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[ 2017年1月31日付 ]

“次世代プリメインアンプ” marantz『PM-10』〜今後の10年を見据えて遂に完成!〜

ハイエンドオーディオ担当の "あさやん" です。
マランツから、セパレートアンプに匹敵するパフォーマンスをもつリファレンス・プリメインアンプ『PM-10』が登場!日本橋1ばん館で試聴した内容も含めてご紹介いたします。



marantz「PM10」

マランツのプリメインアンプ

マランツのプリメインアンプには、すでに生産が終了した「PM-11S3」を筆頭に各価格帯にヒット商品があります。

その上位には、これもすでに生産を中止してかなり時間が経過しているフラッグシップのセパレートアンプ「SC-7S2」「MA-9S2」(2006年発売) や、それらに投入した技術をベースに設計された、同社としては当時24年ぶりとなったミドルクラスのセパレートアンプ「SC-11S1」「SM-11S1」(2007年発売)もありました。

しかし、いずれもすでに生産は終了しています。その後は前述のプリメインアンプ「PM-11S3」が同社としての最上級アンプとなっていました。

そのマランツから、セパレートアンプに匹敵するパフォーマンスをもつリファレンス・プリメインアンプ『PM-10』が登場します。

早速、試聴が叶いましたのでリポートして参ります。価格は税別60万円と決して安くはありませんが、マランツ曰く「セパレートを超えるパフォーマンスを実現できた」とのコメントもあり、本機に対する自信の程が伺えます。

じっくり時間をかけて、“飛躍”の構想を具現化した『PM-10』

従来から、オーディオの世界では、セパレートアンプこそがハイエンドであるという風潮があります。それはプリ部とパワー部を別筐体にすることで、駆動力を握る大出力が可能なことや、安定化と高S/Nを実現するフルバランス構成が可能なこと、さらにプリとパワーの電源を別にできることでのチャンネルセパレーションの向上や、ノイズの減少による音質の向上という、筐体の余裕ゆえに解決できる大きなメリットがあるためです。

本来、今回ご紹介します『PM-10』(2017年2月下旬発売)は、先に発売されたSACD/CDプレーヤー『SA-10』(2016年10月発売)と同時発売の予定で開発が進んでいたのですが、最終的に敢えて発売時期をずらしてまで徹底的に音質を追い込んだと開発者が述べています。そのことからも『PM-10』には大いに期待できると思います。

これが単なるパワーアップや性能の向上したアナログアンプというコンセプトであったなら、従来型アンプの範疇に収まってしまい、いわゆるマイナーチェンジと言える「PM-11S4」になってしまうとマランツは考えたのでした。

マランツとしては型番に“10番”を冠する限りは、もっと“飛躍”したいと考えたのです。それが2014年の夏の事だったそうで、今から2年以上も前のことで、以来じっくり時間をかけて、その“飛躍”の構想を具現化してきたのです。

目指すは前述の同社のセパレートアンプ「SC-7S2」「MA-9S2」のコンセプトを継承することでした。それは、フルバランス構成で、プリはステレオながらパワーはモノラル、しかもそれぞれが別電源をもつというものです。これをプリメインアンプの筐体に納めてしまおうとマランツは考えたのでした。

目標は、《大出力》《フルバランス》《セパレート電源》という3要素の実現! そのパワーは、なんと4Ωで400Wという、従来型プリメインアンプでは不可能と思われるような数字でした。

しかもこれには大きな難関が立ちはだかりました。プリアンプはアナログ電源でも大丈夫ですが、さすがにパワーアンプをモノラル構成で別電源、しかもフルバランス構成(アンプが倍必要)とするには、とてもプリメインアンプでは無理との結論に達したのでした。そこでスイッチングアンプに白羽の矢が立ったのです。

そのために検討されたのがHypex社のクラスDのモジュールだそうで、性能はもちろん、フィードバックの方法もシンプルで、デジタルアンプのもつ弱点がなく、アナログアンプに近いものであったそうです。そこで、そのモジュールの優秀性を試すべく開発されたのが、2015年末に発売され、今なおヒットを続けているUSB DAC内蔵プリメインアンプ「HD-AMP1」という訳です(『PM-10』にはよりハイグレードな「Ncore」というモジュールが搭載されています)。

パワー部は4Ωで400Wが必要なため、スイッチングアンプを4台BTL接続して実現させたのです。ただデジタル部はあくまでも最終のドライブ段だけで、それ以外は全てディスクリートで組み上げられており、アナログアンプと言っても過言でないもので、プリとの相性も抜群と言います。

一方、プリ部はフラッグシップの「SC-7S2」の技術を継承し、グランドに大電流が流れず、電源ノイズや外来ノイズに強いフルディスクリートで「プリ+ボリューム」アンプを構成しています。

入力はXLRバランス2系統、RCAアンバランス4系統、フォノ1系統、パワーダイレクト1系統を備えており、アンバランス入力のバランスへの変換回路には、マランツ製品ではお馴染みの「HDAM-SA3」というアンプモジュールを使った電流帰還型を採用しています。信号は全て4chのフルバランス構成に処理され、バランスの状態で後段に送られます。

ボリュームもLR独立のフルバランス構成で、最近のハイレゾソースでは十分な高域のチャンネルセパレーションが取りにくい従来型のカーボン抵抗を使ったボリュームではなく、高精度な4連電子ボリュームとしています。プリの電源はもちろんアナログで、トロイダルトランスを搭載しています。

フォノアンプも搭載され、MM、MC High、MC Lowのインピーダンスに対応した本格的なものです。その他各所に高級なオリジナルパーツや新開発のパーツが惜しみなく投入されています。さらに通常使われているリレーを使わず、パワーアンプモジュールに内蔵されている保護機能とマランツのマイコン技術を組み合わせることで、スピーカー保護が解決したとのことです。

以上の結果、「Ncore」モジュールを使うことで、一般的にクラスDアンプの欠点とも言われる波形の暴れや、繋がれる負荷による音質の変化は皆無とすることができ、AB級のアナログアンプに近い動作を獲得できたと言います。

さらに、デジタルアンプで心配となるスイッチング・パワーモジュールから発生するノイズや電源回路から発生する漏洩磁束の干渉、さらには外来ノイズの音質への影響を防止するため、シャーシやリアパネルには銅メッキを施し、各回路の間にも銅メッキした鋼板やケイ素鋼板を配するなどして、完璧なシールドが実現できたと言います。

試聴しました。

『PM-10』の試聴は暮れも押し詰まった12月末、日本橋1ばん館で行いました。試聴機器は、ソース機器のSACDプレーヤーには先行発売されている『PM-10』とペアとなる『SA-10』、スピーカーはB&W『804D3』で行いました。

まず、試聴した第一印象は非常にしなやかで、透明感のあるサウンドということでした。実はこの時点では、まだ『PM-10』の商品説明をマランツの技術者から受ける前の段階で、全く何の予備知識もなく、とにかく試聴を開始したのでした。

その後、商品説明を受けたのですが、まさか本機がデジタルアンプであるとは、その時は心底驚きました。残念ながら私の年代のオーディオファンには、どうしてもデジタルアンプに対するアレルギーの様なものがあるのです。それはかつて20数年前、最新のアンプこそがデジタルアンプであり、今後アナログアンプに取って代わると言うふれこみで登場した数々のデジタルアンプの音質に対するアレルギーの様なものだとも言えます。

しかし、前述のようにデジタルアンプと聞く迄は、全く違和感がないどころか、上質なA級のアナログアンプではないのかとさえ感じたのでした。しかもA級アンプより遙かにパワーハンドリングが良く、本来鳴らし難い『804D3』を難なくドライブできたのですから・・。

その後、デジタルアンプと認識してからも何のマイナスイメージも感じず、高級セパレートアンプにも通じる透明度の高い、超高解像度のサウンドでした。

低域は安定感があり、決してゴリゴリ押し出して来るような荒々しさこそありませんが、楽器の姿形が見えるような自然な立体感、重量感は十分再現していました。

中高域は申し分ない程に滑らかで、どこにも引っ掛かることなく自然に抜けていく感じで、生音の様な心地よさを感じました。音場も非常にリアルに再現されました。

最後に
この『PM-10』こそ、マランツが目指した“原音追求”が具現化できたのではないかと思います。今後の10年を見据えた“次世代プリメインアンプ”の登場だとも言えます。

プリメインアンプでここまでやるか?『PM-10』にマランツ技術者の意地のようなものさえ感じるとともに、デジタルアンプへのマイナスイメージを払拭するには十分すぎるパフォーマンスを実現できたと断言します。

今回も最後までお読みいただき、ありがとうございました。(あさやん)



プリメインアンプ マランツ『PM-10』『SA-10』


最高のパフォーマンスを発揮できるB&Wのスピーカー

※ご紹介した製品は販売を終了いたしました。