆動型のヘッドフォン、そして最もパワーを必要とする静電型ヘッドフォンまで、さまざまなリスナーの要求に完全に応えた、真に卓越したヘッドフォン・サウンドを体験していただけます。

パワーアンプとスピーカー(またはパワード・スピーカー)に供給するハイエンド・プリアンプとしても機能し、ヘッドフォンとスピーカーのリスニングを1つの高性能オーディオ・システムに統合することができます。


◆フラッグシップのシャーシ構造

一見すると、上下に別々のユニットがあるように見えますが、実際は一体型の2重構造デバイスであり、マルチレイヤー回路設計を実現しています。頑丈なアルミニウムで作られている筐体の下部には、前面と背面に各種接続端子があり、上部前面には物理コントロール部とOLEDカラーディスプレイがあります。

天面には、平らなスモーク・ガラス・パネルが組み込まれており、アンプの回路と光るオーディオ用真空管を見ることができます。円形のアルミニウム製通気口は、内部の回路が過熱しないように設計されています。

前面の端子を使用しないときは、マグネットで背面に取り付けられているアルミパネルですっきりと隠すこともできます。このパネルには、静電型ヘッドフォンのバイアス電圧設定用のデータカードも収納されています。また、魅力的で使いやすいアルミニウム製の高品質リモコンも付属しています。


◆ハイレベルな2つの入力ステージを装備

2つの入力ステージ(1つは真空管をベースに2種類、もう1つはソリッド・ステートをベースにしたステージ)を備えています。ユーザーはリアルタイムでこの2つの入力ステージを切り替えることができます。まさに、3台のアンプが1台になっているようなもので、それぞれが異なるサウンドを表現します。

「ソリッドステート」モードはペースと即応性を提供。「Tube」モードは、流動性と自由な息吹のある上品なダイナミックスを提供。さらに、「Tube+」モードでは、真空管サウンドを堪能。例えば、アコースティックやボーカルの音楽スタイルに合うような、魅惑的でロマンチックな暖かさを提供。

使用されている真空管「GE5670」の寿命は約10,000時間。万一、交換が必要となった場合でも、スモーク・ガラス・パネルは簡単に取り外すことができ、真空管の交換ができます。 ※真空管は「6922」にも対応しています。※指定する真空管以外の使用は保証対象外となります。


◆コンデンサー(静電型)ヘッドフォン用のバイアス電圧

静電型ヘッドフォンは、バイアス電圧に関して、それぞれのモデルで指定があります。

静電用に2つの出力を装備しています。
(1) 230Vの「通常の」バイアス電圧
(2) 500V〜640Vの間で指定することができる可変バイアス電圧
※指定以外の電圧を選択して使用された場合、ヘッドフォンを損傷する可能性がありますのでご注意ください。

異なるバイアス電圧を指定するために、複数のデータ・カードが同梱されています。500V、540V、580V、600V、620V、640Vの6種類のカードを同梱。カードの裏面には、どのヘッドフォン・ブランドがその電圧に対応しているかを示す、便利なガイドが付いています。


◆あらゆる接続に対応

バランスとシングルエンドの幅広い接続オプションを提供します。ヘッドフォン出力端子は前面に、ライン入力とプリアンプ出力端子は背面にあります。

・ヘッドフォン出力:
 3ピン・バランスXLR(L/R) ×1系統
 4ピン・バランスXLR ×1系統
 4.4mmバランス ×1系統
 6.3mm(正相) ×1系統
 6.3mm(逆相) ×1系統
 3.5mm ×1系統(歪みを50%カットするS-Balancedテクノロジー搭載)

・静電型ヘッドフォン出力:
 6ピン・ノーマル・バイアス ×1系統
 5ピン・カスタム・バイアス ×1系統

・ライン入力:
 バランスXLR(L/R) ×1系統
 RCA(L/R) ×3系統

・プリアンプ出力:
 バランスXLR(L/R) ×1系統
 RCA(L/R) ×1系統


◆iFi Nexis - ネットワーク接続コントロール

この製品は「Nexis」を組み込んだ最初の製品です。アプリと組み合わせることで、包括的でスケーラブルなネットワーク接続制御システムを提供します。

「Nexis」が提供する機能は、次第に拡張されています。AndroidまたはiOSデバイスを「スーパー・リモート・コントロール」として機能させ、アンプの前面パネルや標準リモコンではアクセスできない追加機能にアクセスできるようになっています。

このアプリは診断情報を表示し、動作状態をリアルタイムでモニターすることができます(電圧、真空管の状態や予測寿命など)。また、ファームウェアに無線アップデートを適用し、自宅のWi-Fiネットワーク経由でアップデートファイルをダウンロードしてインストールすることもできます。


◆技術仕様

キャパシティブ・バッテリー電源は、もともと「Pro iESL」用に開発されたものを改良して搭載。「iCAN Phantom」の高い性能に不可欠なものです。主電源のスイッチ・モード電源回路に頼るのではなく、定格1,000V DCのフィルム・コンデンサー 大容量バッテリーをAC主電源で充電。この「バーチャル・バッテリー・パック」は、ACノイズやスイッチング・ノイズから完全に解放された、ピュアなDC電源の供給を実現します。


◆バランス回路設計を極限まで追求

入力から出力まで完全に差動化することで、信号経路におけるノイズとクロストークを最小限に抑え、究極の音の純度を実現します。

基本的に"完全差動"回路設計(トゥルー・ディファレンシャル・バランス)とは、各チャンネル(左と右)が回路設計の中で完全に分離され、これらの各チャンネルには、レベルは等しいが極性は逆(プラスとマイナス)の2つの別々の信号があることを意味します。このため、左チャンネル用に2つ、右チャンネル用に2つ、合計4つの独立したアンプ回路が必要となり、シングルエンド回路設計よりもはるかにコスト高で複雑な実装が必要となりますが、音質的な見返りは非常に大きなものとなります。

トゥルー・ディファレンシャル・バランス回路は、6つのデッキを持つボリューム・コントロールに結合されています。各チャンネル(プラスとマイナス)に2つのデッキがあり、最後の2つのデッキはボリューム・コントロールの動作をモニターするために使用されます。モーター駆動のボリューム・コントロール・ポテンショメーターは、非常に高品質な日本のALPS社によるカスタムメイド品を採用しています。


◆他のヘッドフォン・アンプとは一線を画す機能を装備。

2つの入力ステージを内蔵(バルブ/チューブ・ベース、ソリッドステート)ユーザーがリアルタイムで2つの入力ステージを切り替ることが可能。これらの入力ステージは完全に分離しているため、信号経路を複雑にすることなく最適な純度を保つために短くダイレクトに保つことができます。

完全ディスクリートのクラスAソリッドステート入力段はJ-FETを使用。バルブ・クラスA回路は、6922真空管の高級品であるゼネラル・エレクトリック社製5670真空管を厳選した選別ペア・マッチングを搭載。さらに、このステージには「Tube」と「Tube+」が選択可能なモードがあります。「Tube+」は全体のループゲインとネガティブフィードバックが最低限に抑えられ、真空管の自然な高調波歪みとトランジェント特性との間で異なったサウンドのパースペクティブが生まれます。


◆「XSpace」について

ヘッドフォン用とスピーカー用の2つの独立したスペース・アナログ・マトリックスを搭載、自動的に切り替えることができます。ヘッドフォン用「XSpace」は、スピーカーでミキシングされた音楽をヘッドフォンで聴く際に発生する「頭内定位」効果を補正するように設計。ヘッドフォンのサウンドステージを効果的に広げ、スピーカーのようなより広々とした体験を提供。

スピーカー用の「XSpace」は、スピーカーの配置によって決まる幅以上に、広々としたサウンドステージの幅を広げます。「XSpace」は複数段階を備えており、好みに応じて選択したり、オフすることで信号経路から完全に切り離したりすることができます。


◆「XBass」について

独自のアナログ回路で、低域を強調するために使用され、その洗練された機能により、低域の明瞭さを維持しながら、中域を濁すことなく低域を強調することができます。低音が軽く聴こえるオープンタイプのヘッドフォンなどに有効で、アーティストの意図した低域を聴くことができるように低音を「補正」します。10Hz、20Hz、40Hzの3つの「XBass」ステップを提供し、またオフすることで信号経路から完全に切り離すこともできます。


◆PPCT(ピンストライプ・パーマロイ・コア・トランスフォーマー)を搭載

トランスの品質は音質にとって非常に重要であり、カスタムメイドのPPCT(ピンストライプ・パーマロイ・コア・トランスフォーマー)を搭載。このトランスは、GOSS/Mu-Metalハイブリッド・コアに、非常に細いワイヤーを高精度に手作業で巻いた、垂直セクション及び水平セクションに複雑なマルチセクションの巻き方を採用。このトランスは、非常に広い帯域幅、超低歪み、完璧な直線性が得られます。


◆0dB、9dB、18dBの3段階のゲイン設定により、接続するヘッドフォンに合せて設定できます。

ユニティ・ゲイン(0dB)は、より高感度なヘッドフォンやIEMで低ノイズを確保するのに有効。より高いゲイン設定は、よりタフなヘッドフォンの負荷を最大限に活用し、優れたダイナミック・ヘッドルームを実現します。


◆非常にパワフルなヘッドフォンアンプで、バランス出力からは15,000mW以上、シングルエンド出力からは16Ω負荷で5,760mW以上の出力が可能。

電圧に関しては、600Ωの負荷に27V以上を供給でき、静電型ヘッドフォンでは最大640Vを供給します。


◆ダイナミック型及びプレーナー型ヘッドフォンと IEM(インイヤーモニター)のために

・調節可能なゲイン設定
3つの設定値(0dB、9dB、18dB)によって、接続されたヘッドフォンにアンプが完璧に合うようにすることができます。ユニティ・ゲイン(0dB)は、感度の高いヘッドフォンやIEMでノイズを低減するのに有用です。これより高いゲイン設定は、ヘッドフォンのもっとタフな負荷を最大限に生かして、すばらしくダイナミックなヘッドルームを生み出します。

・「iEMatch」
このiFi特製の回路は、出力を減衰させることで高感度なIEMに合わせ、発生する可能性のあるバックグラウンド・ノイズを除去し、ボリュームの調節範囲を拡張します。この機能は、有効にするか無効にするかを選択でき、3.5mm出力とバランス型4.4mm出力に適用することができます。

・「XBass」アナログ・プロセッシング
この独自技術は、低域を補正する際に用います。この洗練された回路によって、低域の解像度を維持しながら、しかも中域を汚すことなく、これを実現することができるのです。たとえば、低域が軽めのオープンバックのヘッドフォンで有効です。アーティストが意図したとおりの低域を聞くことができるように、低域を「補正する」のです。「XBass」の3つの設定値(10Hz、20Hz、40Hz)を用意しています。この回路はOFFにすることも可能で、信号経路から完全に切り離すことができます。

・「XSapce」アナログ・プロセッシング
さらにもうひとつの特製アナログ処理モードが「XSapce」で、これはサウンドステージの幅と奥行きを拡張するように設計されています。ヘッドフォン用とスピーカー用の2つの「XSpace」マトリックスを装備。


◆エレクトロスタティック・ヘッドフォンのために

・カスタム・バイアス電圧カード
エレクトロスタティック・ヘッドフォンのバイアス電圧の要件はさまざまです。エレクトロスタティック用に2つの出力を装備。「ノーマル(230V)」バイアスと、「500V〜640V」の間で調節可能なバイアス。

・負荷インピーダンス
インピーダンスのレスポンスは16Ω〜96Ωの間で調節可能です。インピーダンスを低く設定するとステップアップが増加し、同じボリユーム設定でも音量が増加します。

・AC ターミネーション
この機能によって、バイアス用のチャンネル間の共有ノードのインピーダンスを高く設定したり低く設定したりすることができます。これはパラメーターに複雑な影響を与えるのですが、一番ハッキリと分るのは、サウンドステージの幅と奥行きです。


◆付属品

ACアダプター(IPOWER-ELITE)、ワイヤレスリモコン、RCAケーブル


◆担当者より

日本では多くの方が使われるであろうSTAX製品は「580V」のカードとなります。

Phantom(ファントム・幽霊)と言う名前は、英国の最高級自動車ブランド「ロールス・ロイス」の車名から名付けられたとのことです。卓越したエンジニアリングの質、際立った外観、滑らかで静かさで他の追従を許さない高品質を目指して開発された製品です。

現在入手できる、さまざまな仕様のヘッドフォンの全ての性能をフルに発揮するために、入念な回路設計が施されており、まさに究極のヘッドフォンアンプといえます。また、入力ステージも3種類用意されており、単にハイファイをアピールするだけではなく、遊び心も満載で、何とも嬉しい製品に仕上がっているのではないでしょうか。もちろん、どのステージでも品質が保たれている点も素晴らしい完成度だと思います。

この「Phantom」を購入された方にはプリアンプとしての性能も素晴らしいので、パワーアンプとスピーカーにも是非接続してお楽しみいただきと思います。高品質なアクティブスピーカーもお似合いですね。






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