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[ 2016年 10月 4日付 ]

英国の懐の深さを感じさせる!おおらかで包容力のあるスピーカー SPENDOR(スペンドール)『SP200』の魅力を探る

ハイエンドオーディオ担当の "あさやん" です。
本日は、英国メーカー「スペンドール」が初めて挑戦した大型フロア型スピーカー『SP200』をご紹介します。スペンドールの長い歴史と伝統に裏打ちされたサウンドを継承した“大人の音”を味わうことができます。

多くのクラシックファンに支持され続けてきた英国メーカー「スペンドール」

スペンドールと聞いて、まず「BC-II」が頭に浮かんだ人は、オーディオに豊かな見識をお持ちの50歳代以上の方だと推測いたします。なぜなら、「BC-II」は1973年(昭和48年)の発売なのです。当時、クラシックファンに圧倒的に支持され、10年以上のロングセラーを続けたスピーカーでもありました。

「BC-II」はBBC(イギリス公共放送)モニター系統のスピーカーで、縦長の3ウェイバスレフ型ブックシェルフで、ウーファーには世界的特許の真空成形工法によって作られたベクストレンコーンを採用。その黒光りしたコーンが印象的でした。

高域には定評のあった3.8cmドーム型ツイーターである「セレッションHF-1300」を、超高域にはドーム型スーパーツイーター「コールズ4001G」を搭載しており、コの字型のキャスター付きの専用スタンドがありました。

「BC-II」は、当時オーディオ界をJBLと二分していた同じ英国製のタンノイのサウンドとは対照的で、多少高域寄りの音色バランスで線が細く、非常に繊細なサウンドでしたが、そのバランスが多くの支持を集め、特に日本では雑誌等でも高く評価されたのです。チークのキャビネットで、ラベンダー・グレーの複雑な格子織りのサランネットの渋い外観も人気の理由でした。

話を戻しますが、スペンドールは1960年代BBCの音響研究開発部門のエンジニアとして知られたスペンサー・ヒューズが60年代末に創業したメーカーです。ブランド名は「スペンサー」と彼の愛妻「ドロシー」の名前を組み合わせたものだそうで、造語です。現在も振動板を含め、英国サセックス州ヘイルシャムで開発生産を続けています。

また、1970年代から80年代の長きに亘って一世を風靡した銘機「LS3/5a」は、放送用スピーチモニターとして、スペンサー・ヒューズがBBC在籍中の1960年代に基本設計したものに基づき開発され、スペンドールをはじめ、ロジャースやハーベス、KEFなどがBBCとのライセンス契約の元に、競合して生産された珍しいスピーカーシステムでした。

スペンドール初の大型フロア型システム『SP200』

今回ご紹介します『SP200』は、スペンドールでは初めてとなる大型フロア型システムで、同社最上位機となります。つまり“クラシックシリーズ”の最高峰に位置します。

30cmウーファーを2基(並列駆動)搭載しており、このウーファーのコーン素材は前述のベクストレンで、すでに40年の歴史を刻んでいますが、いまなお高いパフォーマンスを備えているのです。特に本機では大音圧、大振幅に対応するため、ケブラー複合のスタビライザードームを接合した新ユニットを採用しています。


最上部に位置するミッドレンジは、これも新開発で、18cm口径のポリマー(ep77)コーン振動板を採用し、中央部分には独立したフェイズプラグが装着されており、フレームもマグネシウム合金を採用して、非常に強固な作りとなっています。

ツイーターにはφ22mmのポリアミド・ドームを搭載。広帯域かつ広いリスニングエリアに対応しています。ネットワーク部品は高級機ならではの高品位パーツが使われておりクロスオーバー周波数は、標準的な550Hzと3.8kHzです。出力音圧レベルは大型の割には若干抑え気味の89dBとなっています。

エンクロージャーは大型システムでは珍しい密閉型で、これは素直な低域特性や大パワー入力への対応、さらに部屋との干渉を最小限に留めてくれるためとしています。ただ、堅固なフロントバッフルではありますが、従来からのスペンドール、さらにはBBC系モニターに通じる僅かに同調振動するタイプのサイドパネルによって、柔らかく温かみのある、魅惑のブリティッシュ・サウンドを目指したとしています。


機械的にダンプされた30mm厚の鋳鉄製ベース部は、鍛造鉄の支柱を介してエンクロージャーを確実に支え、高さ調整が可能な4本のスパイクが取り付け可能です。入力端子は独立したバナナプラグ対応の6端子で、トライワイヤリング接続が可能です。

従来“クラシックシリーズ”のトップモデルであった「SP100R2」とは横幅こそ同じですが、縦長の大型フォルムは過去のスペンドール製品を知るものにとっては驚くばかりです。

試聴しました

さて、『SP200』音質については、2016東京インターナショナルオーディオショウで試聴しました。


トライオードのブース

スペンドールとしては初めての大型フロア型であり、そのスケール感はかつてなかったものですが、そこはスペンドールです。これ見よがしに迫力で押しまくる大型フロア型スピーカーとは次元の違う、まさに“大人の音”とも言える、大らかで気持ちよく響くナチュラルサウンドでした。

また、最近のスピーカーの主流でもある「高解像度」「高リニアリティ」「ノンキャラクター」とは一線を画した、スペンドールの長い歴史と伝統に裏打ちされたサウンドを継承した、ある意味珍しいスピーカーとも言えます。

特に高域は、かつて人気を博した“ブリティッシュ・サウンド”を彷彿とさせる、ふくよかな温かいサウンドです。ボーカル帯域も人肌の温もりを感じさせ、スピーカーの大きさを意識させない自然なものとなっています。

そして、大口径30cmのウーファーを2基搭載していることから、さぞや低音が鳴り響くのではとの意に反し、スペンドール伝統の密閉型とすることで、低域はバスレフ型にある独特のピークやある種の癖もなく、なだらかに低域に向かって減衰させています。これこそ大型ウーファーとエンクロージャーとしつつ、素直な低域を狙ったスペンドールの独自の考え方だと思います。

最後に

『SP200』は、エンクロージャーを綺麗に鳴らし、ユニットは硬質系を避け、さらに密閉タイプにすると言う、“ブリティッシュ・サウンド”の王道を貫きつつも、かつてなかった大型に挑戦した、スペンドールのフラッグシップの名に恥じない完成度です。

スピーカーユニット以外は振動させないという、同じ英国のB&Wとは真逆の思想であることに大いに興味を持つとともに、同国の懐の深さ、多様性に改めて感心します。

高忠実度再生もオーディオの一つの方向ではありますが、あまりにも全てが同じ方向を向いてしまう業界に、一石を投じたスピーカーとも言えるのではないでしょうか。

今回も最後までお読みいただき、ありがとうございました。(あさやん)



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    スペンドール「クラシック・シリーズ」