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[ 2016年 9月 27日付 ]

まだ、こんなやり方もあったのか?マランツより新製品!オリジナリティ溢れるディスクプレーヤー『SA-10』登場!

ハイエンドオーディオ担当の "あさやん" です。
本日は、マランツが久々に発表した、リファレンス・ディスクプレーヤー『SA-10』を取り上げます。 先日、新製品発表会でじっくり試聴する機会がありましたので、詳しくレポートしていきます。

マランツが久々にリファレンスクラスのディスクプレーヤーを発表!


アナログレコード再生が話題となり、ファイルオーディオや音源のダウンロード配信が一般的となって、SACDはもちろんCDなどのデジタルディスクの存在感が急速に薄くなっているのを感じる今日この頃です。

しかし、今後アナログがかつての様な隆盛を極めることはあり得ないことですし、ファイルオーディオもスマホとヘッドホンでの再生がメインストリームとなりつつある現状からは、我々オーディオファンにとっては、今後もデジタルディスク再生が、アナログレコードや高規格ファイルオーディオ再生と並ぶリスニングソフトの主力であり続けることは間違いありません。また、そうあって欲しいと心から願うばかりです。

そんな中、マランツが久々にリファレンスクラスのディスクプレーヤーを発表するとのアナウンスがあり、9月某日、新製品発表会場でじっくり試聴する機会がありました。今回はそのオリジナリティ溢れる内容とパフォーマンスをリポートしたいと思います。

マランツ『SA-10』の魅力とは?

マランツ『SA-10』は、同社のフラッグシップとなるディスクプレーヤーの最新鋭機種です。マランツのこれまでのフラッグシップ機は「SA-11S3」で2012年の発売からすでに4年が経過しています。その「SA-11S3」をどう最新鋭機に仕立て上げたのか、興味のある所でもありました。この4年間でのデジタル環境の変化が劇的であったのですから・・・。

まずは「SA-11S3」のおさらいをしてみます。メカにはD&Mグループのオリジナル・エンジン「SACDM-2」を採用。D/AコンバーターにはTI(テキサス・インストゥルメンツ)製の「DSD1792A」を採用。そして、192kHz/24bit・アシンクロナスモード対応のUSB DAC機能搭載など、当時としては最新・最高の機能と性能を有したディスクプレーヤーとして、クラシックファンを中心にその音楽性の高さから人気を博し、ロングセラーとなりました。

新製品『SA-10』の最も注目すべき点は、《MMM(Marantz Music Mastering)》と名付けられたマランツオリジナルのディスクリートD/Aコンバーターを新たに開発し搭載していることです。普通、D/Aコンバーターは、ESS、旭化成、バーブラウン、TIなどの半導体メーカーのDACチップ(LSI)を採用しており、それらの高性能ぶりをメーカーはことある毎にアピールしているのが現状です。

それら既成のDACチップを採用するメリットは、開発費が抑えられ、LSI化により小さく出来ることから外来ノイズの影響を受けにくいなど数々あるのですが、その音質についてはDACチップですべてが決まってしまうような言い方も散見されるのが、気に掛かる昨今ではあります。

マランツのこだわり

今回マランツがオリジナルDACにこだわったのは、半導体メーカーに主導権を握られず“マランツが目指す音”を実現したいということや、同社のデジタル技術のノウハウを磨き蓄積することで、今後の製品開発にも大いにプラスになると考えたからのようです。

このオリジナルDAC《MMM》の最もユニークかつ注目すべき点は、CDやUSB入力されたすべてのデジタル(PCM)信号を、ここで一旦1ビットのDSDに変換するというのです。すなわち前段〈MMM-Stream〉では、独自のアルゴリズムによってPCM信号をDSDに変換してしまうのです。

もちろんSACDやDSDのファイル音源は直接後段に送られます。その後段〈MMM-Conversion〉では、シンプルなFIRフィルター(一種のローパスフィルター)を通過するだけですべてアナログ信号に変換されるのです。

前段〈MMM-Stream〉において行われるデジタルフィルター、ノイズシェーパー、ディザー、レゾネーターについてはユーザーによる設定の切り替えができ、24通りの組み合わせから好みに合わせて音色を選択することもできます。

また、後段〈MMM-Conversion〉との間にデジタル・アイソレーション回路を挿入することで、デジタル回路とアナログ回路が完全に分離され、ノイズ対策も万全としています。

プレーヤーメカには従来の「SACDM-2」に替わって「SACDM-3」が搭載されています。高剛性なスチールシャーシとアルミダイキャストトレーは継承していますが、今回新たにCD、SACDのほか従来機では不可能であったDSD信号(最大5.6MHz)などのデジタルファイルを記録したDVDディスクも再生できるようになったのです。一方、USB-Bや同軸デジタルまたは光デジタル入力が選択された場合、メカエンジンへの電源供給を停止して高音質化を図ってもいます。

さらに、今やハイエンド・ディスクプレーヤーにも必須のUSB-DAC機能は最新スペックを実現しています。最大11.2MHz DSDと384kHz/32bit PCMの入力に対応しており、DSDではASIOドライバーによるネイティブ再生と、DoP(DSD Audio over PCM Frames)の両方式に対応しています。もちろんアシンクロナスモードにも対応しています。

USBメモリーや iPod / iPhoneとのデジタル接続に対応するUSB-A端子をリアパネルに装備。PCやNASを使用せずにハイレゾ音源(最大でDSD:5.6MHz/PCM:192kHz)を再生することもできます。

DAC以降はフルバランス構成のアナログ回路としており、マランツ独自の高速アンプモジュールHDAMを使用して、すべてをディスクリート回路で構成しており、ハイスピードで情報量豊かなサウンドを目指したと言います。 ヘッドホン再生にもこだわりを見せ、ゲイン切替機能付きフルディスクリート・ヘッドホンアンプとすることで、メインのアナログ出力回路との相互干渉をも抑制しています。

新製品発表会の模様


『SA-10』の試聴は音響対策の施されたホテルの一室で、前作「SA-11S3」との比較試聴から始まりました。

まずはクラシックピアノのCDからでした。前作「SA-11S3」では輪郭を強調した音調で、立ち上がりは良いのですが、多少抜けが悪く、PCM独特の堅さが感じられるサウンドでした。

次に『SA-10』ですが、この場合、過去の経験から後に聴いた方が良く聞こえる場合が多いのですが、それには全く左右されない程の歴然とした違いがありました。

音全体がクリアになり、解像度が明らかに向上し、見通しがかなり良くなっています。「SA-11S3」にあった堅さがほぐれ、DSDの音調に近づいたとも感じました。これはやはりD/A変換の過程でDSD信号に変換されることとも関連があるのだと思います。

次にビッグバンドジャズのCDです。前作では低域が鈍く、重く感じられました。キレも今一歩で、大音量時の分離がもう少し欲しいと感じました。『SA-10』では、低域が弾むようになり、迫力のあるリッチなサウンドで楽しく、ノリの良い切れ味でした。

SACDのボーカルでは、前作は口が大きめで、低域も多少引きずる感じがありましたが、『SA-10』では口も程よい大きさになり、低域のヌケも良くボーカルがスッキリとして生々しさが出てきました。またボーカルと絡むギターは抜群で、その形まで見える程リアルなサウンドでした。

最後に聴いたDVD-RにDSD:5.6MHzで録音されたソフトは圧巻でした。それはSACD(DSD:2.8MHz)の倍の情報量があることから当然ではあるのですが、サウンドが一層深くなり、遠近感や奥行き感も格段に向上し、特に打楽器の立ち上がりの素晴らしさは、ライブ演奏を彷彿とさせる程でした。

最後に

このように、他社とは違う独自のアプローチによって果敢にチャレンジするマランツの開発姿勢に拍手を送るとともに、この完成度の高さは、国産ハイエンド・ディスクプレーヤーにまた一つの頂点が生まれたとも感じました。

さらにこのオリジナル技術を駆使して、よりリーズナブルな製品の開発にも大いに期待したいと思います。 『SA-10』は10月下旬発売予定で、只今ご予約受付中です。

今回も最後までお読みいただき、ありがとうございました。(あさやん)



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