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[ 2018年4月3日付 ]

独QUADRALのAURUM 9シリーズ『 SEDAN9 』『 GALAN9 』の実力を探る!
ハイエンドオーディオ担当の "あさやん" です。
今回は、ドイツブランド QUADRAL の新しい「AURUM 9シリーズ」から、ブックシェルフ型スピーカー『 SEDAN9 』『 GALAN9 』をご紹介!
どちらも「生演奏に近いサウンド」「アーティストのありのまま」を実現しています。試聴内容もレポートいたします。

■ QUADRALの歩み

1972年創業のQUADRAL(クアドラル)は、ドイツ商工業の中心 ハノーバーにあります。創業者であるハンス・ディッター・ホフマン氏はベルリンに生まれ、大学卒業後、楽器や音響機器関連の仕事を経て、1972年に現在のQUADRALを設立。音楽や楽器に造詣の深い彼は、自ら音響機器を創造する熱い情熱を抑えきれず、その分野のスペシャリストを募り、少人数のチームでスピーカーシステムの開発をスタートさせました。

同社は1978年シャーパーというエンジニアを迎えた後、飛躍的に進化し、81年に「TITAN」の初代モデルとそのシリーズを発表。その圧倒的な低域のドライブ能力と、600Wという高いピークマージンが成し遂げた迫力ある再生音は絶賛され、このモデルの誕生によってQUADRALはドイツ・ハイエンドスピーカーブランドとしての礎を築きました。

その初代「TITAN」は、ドイツの音楽家であるバッハ、ベートーヴェンなどの雄大なフルオーケストラの再生のため、周波数特性がフラットで、十分に伸びた高域・低域を実現したモデルでした。「TITAN」は、ドイツの権威あるオーディオ誌で高い評価を受け、リファレンススピーカーとして認められました。そしてドイツ国内のスピーカーの基準ブランドの位置を確立し、ドイツのトップブランドとなったのです。

その後チーフエンジニアは、シュターク氏、そしてラケルト氏と代わりはしましたが、QUADRALのスピーカーの音色傾向や音調は一貫して変化はなく、常に進化を続けて来たのです。これこそドイツの国民性であり、それ程に音楽文化が深く浸透しているためと思われます。

前述のラケルト氏は、「ドイツの音楽ファンは生演奏を大切にし、同時代を生きるアーティストの個性を、演奏会場と同じように家庭でもリアルでストレートに体験したいと考えている。したがって、生演奏に近いサウンドを出すQUADRALのスピーカーが支持される。」のだと、その理由を述べています。

QUADRALの新シリーズ「AURUM(オーラム)9シリーズ」のラインナップは、「TITAN 9(3,500,000円)」、「VULKAN 9(2,500,000円)」、「MONTAN 9(1,600,000円)」、「RODAN 9(1,000,000円)」、そして今回ご紹介するブックシェルフタイプの『 SEDAN 9(570,000円) 』『 GALAN 9(460,000円) 』の6機種です。※価格はいずれも、税別・ペア。

新しい「AURUM 9シリーズ」の最大の特徴は、【 quSENSE 】と呼ばれるリボン型のツイーターと、低域ユニット【 ALTIMA 】の全面刷新だとしています。

■ 新開発の心臓部【 quSENSE 】


近年のリボン型で使われる例の多いボイスコイルを蒸着したプリンテッド振動板ではなく、正統派リボンとも言えるコルゲーションタイプのピュア・リボン振動板による、本格的なアルミリボンツイーターです。

そのリボン振動板は超軽量で、「同社の従来ユニットよりも、垂直方向を短く、水平方向の幅を拡げた」と言います。この音質効果は絶大で、ハイレゾのみならず、あらゆるコンテンツの楽器や声を魅惑的で質感高く再生するとともに、奥行きのある空間再現力を実現できたとしています。

また、振動板の表面積が広がったことで、再生周波数の下限を伸ばすことに成功し、低域ユニットとのクロスオーバーが理想的なものになったのです。さらにはリボン型ユニットの課題とされてきた機械的な強度も飛躍的に向上させることに成功しました。

■ 大幅ブラッシュアップされた【ALTIMA】


新開発されたリボンツイーター【 quSENSE 】の音楽再現力と音響特性に合わせて、これを支える低域ユニット【 ALTIMA 】も全面刷新したのです。

コーンには、名称の由来でもあるアルミニウム(95%)/チタン(0.5%)/マグネシウム(4.5%)を最適化した合金の振動板を採用。リボンツイーターとの応答速度のマッチングを図りました。

ボイスコイルは従来の銅線から、銅コーティングのアルミ線に変更され、線径も1.5倍となって効率と強靱さを兼ね備えることができたのです。さらに磁石とダンパー(スパイダー)を大口径化することで、余裕のある表現力も実現したのです。

また、ユニットから送り出される音を遮ってしまうセンターキャップを無くすことで繊細でダイナミックな音の再現力も大幅に向上させたとしています。ウーファーユニットにはアルミダイキャスト製のフレームを新たに開発して剛性を大幅に向上させました。

さらにドライバーのポールコアに銅キャップをかぶせることで、高調波歪と混変調歪を大幅に軽減させ、ツイーターとの一体感が高い優れた音響特性を実現できたのです。

■ その他の特徴

スピーカー端子はバイワイヤリング対応で、端子プレートの上部には3段階のトグルスイッチがあり、これによりツイーターのレベルが-2dB/0/+2dBの3ポジションから選択できます。お部屋の特性や好みによって高域を調整できます。これは最近では珍しい機能です。

ネットワークには、独インターテクニック製の高音質キャパシター、内部配線には仏リアルケーブルが使われているとのことです。

■ 試聴しました
試聴は日本橋1ばん館で行いました。
■ AURUM『 SEDAN 9 』

『 SEDAN 9 』は、高さ390mm×幅230mmの一般的なサイズのいわゆるブックシェルフ型。ウーファーは180mmの【 ALTIMA 】、ツイーターは【 quSENSE 】のリボン、クロスオーバーは2.8kHzと、リボンにかなり下の帯域まで受け持たせています。リボンは上級機の「MONTAN 9」のものとほぼ同等(『 GALAN 9 』のリボンより縦に長い)の様です。インピーダンスも8Ω、能率85dBと使い易く、中級以上のプリメインアンプなら十分ドライブできると思います。

今回セパレートアンプ※でも試しましたが、さらなるパフォーマンスを発揮し、本機の可能性を感じました。(※試聴ではプリメインアンプ以外にアキュフェーズ「C-2850」「A70」も使用しました。)

サウンドは、高域は澄んで伸びきり、非常にヌケが良く、低域はブックシェルフとは思えないスケール感あり、フルオーケストラの濃密感、重量感、迫力は素晴らしいものでした。また、包み込まれるような抱擁力があり、滑らかでしなやか、かつ余計な音がまとわりつかないスッキリ感が心地よく、自然に耳に入ってきました。音場も広く深く立体的なものでした。

ボーカルは実にグラマラスで、女声は艶やかで温かみがあり、男声は体型を感じさせる程リアルで、太く迫力があるものでした。さらに口笛(Livingston Taylor/Ink)の伸びやかさは絶品でした。ギターは厚みに適度な柔らかさと潤いが加わり、立ち上がりもしっかりし指で弾く感じが実にリアルでした。ピアノは厚みを感じさせつつもヌケは良く、低域の伸びがピアノの大きさを実感させました。

■ AURUM『 GALAN 9 』

一方、シリーズ最コンパクトの『 GALAN 9 』は、『 SEDAN 9 』に比べ高さで60mm、幅で20mm小さくなっていますが、パッと見あまり差は感じられません。能率は同じ85dBですがインピーダンスは4Ω、クロスオーバーも2900Hzと若干差があります。これはリボンツイーターの差であり、本機のリボンは上級機「RODAN 9」と同等の様です。

サウンドは正直この大きさのブックシェルからは想像できないスケール感で、最初に聴いたフルオーケストラの迫力に圧倒されました。全域で厚みがあり、特に重低音は深く膨らみを感じさせるものでした。ギターの木質感もキッチリ再現されつつ、スピード感も十分でした。とにかく音数が多く、ジャズライブでの骨太のリアル感は出色でした。


■ 最後に
『 SEDAN 9 』『 GALAN 9 』のサウンドは比べてみると、かなりの差といいますか、狙いが違うように感じました。いずれも大きさからは想像出来ないスケール感や、リアル感を再現でき、特にQUADRALが狙っている「雄大なフルオーケストラ」や「生演奏に近いサウンド」がこのクラスのスピーカーで出てきたことには正直感動しました。

『 SEDAN 9 』は音楽性を重視したクラシックを音の良い会場で聴くようなゆったり感があります。『 GALAN 9 』は写実性を重視し、実にリアルなゴリゴリとした押し出し感は、ジャズやポップスの生々しさの再現には打ってつけと見ました。両機は違う意味での「生演奏に近いサウンド」「アーティストのありのまま」を実現しています。

QUADRALは『 SEDAN 9 』『 GALAN 9 』でも、ドイツ・ブランドならではの重圧感、濃密感、そしてリアル感をブックシェルフで実現したのです。これぞ"Made in Germany"の面目躍如と言えます。 (あさやん)


QUADRAL『SEDAN9』『GALAN9』

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