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[ 2019年1月8日付 ]

 上杉研究所が放つ「進化型管球アンプ」 〜 伝説の交流点火動作 直熱三極管パワーアンプ『 U-BROS-300AH 』

ハイエンドオーディオ担当の "あさやん" です。
今回は、直熱三極管パワーアンプの上杉研究所『 U-BROS-300AH 』シリーズを取り上げます。さまざまなタイプのスピーカーに対応する『 新生ウエスギアンプ 』です!


■ まずは「真空管」のお話から
真空管には、「直熱型」と「傍熱型」があるのをご存知でしょうか。真空管は元々、電球をベースに誕生したため、熱電子を放射する陰極(カソード)は直熱型(フィラメント)でした。

しかし、直熱型では避けられないハム雑音を減少させるため開発されたのが、傍熱(間接加熱)型でした。酸化物を塗布したニッケル・パイプの内部にヒーター・ワイヤーを入れて交流で加熱すると、パイプ(カソード)の表面から熱電子が放出されるため、ハム雑音から解放され、ラジオなどに交流電源が使用できるようになったといわれています。

音質的な魅力は直熱型の真空管アンプに分があると言われ、聴き疲れのない柔らかさがあり、間接音が豊かで、音量を絞っても音が痩せず、音量を上げてもうるさくならないナチュラルさが持ち味です。とりわけ、直熱三極管アンプには「繊細感」があり、「倍音成分」が心地よく滑らかで、生より生々しい何かを感じさせるところが大きな魅力と言われています。

しかし、サウンドは魅力的ではあるものの、どうしても直熱三極管のハム雑音が気になってしまいます。そこで上杉研究所はある方法を考え出したのです。

従来から上杉研究所は、直熱三極管300Bの魅力を引き出した、シングルA2級動作のモノラルパワーアンプ「U-BROS-300」を発売していました。この「U-BROS-300」も、一般的に採用されているフィラメント雑音発生の心配のない直流電源によって点火(直流点火)されていました。

ただ、直流点火は残留雑音は低下するものの、どうしても音が痩せ気味になる傾向があるといわれています。一方、フィラメントの加熱用電源として、ACライン電源を変圧し、そのまま用いる交流点火での音質的な魅力については、半ば伝説的に語られてきました。

どうしても交流点火で動作させた場合、雑音を低く抑えることが困難であるため、これまで製品化されたことはあまりなかったのです。

そんな中、この交流点火による究極の直熱管アンプの製品化にチャレンジしたのが上杉研究所という訳です。その手法は従来技術だけでは不可能な、現在の先端制御技術を駆使して実現できたのです。

それではその『 U-BROS-300AH 』シリーズについて見てまいりましょう。

■ 世界初の交流点火無帰還300B シングル
その直熱管の交流点火は、上杉研究所とクロステックラボラトリとの共同開発による最新のDSP(Digital Signal Processing)技術を使うことで、不可避的に生じるハム雑音をリアルタイムで消去することに成功したのです。

直熱管のフィラメントハム雑音をフィラメント電源波形を入力するシステムの入出力応答と捉え、その伝達特性をセットごとに計測し、この伝達特性に基づいて、リアルタイムにフィラメント電源波形から消去信号を生成し、直熱真空管のフィラメントに注入することで、フィラメントハム雑音を打ち消し消去する技術(特許申請中)です。

この技術によるハム雑音消去信号は、オーディオ信号とは完全に絶縁されており、干渉しないと言うことです。またこの消去信号がオーディオ増幅回路に流れ込むことも無いとのことです。

全てのデジタル処理を1チップのDSP(A/D、D/A内蔵)マイコン内で行い、インターフェースポートは全てアナログ信号で動作するため、デジタル信号は外部に出力されることは一切あリません。

まさに、フィラメントハム発生のない直熱真空管アンプの完成ということになります。

300Bをはじめとした直熱真空管、それ自体が交流点火を前提に開発されていることから、この独自技術により、従来聴くことのできなかった、直熱真空管本来の音を取り戻すことができたとも言えるのです。

■ 300B シングルで現代オーディオに通用する駆動力を実現
高品質真空管と万全の保護回路による動作点の監視の下、A2級動作(※)により、300B シングル出力アンプとしては大出力の12Wを安定して獲得。(※一般的なA1級動作よりも、グリッドをプラス領域まで強力に駆動することで大出力を得られ、特に三極出力管でその効果が大きい。)

直熱三極管300B シングル出力アンプが有する魅力と充分なスピーカー駆動力を備えて、現代オーディオに通用するワイドレンジ、高ダイナミックレンジを実現できたのです。パワフルかつ情感あふれる未体験のサウンドが広がります。

■ 従来機U・BROS-300 からの継承技術及び機能(一部新規)

  1. 信号回路
    300B 真空管はカソードフォロアドライブ(真空管が飽和する程の大出力を出すと発生する特有の非線形な現象を回避)に加え、固定バイアス動作(最大出力が連続しても歪みが耳に付きにくい)を行うことで、同シングルアンプとしては高出力の12Wを実現しました。
  2. 電源回路
    出力段への供給電源は専用のチョークトランスと大容量電解コンデンサーで構成し、低雑音化と音質向上に貢献しています。
  3. 保護回路
    300B の定格動作電流を20%超えた状態が2秒間継続したとき電流をカットオフする保護回路を装備し、貴重な300Bを守ります。電源ON 後の通電に伴い各真空管の動作点の制御を順次行い、真空管のウオームアップ過程での動作点を最適に保持します。
  4. トランス
    電源トランスは徹底した低磁束密度動作、チョークトランスは業界で初めて分割巻きを採用、出力トランスは橋本電気製のシングルアンプ用で最大容量の出力トランスをベースに同社と共同開発しています。
  5. 機能
    バイアンプ及びマルチチャンネルアンプ用の機能、300B 真空管のプレート電流監視用メーター、レベルコントロールボリュームならびにカップリングコンデンサーをバイパスするダイレクト入力端子を装備しています。

■ ウエスギアンプの設計理念を継承

  1. 1.6mm厚亜鉛メッキ鋼板による高剛性シャーシ及びサブシャーシ構造により、無共振・無振動・無干渉構造を採用しています。
  2. 初段並びにドライバー管には、松下電器産業製12AX7A、並びにGE、フィリップス製軍用12AU7を採用しています。いずれも真空管全盛時代に先進工業国で生産された貴重な高品質真空管です。
  3. 電気回路、基幹部品には信頼性の高い国産メーカー品を採用しており、余裕度の高い動作設定と相まって、定評の長寿命、高信頼設計としています。
  4. ハムキャンセルプロセッサーなどの一部のプリント基板を除き、40余年のキャリアのある職人による芸術的ともいえる手配線を継承しています。

■ 新生ウエスギアンプの完成
今回発売された『 U-BROS-300AH 』シリーズは、PSVANEのWE300B(Western 300Bを精密に復刻した中国製)を搭載した「U-BROS-300AHPS」、高槻電器工業製のウエスギ仕様「U-300B」を搭載した「U-BROS-300AHTK」、それに300Bを非搭載とした「U-BROS-300BAHL」の3モデル構成となっています。

上杉研究所が新体制になって約7年。真空管アンプは継承しつつも、某メーカーで豊富な経験を持つ現設計者の新しい発想を具現化したのが『 U-BROS-300AH 』ともいえます。

増幅素子はあくまで真空管でありながら、それをサポートする回路には半導体やDSPなどのデジタル技術を加えることで、世界初の交流点火技術を投入。音質評価の高かった前作を、明らかに現代サウンドにも通じる懐の深いアンプとして『 U-BROS-300AH 』を完成させたのです。

『 U-BROS-300AH 』は前作よりパワー感、ドライブ感が増しており、ハイスピード(真空管が半導体より原理的にハイスピードであるという説の通り)で、ナチュラルなサウンドを手に入れたのです。

従来の真空管アンプの持つイメージ(まったり感、ふっくら感)とは次元の違う、高品位で、充実感、透明感に溢れた、世界で唯一の直流点火型真空管アンプの誕生です。

最新型を含め様々なタイプのスピーカーに対応する【 新生ウエスギアンプ 】の完成です。(あさやん)



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