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[ 2017年1月24日付 ]

『 電源の重要性 Vol.2 』 〜電源環境を見直そう! ハイエンド編〜

ハイエンドオーディオ担当の "あさやん" です。
前回このコラムで『 電源の重要性 』について、エントリークラスの電源ケーブルを取り上げましたが、今回は前回と打って変わって、電源の品質を根本的に見直すべく、ハイエンド機器でのチャレンジです。
もちろん、いずれも高額ですので、おいそれと導入できる製品ではありませんが、電源環境を見直していただくきっかけになればと、あえてレポートしてみました。



左から、accuphase「PS-1230」、LUXMAN「ES-1200」、ACOUSTIC REVIVE「RPC-1」

クリーン電源で、電源ケーブルからのノイズや歪みの流入を回避!

家庭に供給される交流電源には、さまざまなノイズや歪みが乗ってきており、これがオーディオシステムに接続されることで、電源ケーブルを通じて機器に流入し、増幅されてしまっています。

その流入対策としての電源コンディショナーには、これまでフィルターを使ってノイズを低減させるタイプや、1対1のトランスを使用する「パッシブ型」と、電源電流そのものを再生成する「アクティブ型」のジェネレーター(発電)方式が一般的でした。しかし、これらの手法ではすべてのノイズや歪みを取り去ることは不可能と言われています。

そのノイズや歪みの流入を回避するため、積極的な手法で解決を図った製品が、今回ご紹介します国産ハイエンドブランド「アキュフェーズ」と「ラックスマン」のクリーン電源です。

いずれも効果絶大ですが、その取り組み方法は対照的です。さらに「アコースティックリバイブ」が世に問う、新ジャンルの電源改善アイテムもご紹介します。

アキュフェーズ 交流安定化(クリーン)電源「PS1230」「PS530」

いずれも従来機「PS1220」「PS520」の後継機という位置づけの製品です。アキュフェーズのクリーン電源の歴史は長く、1996年発売の「PS500」に遡ります。それはまだ、今ほど電源の重要性が話題になっていなかった20年も前です。

その後、最大出力500VAの500シリーズは、500V(2000年)、510(2006年)、520(2012年)と続き、最大出力1200VAの1200シリーズは、1200(1997年)、1200V(2000年)、1210(2005年)、1220(2011年)となり、今回の新製品が第5世代機にあたります。

今回も従来同様、アキュフェーズの常套手段であるブラッシュアップが施されています。それは、アキュフェーズがアンプなどでも行っているのと同様に、新たに一から設計をやり直すのではなく、前作の発売以後に得られた数々のノウハウを使って、確実にグレードを上げていくという、最も確実な手法です。

アキュフェーズのクリーン電源は、直流から交流電源を新たに作り出すのではなく、機器の内部で作られた基準波形と、入力された電源の波形を比較することで、綺麗な交流波形(加・減算して補正)にして送り出すというタイプのクリーン電源です。新設計の低歪率基準波形発生回路と、強力な出力段により、歪率を従来の0.1%から0.08%へ20%もの改善が図られています。

この方式のメリットは、主なエネルギー源は入力された交流だけで、損失分としては波形補正用の電力だけとなるため、交流を新たに作り出すタイプの交流定電圧装置に比べて大変効率が良く(無負荷時の消費電力を「PS1230」では従来の60Wから37W、「PS530」は50Wから25Wへと大幅に低減)、発熱も少なくすることができるのです。電源周波数は入力信号そのものですから、内部に発振器の必要もないため、本体内部からの高周波ノイズの発生もないと言います。

「PS1230」は、定格出力電流12Aに対し、瞬時電流供給能力は140Aから160Aへ、「PS530」は5.1Aに対し、70Aから80Aに、いずれも前作より大幅に増強して抜群の電流供給能力を誇っています。

「PS1230」は、ホスピタルグレードの3Pコンセントが、フロントに2口、リアに8口の計10口あり、トータル1200VAの出力が可能で、パワーアンプを含め、システム丸ごとにも十分ご使用いただけます。一方、「PS530」は、リアのみ8口の出力を装備しており、510VAの出力が可能です。こちらは、一般的なプリメインアンプや入力機器用として十分な容量を確保しています。

アキュフェーズならではの、グレードアップ手法による完成度は非常に高く、アナログに徹し、パワーアンプ並の頑丈な構造とした結果、サウンドの安定感や低域の力強さは抜群です。お持ちのシステムのパフォーマンスを最大限発揮させる電源システムです。

ラックスマン クリーン電源システム「ES-1200」

ラックスマンが新たに参入したクリーン電源の第一号モデルです。前述したジェネレーター方式のアクティブ型の電源コンディショナーではなく、電源波形の歪みだけを排除する補正方式を採用しています。本機は、一対一のアンプとも考えられますが、その電源にはスイッチング・レギュレーターを採用しています。

最大の特徴は、プラス側の給電経路に入っているパーツがフューズと電源スイッチだけで、トランスはもちろんアンプも直列に入っていない「ダイレクト・カップリング方式」を採用していることです。そのメリットは、トランスやアンプが入ることでのノイズや歪みの発生が回避できることだと言います。

電源波形は50Hzまたは60Hzの正弦波で、国内では100Vです。しかしその波形は、家庭内の電化製品によって生じる歪みや、外部からのノイズや電磁波の影響で、正弦波がささくれたり、凹凸が生じたり、頭が潰れたりしています。これらはすべて歪みであり、この歪みを補正して正確な正弦波に戻すことが本機の使命なのです。

ラックスマンは、この補正の方法として従来とは別の方法を考え出したのです。「ES-1200」に内蔵させたROMに50kHz・16ビット相当のPCM波形を記憶させ、これをD/A変換(工業用ラダー型DAC)した後、ローパス・フィルターを通した基準正弦波と電源波形を比較し、理想的な正弦波となるように高精度に補正するのです。基準波形を元の電源波形から生成したり、アナログ発振器を使ったりせず、高精度のハイレゾデータとしたことが本機の画期的なところです。

本機の重量は17.5kgで、1200VAのクリーン電源としては軽量です。3Pコンセントにはパナソニックのホスピタルグレードが採用され、8口が用意されています。インシュレーターにもタオック製のグラデーション鋳鉄製を採用しています。

ラックスマンが満を持して投入したクリーン電源。高S/Nで、曖昧であった輪郭が確かになり、音場の見通しも明らかに向上します。立ち上がりが良く、頭を打たない伸びきり感は格別です。オーディオ機器自体の音質を変質させず、持っている性能をすべて引き出す電源システムと言えます。

アコースティックリバイブ 電源コンディショナー「RPC-1」

「RPC-1」はアキュフェーズやラックスマンのクリーン電源とは全く違うアプローチによる画期的な電源改善アイテムです。その使用法は至って簡単で、空いたコンセントに本体から伸びている3Pプラグを差し込むだけです。

「RPC-1」は、赤外線マウスの発明者である故・柴田潤氏のアイデアをHWT(ハイエスト・ワールド・テクノロジー)とアコースティックリバイブの共同研究によって発展、製品化させたものだそうで、内部の特殊コイルの組み合わせによる独自の回路設計により、電源経路に乗る超高周波ノイズの除去だけを行うという製品です。

本機には、コンデンサーや抵抗などのパーツ類は一切使用されていないため、エネルギーのロスが一切ありません。この結果、ノイズフィルターなどの使用時に感じることのある、エネルギー感が後退したり音像が痩せるような副作用がなく、一方でS/N感や透明度が向上するという、通常は相反する要素を両立させたと言います。

筐体は17cm×17cmで高さ8cmで音響特性に優れたヒッコリー材を使用し、ケーブル部分は37cmで、比誘電率に優れたシルクテフロン絶縁を施した究極のオーディオ専用導体「PC-TripleC」を採用しています。

また、本機をクリーン電源の出力コンセントに装着することで、クリーン電源自体の性能をさらに向上させることも可能とのことです。電源経路に乗る超高周波ノイズの低減と均一化を行い、S/N比を劇的に向上させながらエネルギー感や躍動感なども向上させると言います。

今回は、写真にあるように電源タップの空きコンセントに繋いで検証しました。
PCオーディオやCDソフトでは、サウンドに力強さが増し、低域のエネルギー感がたっぷりで立ち上がりがよくなり、ドスンと深く沈む感じが出てくるようになりました。

中高域のまとわりつきがなくなり、音場の透明感が出て見通しが良くなり、立体感もかなりリアルに再現されるようになりました。全体に一本芯が通った音離れの良いサウンドになったのです。よく言われるデジタルサウンドの欠点が、明らかに改善できていたのです。

一方、アナログでも全帯域でスピードアップした、非常に張りのあるサウンドになり、従来にも増して実在感や奥行き感が再現できたのです。私自身、過去に聴いたアナログサウンドでもダントツの素晴らしさと断言します。

これが超高周波ノイズに的を絞った対策の効果だとすると、大変な発見であり、電源関連アクセサリーの新ジャンルの登場と言えると思います。

最後に
今回、ラックスマンがクリーン電源についに参入し、それをアキュフェーズが伝統のPSシリーズの新製品で迎え撃った格好になりました。

そこにまったく新しい発想のパッシブタイプの電源コンディショナーを投入したアコースティックリバイブを含め、国産高級電源アイテムが《 三つ巴 》の様相を呈しています。

確かに、いずれの製品もおいそれと購入できる価格ではありませんし、同じ金額ならコンポーネントのグレードアップを…と、つい考えてしまいます。

しかし、今お使いのオーディオシステムのサウンドが気に入っておられ、そのお気に入りのサウンドを変質させることなく、さらに高みを目指したい方にこそお勧めします。一度体験してしまうと手放せなくなってしまう製品ばかりです。

今回も最後までお読みいただき、ありがとうございました。(あさやん)



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