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[ 2016年 12月 6日付 ]

オンキヨーから久々の“セプター”を冠したスピーカー「SC-3」発売!

ハイエンドオーディオ担当の "あさやん" です。
今回は、創業70周年を迎えた「オンキヨー」から、15年ぶりに発表された“セプター”の名を冠したスピーカー『SC-3』をご紹介します。

過去のシリーズを単に踏襲したものではなく、若い技術者達が当時の“セプター”の図面を基に最新の手法を使って開発した製品です。


オンキヨーの歴史

このコーナーでオンキヨー製品を取り上げるのは2015年1月のアナログプレーヤ「CP-1050」以来、実に2年ぶりになります。

かつての隆盛を知っている人間にとって、さらには関西人にとっては、オンキヨーからハイエンド製品が発売されないことに一抹の寂しさを覚えていたのではないでしょうか。

ここでオンキヨーの歴史を少し紐解いて参りましょう。

1946年9月 株式会社大阪電気音響社として、大阪市都島区に設立後、翌1947年に 商号が大阪音響株式会社に変更され、1952年に 本社、本社工場を大阪市旭区に移転。

その後、1961年 大阪府寝屋川市に香里工場を新設、1969年 大阪府寝屋川市に日新工場を新設、そして1971年 商号をオンキヨー株式会社に変更しています。

この歴史を見ても分かる通り、オンキヨーは大阪に根ざした関西の数少ないオーディオメーカーと言えます。 
※正式名称は「オンキョー」ではなく「ヨ」が大文字の「オンキヨー」ってご存知でしたか?

そして、オンキヨーは今年2016年9月 めでたく創業70周年を迎えたのです。その間幾多のオーディオメーカーが市場から撤退し、現存しているメーカーも殆どが提携や合併を経て現在に至っています。その中にあって、ブランドがそのまま続いている創業91年の「ラックス(マン)」と「オンキヨー」が奇しくも関西発のブランドであることに、関西人としては誇りさえ感じます。

私事ですが、私が中学生の頃、初めて使ったオーディオ機器は、オンキヨーのモジュラーステレオでしたし、高校ではオンキヨーのマルチチャンネルのセパレートステレオでした。

その後単品コンポの世界に足を踏み入れてからも、ホーンを使った3ウェイスピーカー「E-83AMK3」やインテグラと言われたプリメインアンプを使ったりしています。そしてこの業界に入った切っ掛けでもある大学時代のアルバイトの一つが、オンキヨー製品の店頭販売でした。

私が、オンキヨーのスピーカーの中で最も印象に残っているのは、同社の歴史を語る上では欠かすことの出来ない銘機「Grand Scepter(グラン・セプター) GS-1」です。


1984年 究極のスピーカーを目指して、全く新しい設計・測定の理論によって作られた2ウェイ3スピーカーの大型オールホーンスピーカーシステムで、国内のみならず海外でも高い評価を獲得したスピーカーでした。

このスピーカーの位相管理は徹底しており、GS-1をお持ちのオーナー宅に伺った際に聴かせていただいた繊細で実在感のあるサウンドは今も忘れられません。

オンキヨーが“セプター”と言う名を使い始めたのは1960年代で、当初はホーン型を中心にした高級スピーカーユニット群の名称でした。

それらのコンセプトは、「演奏者の想いまで伝える」で、(1) ソースによる再生音の適不適がない(2) ホーン臭くない音質(3) 疲労感のない素直な音質 と言うもので、“世界に通用する高性能なスピーカー”を自社製造することを目標に研究開発を行っていたのです。

若手技術者が中心となって開発した『SC-3』

そして、今年創業70周年を迎えた「オンキヨー」が“セプター”の名を冠したスピーカー『SC-3』を15年ぶりに発表しました。

オンキヨーによりますと、『SC-3』は1990年代まで続いた“セプター”シリーズを単に踏襲したものではなく、オンキヨーの若い技術者達が当時の“セプター”の図面を基に、CADなどを使って新たに設計し直し、3Dプリンターで試作を繰り返して音質を追求するという最新の手法を使って開発したとのことです。

さらに、すでに引退した当時の技術者のアドバイスも受けつつ若手技術者が中心となって、『SC-3』の性能を追求しついに完成に至ったのです。

それでは久々の“セプター”を冠した『SC-3』への並々ならぬオンキヨーの意気込みをレポートして参ります。

『SC-3』をご紹介

『SC-3』は、前述の大型フロア型の「GS-1」とは違い、近年では珍しい20cmウーファーと大型ホーンによるやや大きめの2ウェイ・ブックシェルフ型スピーカーです。

ドライバーユニットはいずれも完全な自社開発で、ウーファーには世界で初めて開発に成功したバイオマス素材であるCNF(セルロースナノファイバー)使った振動板を採用し、理想的な特性を獲得した同社伝統のノンプレス製法で作られる「ONF(Onkyo Nano Fiber)ウーファー」を搭載しています。

さらにこのコーン紙の表面には、書道で使う墨で有名な奈良の老舗墨店:古梅園の高級墨である「紅花墨」が塗布されており、解像度の向上を図っています。

「ONFウーファー」は、軽量・高剛性でしかも内部損失が大きいという特徴を持っていますが、この「紅花墨」を塗布ことで、さらに振動の伝播速度が速くなり、弾性が高まり、SN比も向上したのです。

これにより力強く低重心でありながら、レスポンス良く立ち上がる低音再生が実現でき、生演奏の迫力、演奏者や会場の空気感を再現できたのです。

また、ツィーター部は、オンキヨー初のリング型の口径2.5cmマグネシウム振動板を使用した新開発コンプレッションドライバーを採用。

“セプター”シリーズの特徴でもあるホーンを組み合わせていますが、今回新たに開発したアルミ合金のスーパー楕円形状のホーンを採用した「コンプレッションドライバー・ホーンツィーター」を搭載しています。

リング型の振動板を採用したことで、e-ONKYOなどで同社お得意のハイレゾ音源を難なく再生し、大型ホーンでは異例な、スペック上は50kHzまでの超高域再生が可能となっています。

リング型振動板は、通常使われるドーム型に比べ20kHz以上での周波数のアバレが少なく滑らかに伸びているとのことで、これにより自然な音の広がりを実現して、明瞭で自然な高域再生を実現できたのです。

キャビネットには板厚42mm(最大)の高剛性MDF材を使用し、サイドバッフルが曲面仕上げされており、音の回折と定在波を抑制するとともに、内部にも彫り構造を施すことによって、内部定在波を低減し、さらに低域を増強する「Resonance Sculpting Control」テクノロジーを採用しています。これにより低域から高域までクリアな音場感を実現します。

2ウェイ故に重要な3kHzでのクロスのネットワークは、電流面を一致させた素子マウント構造を採用したネットワーク回路とし、独Mundorf社製コンデンサーを使用して徹底的に音質にこだわっています。

そして別売の専用スタンド「AS-3」も非常にユニークな構造をとっています。単純な剛性重視の構造ではなく、I字型のポールを適度な弾性を持つS字型の板バネが補助し、スピーカーの動作に伴う不要な振動を、台座のスパイクを介して床に逃がす仕組みだそうです。これによりスタンドの存在を感じさせず、『SC-3』を自由に自然な音色で鳴らすことができるのです。

試聴しました


さて、試聴は11月に行われた「オーディオセッション」のオンキヨーブースで聴きました。まず第1印象は、ホーン臭さの全くないナチュラルで上品なサウンドということです。

しかし、上品というと大人しい穏やかなサウンドと捉えられるかも知れませんが、低域は小気味よく量こそさほど多くないものの解像度が高くコリッとしており、音質的にもホーンツイーターとの繋がりは自然で、形から来るイメージとは全く違っていました。

さらにジャズではホーンならではの押し出し感もあり、音が飛び出てくる感覚はドーム型のツイーターでは味わえない爽快感です。ピアノのアタックは大音量でも破綻することはなく、演奏者の意気込みまで伝わるようなリアル感でした。

ボーカルでも決して口が大きくなることはなく、自然体のボーカルが楽しめました。ハイレゾ音源も聴かせてもらいましたが、これが2ウェイかと我が耳を疑いました。それ程に自然に難なく鳴らし切ったのです。

最後に

オンキヨーが久々に放つ“セプター”。輸入スピーカーに席巻された感のある日本のハイエンドオーディオ市場に、伝統と最新技術を融合させた国産スピーカーが登場したことに、オーディオの新しい時代、国産オーディオの復活を期待したいと思います。

今回も最後までお読みいただき、ありがとうございました。(あさやん)



オンキヨー『SC-3』「AS-3」はこちら

※ご紹介した製品は販売を終了いたしました。



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