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[ 2017年4月4日付 ]

ペアー・オーディオ『 Robin Hood SE / Cornet1 』 〜マニアック御用達のアナログプレーヤー登場〜

ハイエンドオーディオ担当の "あさやん" です。
今回は、ベテランのオーディオファイル(マニアック)にお勧めするアナログプレーヤー pear audio『 Robin Hood SE / Cornet1 』をご紹介します! 熟練度や慎重な作業が必要ですが、振動を徹底的に排除し、「完全な静けさ」を実現できる、本当の意味でのアナログなプレーヤーです。



pear audio「Robin Hood SE / Cornet 1」

pear audio analogue(ペアー・オーディオ)社の歩み

pear audio analogue社は、イタリアの東隣に位置するスロベニアの首都リュブリャーナにあります。このブランドは、熱心なオーディオファイルであり、40年以上もオーディオ界に身を置いている人物で、アナログオーディオの音質向上に邁進してきたというPeter Mezek(ピーター・メゼック)氏によって設立されました。

氏は1985年、革新的なリニアトラッキング方式のプレーヤーをJiri Janda(ジリ・ジャンダ)氏と共同で開発し、大きな注目を集めたのです。

その後、ノッティンガム・アナログ・スタジオを創立した故・Tom Fletcher(トム・フレッチャー)氏と知り合い、アナログ・ターンテーブルの設計思想と技術的なアプローチに関して多大な影響を受け、他のいかなるアナログプレーヤーでも再現できなかった素晴らしい音楽性とリアリズムに感銘を受けたのでした。

2005年、トム・フレッチャー氏はノッティンガム社を退いた後、従来からの自身の設計思想を発展させた「KIDシリーズ」を設計し、ペアー・オーディオで製造されるようになったのです。ここでピーター・メゼック氏とトム・フレッチャー氏は、さらなる探求を続け、アナログ・ターンテーブルの基本原理に立ち戻って、究極のアナログサウンドを実現したのだと言います。

トム・フレッチャー氏は、2010年に亡くなられましたが、その後をピーター・メゼック氏が引き継ぎ、アナログ再生のさらなる高みを目指して、ペアー・オーディオ社で新しい製品を提案し続けているのです。

そして、新たに日本に登場したのが今回ご紹介します『 Robin Hood SE / Cornet1 』です。

「完全な静けさ」を実現する『 Robin Hood SE / Cornet1 』

そのコンセプトは、同社の基本理念でもある「最先端技術とは真逆の、原点への回帰」と「物量投入でなく、最適素材の選定とそのシンプルな組み合わせで最高のパフォーマンスを得る事」を継承しており、『 Robin Hood SE 』は、それらに沿って製品化されたペアー・オーディオ・ブランドのエントリーモデルという位置づけです。

具体的には、レコードの音溝に刻まれた情報の全てを再現するために必要なものを、「静粛性(静けさ)」と考え、『 余分な振動を与えないためには、必要最小限なトルクかつローノイズなモーター 』が必要と考えたのです。

すなわち、アナログプレーヤーでの最大の振動源である駆動モーターに『 必要最小限のトルク=振動が極小 』なモーターを採用することで、振動を根本から無くして静粛性(静けさ)を追求しているのです。

これは、ターンテーブル(プラッター)が回転する時に、どうしても発生してしまう極僅かな振動が、レコードの音溝に刻まれた情報をスポイルしてしまうため、とにかく振動を徹底的に排除しようとする考え方からです。

この考え方は、前述のノッティンガムのプレーヤーと全く同様で、間違いなく直系です。

その結果、起動時のトルクを持たせていないため、作動開始には手回しによる回転のサポートが必要です。さらにモーターを別筐体として本体左手前にビルトインし、プレーヤ本体と接触させないことで、周到にアイソレートして「完全な静けさ」を実現できたと言います。

本機のターンテーブル(プラッター)は、29mm厚あり、質量は6kgにも及ぶ高剛性アルミニウム合金製の削り出しで、ドライブベルトにはシリコン製の丸型(平たくない丸い)ベルトが使われています。

ターンテーブルのベルト接触部にガイド溝を備えることで、プーリー位置を設定し易い構造とし、長時間の使用でも安定した滑らかな回転が実現できます。

また、33/45回転の速度切替えはプーリーの上下にかけ替えることで行う構造としています。50/60Hzの電源周波数切替えはプーリー交換での対応となります。

本体の仕上げは、光沢のある非常に美しい「ポルシェ・バーガンディ」色のラッカー仕上げが施されています。材質は不要な振動を極力抑えるために、天然のバルトバーチ材を使用し、12層に積層された18mm厚ボードを2段に重ねた構造としています。

その2枚のボードの間は制振性の高い特殊シリコン樹脂で共振を抑えることで、天然木による優れた音響特性を実現しています。さらに本体は内部損失の高いPOM(ポリオキシメチレン)材の支柱3本により3点支持されています。

トーンアーム「Cornet 1」も、故 トム・フレッチャー氏によって基本設計された『Space Arm』を進化発展させたアームの集大成としています。

特殊加工のカーボンファイバー素材により、アームの安定性・共振制御を高め、これまでのトーンアームにはなかった高い剛性を実現できたと言います。

アーム部のジョイントにはシリコン素材を充填していますが、一般的なシリコン素材は流動性が高く馴染むまで若干時間が必要で、再生中に音が変化することもあるそうですが、「Cornet 1」に採用したシリコン素材は、流動性を抑え時間をかけずに音が馴染むバランスに優れた特殊なものとしているとのことです。

カウンターウェイトには多くのユニピボット・トーンアームと同じく偏心カウンターウェイトを使用し、適切なレコードトレース能力を確保し、位相の誤差を限りなくゼロに近づけているとのことです。また、指かけを無くしたのは、指かけによりトーンアームのバランスが崩れ、制御の効かない微細な共振がヘッドシェルに拡散するのを防ぐためだそうです。

サイズは、トーンアーム「Cornet 1」を搭載した状態でも、幅425×奥行355×高さ255mmとコンパクトで、質量が11kgと非常にコンパクトで設置の場所も取らず扱いやすい大きさです。

試聴しました

弊社日本橋1ばん館で、実際にトーンアーム「Cornet 1」付きの『Robin Hood SE / Cornet1』を操作し、そのサウンドも確認しました。




光沢のある非常に美しく流麗なデザインは、アナログの温かみを感じさせ、所有欲を大いに刺激されました。6kgにも及ぶターンテーブルの重量感は半端ではありません。

ターンテーブルの起動には、1回転させる程のかなり手伝いが必要です。規定の回転数になるまで回さないと止まってしまう低トルクさにはビックリしました。

別筐体になっている駆動モーター部に、穴の空いた本体をかぶせるようにはめ込みます。本体とは接触しない構造です。

トーンアーム「Cornet 1」はシンプル過ぎる位シンプルです。指かけはもちろんカウンターウエイトやインサイドフォースなどの目盛も一切ありません。これらが全て音のためには余計なものとの考えからでしょう。

このため、カートリッジの取り付けは、アームから直出しされているリード線に慎重に付ける必要がありますし、針圧調整には別途針圧計が必要ですし、アンチスケーティング(インサイドフォース・キャンセラー)の調整も目盛がないためテクニックが必要です。

このように『 Robin Hood SE / Cornet1 』は決して操作感抜群とはいかないプレーヤーですが、ここまでの徹底度には正直脱帽です。そのためユーザーには余計な作業を強いりますし、熟練度や慎重な作業も要求する、本当の意味のアナログなプレーヤーです。

最後に
店頭でカートリッジに「マイソニックラボ/ Signature Gold 」(プレーヤーの倍近い価格と、ちょっと反則ぎみですが)を使用して試聴しました。

やはり、期待した通りの抜群の“静けさ”に感動しました。物量投入型の高級プレーヤーに感じるある種の重苦しさは全くなく、軽快なサウンドでありながらも安定感を備えた、実に音楽性豊かなものでした。

またカートリッジの持つ能力をスポイルすることなく、全て引き出していると感じさせるトーンアームも魅力的でした。聴き疲れしない優しいサウンドには、音楽にどっぷりと浸れ、どんどん引き込まれて行きそうなアナログならではの深さを感じました。

このように『 Robin Hood SE / Cornet1 』は、ハイエンドクラスの高剛性プレーヤーとは、真逆のアナログサウンドの世界を実現する高級プレーヤーとして、ベテランのオーディオファイル(マニアック)のお勧めするアナログプレーヤーです。

お好みのトーンアームが使えるアームレスの『 Robin Hood SE 』も用意されています。

ペアー・オーディオ『 Robin Hood SE / Cornet1 』はこちら!


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