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[ 2019年 7月9日付 ]

 まだやることがあった! アキュフェーズ 純A級ステレオ・パワーアンプ『 A-48 』

こんにちは、ハイエンドオーディオ担当の "あさやん" です。

アキュフェーズのパワーアンプは、AB級3機種(内モノラル1機種)、純A級4機種(内モノラル1機種)という豊富なラインナップを揃えています。その中でも現在同社の主力となっているのは、純A級ステレオパワーアンプ3機種です。そして、その中堅を担うのが、今回ご紹介します新製品『 A-48 』です。


■ 初代「A-45」の誕生について
「40」番台のパワーアンプは、2006年発売の「A-45」から、2011年「A-46」、2015年「A-47」と続きました。しかし実際には1993年発売の「A-50」が「A-50V」、「A60」に、一方1995年発売の「A-20」が「A-20V」、「A-30」に、それぞれバージョンアップを重ねて来ていた純A級パワーアンプでしたが、その中間を埋める形で登場したのが初代「A-45」でした。

その初代「A-45」は、当時「A-60では大きすぎる」、「A-30のパワーをもう少しアップして」とのユーザーの熱い要望に応えて誕生したものでした。現時点では上位機が「A-75」であり、下位に当たるのが「A-36」なのですが、実際『 A-48 』は、性能的にも価格的にもベストポジションのパワーアンプです。

以前にも、書いたことがありますが、私自身オーディオを本格的に始めた際の、最初に使ったプリメインアンプがYAMAHA「CA-1000」で、このアンプはパワー部にA級動作とB級動作を切り替える機能があり、私はそのA級サウンドが、自身のオーディオの原点になっている気がします。

その後、ミュージカルフィディリティーの「A-1」やラックスの「L-550」などのA級アンプにも食指は動かされましたが、購入には至っていません。しかし、A級アンプに対する憧れは今も持ち続けており、私にとっての最後のアンプ(まだ少し先になりそうですが)は、A級アンプだと心に決めています。

純A級アンプの魅力は何と言っても、その甘美で透明感あるサウンドでしょう。滑らかな肌触りの良さやしっとり感は格別で、これはB級アンプでは味わえない世界です。私の好きな女声ボーカルやクラシックのストリングスのパフォーマンスを、最高度に引き出してくれるのがA級アンプだと思います。

それでは、日本橋1ばん館での試聴結果も交え、新製品『 A-48 』を従来機「A-47」との違いを中心に見てまいりましょう。『 A-48 』は昨年(2018年)7月に発売された純A級ステレオパワーアンプの最高峰「A-75」の開発で培ったテクノロジーやフィーチャーを、可能な限り下ろしてきて完成させたのです。

■ 更なる低雑音化に挑戦 〜わずか1dB、されど1dB!
『 A-48 』は、ゲインMAXでのS/Nが117dBと「A-47」の116dBより1dB向上しています。前作では信号入力部にオペアンプICを採用していたのですが、本機では「A-75」と同じ回路構成の低雑音のディスクリート・アンプを搭載し、ゲイン配分を信号入力部:22dB、電力増幅部:6dBとすることで、雑音性能の向上を達成できたのです。この僅か1dBが、数字以上に非常に大きな効果となって音に現れています。

■ A級動作パワーアンプ 〜なんと電力増幅部は「A-75」と同じ回路
アンプの最大の役目はスピーカーが持っているポテンシャルを100%引き出すことです。そのために必要なのは余裕です。スピーカーのインピーダンスは音楽によって激しく変動します。そのインピーダンスの影響から逃れるためには定電圧駆動が必要です。

しかし「電圧(V)=電流(I)×抵抗(R)」のオームの法則に従えば、インピーダンスに反比例する電流の供給が必要で(例えば:1Ωでは8Ωの時の8倍もの電流が必要)、こうすることで、低インピーダンス負荷時でも安定してスピーカーが駆動できるのです。

そのため『 A-48 』では、新規に採用したFairchild製の大電力オーディオ用パワーMOS-FETを、6パラレル・プッシュプルでA級動作させており、1ペア当たりのパワー負荷が1/6に軽減されたことで、A級動作で重要な小電力領域での動作が安定し、特性も向上したのだとしています。

さらに、トロイダルトランスを新型の大型高効率タイプとし(「A-47」より高効率化)、フィルターコンデンサーも(「A47」の56,000μFから60,000μFに)大容量化したのです。結果、出力は45W/8Ω、90W/4Ω、180W/2Ω、360W/1Ωと数字上は「A-47」と同じですが、明らかに余裕は違います。

■ ダンピングファクター 〜スピーカーをねじ伏せる?
『 A-48 』も最近のアキュフェーズのアンプ群と同様、出力インピーダンスを徹底的に下げることで電流供給能力を上げ、インピーダンス変動やボイスコイルで発生する逆起電力に打ち勝つことを目指しています。前作「A-47」のダンピングファクター(DF※)が600で、これでも凄い数字なのですが、本機のDFは800と何と1.3倍になったのです。(※DF=スピーカーのインピーダンス÷アンプの出力インピーダンス)

■ 徹底した保護回路とロス低減策 〜そこまでやるか?
『 A-48 』では、従来機同様、プロテクションには酸化による接点不良がなく長期信頼性に優れた「MOS-FETスイッチ」を採用しており、音楽信号が機械的接点を一切通らないため一層の音質向上に寄与しています。

さらに、定格電流が非常に大きく(100A)、ON抵抗が非常に低い最新の「低オン抵抗MOS-FET出力リレー」を採用し(オン抵抗が「A-47」の2.3mΩから1.3mΩに低減)、さらにロスを減らしています。

そして、電力増幅部の出力配線を最短化し、スピーカー端子の直近からNFBを掛けることで端子位置での出力電圧を理想的に制御するとともに、スピーカーターミナルも基板に直付けしてロスを無くしています。

また、「A-47」にあった異常検出(直流検出、過温度検出)に加え、過電流検出機能が追加され、過電流を検出すると、出力リレーを切断すると同時にメーターランプを点滅させて異常を知らせてくれます。一旦電源を切り、スピーカーケーブルのショートなどの原因を取り除けば正常復帰します。

■ デザイン上の見た目の違いは?


『 A-48 』の高感度針式パワーメーターは、従来の-40dBに-50dBの指標を追加したことで、-60dBの小音量時からメーターが振れるようになっています。天板もダークブラウンに染色された厚手のアルミヘアライン仕上げとして高級感がアップ。ヒートシンクを新塗装にしたり、スピーカー切替をロータリースイッチ化するなど、細部にもこだわっています。

■ 『 A-48 』のサウンドは日本橋1ばん館で「A-47」との比較で確認
まず両機を交互に鳴らしてみて気付いたのは、音が澄んで、透明感に明らかな違いがあることです。これこそロスの徹底排除の賜(たまもの)だと確信しました。またサウンド全体が軽やかに弾け、伸びやかさも確実に向上していました。これはDFをはじめとしたドライブ力向上が効いているのでしょう。

クラシックやボーカルの無音部分の静けさは圧巻で、S/Nの良さは空間感を、微細な響きは音楽の描写力を向上させていると実感しました。また細かな部分の再現性も確実にアップし、とにかく音数が多く感じられたのです。中低域も前作より厚くなり、全体にダイナミックで豊かに感じられました。『 A-48 』の方が音楽を熱く聴けました。

■ 最後に
正直『 A-48 』の音を聴くまで、純A級アンプの良さは「A-47」で十分味わえますし、私にとっては満足なものでした。そして「本当にまだやることがあるのだろうか」と言うのが本心でした。しかし、それがあったのです。重量がわずか900gアップで、価格は約5万円アップ。前作と『 A-48 』のどちらを選ぶと聞かれたら、自信を持って言えます。迷わず『 A-48 』です。


今回ご紹介した アキュフェーズ『 A-48 』はこちら