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[ 2019年 7月23日付 ]

 真空管『 6BQ5 』搭載のかわいいアンプ3機種

こんにちは、ハイエンドオーディオ担当の "あさやん" です。
今回は「暑い季節にこそ、熱い真空管アンプを!」をテーマに、真空管『 6BQ5 』を搭載したトライオードのかわいいアンプ3機種をご紹介いたします。


■ 真空管『 6BQ5 』について
真空管『 6BQ5 』は、1953年にヨーロッパで「EL84」として誕生し、1955年頃に『 6BQ5 』として、米国EIA規格で登録されました。

この『 6BQ5 』を搭載したアンプとして有名なところでは、オーディオ黎明期の1962年に発売の銘機LUX「SQ5B」。近年では、2013年発売のLUXMAN「LX-32u」(生産完了)や、真空管ビギナーに人気のBUTLER「Vacuum 6W MK2」。さらに、今も品切れを起こすほどの人気商品で、2018年発売のLUXMAN「SQ-N150」。そして、今年2019年4月に登場したSoundWarrior(城下工業)「SWL-AA1」と、『 6BQ5 』は60年近くにわたって使われ続けています。

マニアに人気のある真空管KT88や300Bは大きくて見栄えが良く、いかにも真空管という存在感がありますが、『 6BQ5 』は比較的地味な存在です。しかし、『 6BQ5 』を使った小出力のアンプの音は、音の良さではずっと以前から定評がありました。

その『 6BQ5 』を使ったアンプは、昔から優しく、滑らかで、聴く人を疲れさせないサウンドを出すのだといわれてきました。そんな歴史ある『 6BQ5 』を使ったアンプを今も供給し続けてくれているトライオード(TRIODE)の『 6BQ5 』搭載 人気プリメインアンプ3機種(実質2機種)の魅力に迫ります。

■ 真空管プリメインアンプ『 Ruby 』、真空管プリメインアンプ『 Pearl 』

▲真空管プリメインアンプ『 Ruby 』


▲真空管プリメインアンプ『 Pearl 』


『 Ruby 』は2012年、それまでの鉄の塊のような真空管アンプに挑戦するように、以下のようなコンセプトのもと製品化されました。
  1. 「オーディオは男だけのものでは無い!」という概念から生まれ、小型でオシャレなデザイン感覚で設計
  2. プライベートルームやベットルームの片隅でセンスの良い音楽を楽しむ、現代の癒やしの新しい音楽スタイル
このように『 Ruby 』は、明らかに女性ユーザーをターゲットにしており、それまでの真空管アンプにはなかった斬新な考え方で開発されたコンパクトで可愛い製品です。そのオーディオ製品には珍しいレッドカラーの筐体も魅力的で、発売から7年が経過した今も人気を保ち続けています。もちろん、男性に・・・。

さらに今年(2019年)になって、筐体をパールホワイトにした『 Pearl 』も加わり、コンパクトでお洒落な真空管プリメインアンプ「ジュエリーシリーズ」としてラインナップされました。

使用真空管は、入力段とドライバー段が同じ双三極管の12AX7、終段にはMTタイプの5極管である『 6BQ5 』を、真空管の特色を生かすため、あえてシングル回路を採用して、余裕を持たせて定格出力を純A級 3W+3Wとしています。真空管は、自己バイアスで動作しています。

入力はRCA 2系統、スピーカー端子はバナナにもYラグにも対応しており、いずれも金メッキ削り出しの端子を採用、手抜きはありません。また、近年は必需でもあるヘッドフォン端子は6.3mmタイプを装備しており、ヘッドフォン回路ももちろんICではなく『 6BQ5 』真空管から出力されます。

真空管を下部から照らす照明には『 Ruby 』のオレンジ色から、『 Pearl 』ではパールホワイト塗装に合わせて、ブルーのLEDに変更しています。

出てくる音は到底3W+3Wと思えないしっかりしたもので、フロアタイプのスピーカーも朗々と鳴らしました。とにかく穏やかで、キメの細かなサウンド、爽やかな透明感に、ほのかな温もりが感じられ、それは小出力管でしか味わえない独特の世界です。力ずくでグイグイと迫ってくる大出力管のアンプとは対照的なサウンドです。

小型ブックシェルフスピーカーとの組み合わせ、一人静かに音楽に浸るならこれで十分です。照明を落としたお部屋で、淡い真空管の灯りを見ながら聴く女声ボーカルや小編成のクラシックは、絶品です。

■ 真空管プリメインアンプ『 Luminous 84 』


『 Ruby 』の非常にコンパクトな横幅190mmに比べると、一回り大きな305mm(同社製品の標準横幅は345mmですので若干小さめ)です。しかも、名前の「ルミナス」の「はでやかなイメージ」とは違い、トライオードの上級機TRXシリーズなどに通じる、本格的でスタイリッシュなデザインの真空管アンプで、『 Ruby 』と違い、こちらは男性的です。

真空管は、初段が12AU7×1、ドライバー段が同×2、終段は『 Ruby 』と違い "6BQ5" を左右2本ずつ、UL(ウルトラリニア)接続してAB級プッシュプル動作させ、11W+11Wの出力を得ています。出力管のバイアスは、無調整で安定性に優れた自己バイアス方式としています。

入力はRCA 3系統に加え、MMカートリッジ対応のフォノイコライザー(半導体式)も搭載して、アナログレコードも楽しめ、万全です。出力にはスピーカーが1系統とヘッドホン出力があり、ヘッドフォン回路はもちろん真空管で、真空管アンプの魅力が十分楽しめます。プラグは6.3mm標準プラグ対応です。

確かに、本機の出力管にはミニチュア管が採用されており、伝統的な三極管300BやKT-88・6CA7などのビーム管、五極管を使った他のトライオードの真空管アンプに比べると、デザイン的には少し迫力に欠けるのは否めません。

しかし一方で、ミニチュア管『 6BQ5 』ならではの小気味の良い軽やかなサウンドを評価する声もあり、何より大袈裟にならないコンパクトさと、レトロな雰囲気を併せ持つデザインの良さに惹かれる音楽ファンも多いのではないかと思います。

出力の11W+11Wは何とも貧弱に思われるかも知れませんが、ある意味では三極管のシングルよりパワフルで、ワイドレンジでもあります。スピーカーが余程の超低能率でない限り、十分な音圧は得られます。しかも出力トランスを介してスピーカーをドライブすることで、逆起電力の影響も回避し確実に制動できるため、しっかりした安定感の伴った低音も実現しています。

音場感こそハイエンドクラスのアンプには及ばないものの、濃密でエネルギーに溢れたホットなサウンドが、このクラスのアンプで得られることには正直驚かされます。とにかく音楽を楽しく聴かせることに関しては、同価格帯のトランジスタアンプを大きく超えていると思います。

期待通り、特に楽しいのはボーカルでした。眼前に生身のボーカリストを感じる程、温かく湿り気を伴ったボーカルは出色で、ダイナミックレンジを狙った大出力アンプではない、小出力の真空管アンプならではと感じました。

ジャズもなかなか魅力的で、汗が飛び散る脂ぎったサウンドとは対照的な、細身な音像表現ながら分離が抜群で、ソロ楽器が自然に浮かび上がる印象的なものです。大編成のクラシックもスケール感たっぷりに鳴らしきったのには驚かされました。

アナログレコードでも真空管ならではのたっぷり感のある豊潤なサウンドを楽しめることから、初心者や女性の音楽ファンはもちろん、酸いも甘いも知り尽くしたオーディオファンのサブシステムとしてもお勧めしたいと思います。

■ 最後に
『 Ruby 』『 Pearl 』は、お洒落に一人静かに、『 Luminous84 』は本格的に、でも堅苦しさを感じることなく、世の中の嫌なことを忘れ、ただゆったり、ひたすら好きな音楽に浸っていたい・・・。そんな気分にさせてくれます。

省エネとは真逆ですが、暑い季節にこそ、熱い真空管アンプを冷房のギンギン効いたお部屋で聴きたいですね・・・。
(あさやん)


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