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[ 2017年7月11日付 ]

SPEC(スペック)『 RSA-888DT 』をレポート〜電解コンデンサー「響一」が効いたプリメインが面白い!! 〜

ハイエンドオーディオ担当の "あさやん" です。
今回は、SPEC(スペック)の話題のプリメインアンプ『 RSA-888DT 』をレポートします。

スペックは"Dクラス"アンプの特徴を生かし、実績ある前作「RSA-888」に電解コンデンサー「響一」を搭載することで新次元の "リアル・サウンド "を実現しました!


SPEC「RSA-888DT」
SPEC(スペック)が最大限引き出した"Dクラス"アンプのメリット

スペック株式会社は、2010年に元パイオニアマンが独立して創業した高級オーディオ専門メーカーです。同社が目指すのは「心を震わす、リアリズム」です。そのスペックの話題のプリメインアンプ『 RSA-888DT 』をレポートします。

アンプが入力信号通りにスピーカーユニットの振動板を正確に動かすことは、非常に難しいことです。振動板を信号の微妙な強弱に合わせて俊敏に前後させる必要がありますが、その際どうしても逆起電力が発生してしまいます。その逆起電力がスピーカーの振動板を動き出しにくく、また止まりにくくしてしまっているのです。

スピーカーのボイスコイルから発生する逆起電力は、スピーカーからアンプにフィードバックされ、アンプ内部で位相遅れを発生させます。そのためインピーダンス変動や位相遅れが発生し、その影響によりどうしても音楽信号の時間軸上で元信号との差異が生じてしまいます。

結果的には、躍動感に乏しい音楽、平面な音場、薄めの音色となってしまうのです。すなわちリアルで自然な、そして心地よい音楽再生とは程遠いものとなってしまっていたのです。

その逆起電力に強いスピーカーの駆動方式として"Dクラス"アンプが、一般的なアナログ半導体アンプに比べて原理的に優れているとされています。"Dクラス"アンプの技術自体は、別段新しいものではなく、かなり以前からあったのですが、開発当初から、"Dクラス"は音が悪いとマニアの間では定説になってしまったのでした。

それは当時オーディオ的に入念に設計された良質なデバイスが無かったからに他なりません。そこでスペックは創業時から、"Dクラス"アンプのデバイス(マザーボード)にPWM方式のインフィニオン社(元 米国IR社)製を採用しています。その採用を決定したのは、あくまでも"音"であったと同社の石見社長は述べられています。

これにより大電流を理想的な波形でスイッチングすることができ、"Dクラス"アンプのメリットを最大限に引き出すことができたのです。

スペックが採用しているPWM※方式(Dクラスには0か1のΣΔ方式もある)の"Dクラス"アンプは、パワー段はスイッチングしているものの、それは1秒間に何十万回という高速で、そのONの時間の間はアナログ的に動作しており、音声情報を量子化することはありません。よって同社のアンプはアナログ的に動作しているアナログアンプとも言えるのです。

※ONとOFFの繰り返しスイッチングを行い、出力される電力を制御します。一定電圧の入力からパルス列のオンとオフの一定周期を作り、ONの時間幅を変化(パルスの幅だけを狭くしたり広くしたり)させる電力制御方式です。

"Dクラス"アンプは、スイッチングによって電力をコントロールしますので、原理的には熱を発生しません。パワーアンプでありながら、大きな放熱機構を必要としませんし、熱を出さないので、筐体を密閉構造にすることができ、内部に埃が入ることもありません。

また、このデバイスは小型でしかも電源効率が非常に高いのが特長です。従ってアンプ部本体の容積を最小にできるだけではなく、周辺の回路やリード線も最短にでき、前述のように放熱対策も不要になることで、ノイズ発生を極限にまで抑えることができたと言います。

一方、スペックが音質を大きく左右する重要なポイントと考えているのが、製品内部に使われている各種部品です。音質効果を最大限考慮した結果。最適なコンデンサー、抵抗、コイルなどのパーツを時間と労力をかけて探し出し、それらを絶妙に組合せることで、音楽的なサウンドを実現できたとしています。そのこだわり様には脱帽です。

『 RSA-888DT 』に搭載された電解コンデンサー「響一(ひびきいち)」とは?

今回の『 RSA-888DT 』の電源部の電解コンデンサーには、新開発ニチコン製ケミカルコンデンサー「響一」が搭載されています。同社はこれにより更に動特性に優れ、心地よく音楽性あふれる "響き "を生み出したとしています。

電子部品の開発は日々行われており、オーディオ機器に使用される部品もその例外ではありません。スペックは、毎年発表される新しい部品の中から、オーディオ製品に最適なものを選択し、さらに作り込む研究もしているのです。

今回『 RSA-888DT 』に採用された「響一」は、2016年に発表されたニチコン製の電解コンデンサーで、スペックのエンジニアがその開発段階から音質評価に参加したとのことです。

「響一」はオーディオ用にレスポンスの速さを求めて、新たに低密度電解紙を開発。さらに素子止めテープにも、ニチコンの「MUSE」コンデンサーから着想を得て新規に開発したテープを採用し、コンデンサーケースも構造を見直し、鳴きを抑えることができたのだと言います。

『 RSA-888DT 』は、2013年に発売され高評価を得、数々の受賞実績のあるプリメインアンプ「RSA-888」に、このニチコン製「響一」を搭載し、チューンアップした最新の"リアルサンドアンプ"と言う訳です。

これにより前作の特徴でもあった、スピード感のある低域、ハイレゾ音源のもつ透明度の高い中高域の表現力を更に進化させたのです。

それは、動特性に優れ、歯切れよく、心地よい音楽性のあふれる "響き "であり、これにより新次元の "リアル・サウンド "を実現できたと言います。

また、前作「RSA-888」から採用されているスイッチング電源※は、"Dクラス"アンプとの相性が良いことは知られていましたが、従来あまり高い評価はされていませんでした。(※小型・軽量の電源として電子機器では広く使われていますが、アンプ用では従来型のアナログ電源が主流でした。本機に採用されているスイッチング・コントロールICは、アナログ電源に比肩しうる自然な豊かさ、かつ明快なダンピングと量感あふれる低域を併せ持つ理想的な電源です。)

スペックのエンジニアは、音の良い高品質スイッチング電源システムを開発したのです。この高品質な電源部が、どんな音楽でも余裕を持って鳴らしきる明快で量感あふれる低域、ノイズから解放された透明感の高い中高域を実現したのです。

本機は、ヴァイオリン等の楽器に使われるスプルースの単板で、ピアノの鍵盤に使用されるイタヤカエデ材をサンドイッチ状に挟み込んだハイブリッド構造の木製サイドパネル・インシュレーター(特許取得済み)を採用しています。

底面後方中央にある同じ材質の木製インシュレーターによる3点設置するというユニークな構造となっており、内部振動の減衰と外部振動の制御に貢献しているのです。さらに内部配線系もグレードアップしているとのことです。

最後に
このように"Dクラス"アンプの特徴を生かすことで横幅35cmとコンパクトな筐体を実現。さらに筐体に音の良い木が使えたことによる効果について、前述の石見社長は、音楽性たっぷりで、豊かな響きをもつ、温かなサウンドが実現できたと自信たっぷりでした。

『 RSA-888DT 』は、前作の切れ味がよくスピード感のある低域、透明度の高い充実した中高域をもつサウンドに、豊かな包容力が加わったリッチなサウンドと感じました。それが「響一」の効果かは定かではありませんが、明らかに前作より情報量が増え、充実したサウンドは、ハイエンド的な大幅なグレードアップを実感できました。

特にボーカルが出色で、生に近いリアルな温かさを感じさせ、オーディオ機器の存在を忘れさせるダイレクト感も感じました。これこそ良質な"Dクラス"アンプとスイッチング電源、そして巧みに木を使った筐体の成せる業と思います。



人気のプリメインアンプがどうしても高級化・高額化する傾向の中にあって、30万円台でこの性能を実現していることに、スペックのエンジニアの「心を震わす、リアリズム」と言う理想を実現するための底力を感じました。

蛇足ですが、長時間通電しても天板がほんのり温かくなる程度と、発熱が非常に少ないと言うことが、真夏のオーディオリスニングには打ってつけとも感じました。

(あさやん)



SPEC プリメインアンプ『 RSA-888DT 』


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