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[ 2019年 10月 15日付 ]

 SPEC 次世代プリメイン『 RSA-M88 』の《 リアルサウンド 》に迫る!!

こんにちは、ハイエンドオーディオ担当の "あさやん" です。
本日は、オリジナリティ溢れる、PWM方式Dクラスにアナログ電源を搭載した、SPECの次世代プリメインアンプ『 RSA-M88 』の《 リアルサウンド 》に迫ります。


■ SPEC(スペック)について
本題に入る前に、まずは《 リアルサウンド 》のメーカーである『 SPEC 』の生い立ちとメーカーとしての考え方から…。

SPECは2010年1月6日、元パイオニアの石見 周三氏(元パイオニアマーケティング 取締役営業本部長)によって設立されました。来年(2020年)に創業10周年を迎える若いメーカーです。

石見氏を含め、SPECのメンバーは全員パイオニア出身で、彼らは良い意味でパイオニアのDNAを持っていることが自分たちの強みだとしています。創業当時からパイオニアの音とは違う次元で、自分たちの思うリアルな音を求めて、マニアの世界ではなく音楽を真に楽しめるオーディオを作りたいとの思いがあったといいます。

当初から《 リアルサウンド 》を目指し、それは長く聴いても聴き疲れしない、小さな音でも低域を含めて実在感があり、大きな音でもうるさく感じない、そんな音《 自然界で聴く音 》だったのです。

どうすればリアルなサウンドのアンプを作ることができるのか?

SPECのメンバーが選択したのが、アナログアンプにデジタルのチップを搭載したPWM(パルス幅変調)という増幅方式で、今も同社のアンプの根幹を成しています。

PWM回路によるDクラス増幅とは、入力されたアナログ信号を搬送波に乗せることでパルス化した上で増幅し、最終的にローパスフィルターで搬送波を除去して、通常のアナログ増幅より高効率で大出力を得ることができる増幅方式です。

ただ、PWM方式は効率は良いものの音はイマイチ、というのが当時の常識でした。しかし、同社はPWM方式に賭けたのだといいます。

PWM方式のアンプで最も重要なのは、終段に使うローパスフィルターのコンデンサーであるとの考えから、良質なオイルコンデンサーとマイカコンデンサーを発見し、第一作目の「RSA-F1」に搭載し、発売に至ったのでした。

製品投入当初は、デジタルアンプというだけで拒絶反応を起こすユーザーも多かったそうです。しかし、最近では実際に音を聴いて、その《 リアルサウンド 》の魅力を理解してくれるオーディオ&音楽ファンが増えてきたのだといいます。

同社は、既存の高級ブランドとは違う、国内での立ち位置を目指しているそうです。

SPECは、現在では世界36カ国に取引先があり、特にイタリア・ポーランド・フィンランド・フランス・オランダ・オーストラリアなどが好調だそうで、アメリカ・タイ・台湾・インドネシア・韓国では安定的に動いているとのことです。それほどに、海外では注目されているブランドなのです。

SPECのアンプは、その電源構成によって2系統に分けられます。一つは前述の「RSA-F1」から続く、伝統的なアナログ電源回路を搭載したモデル。もう一つは、現代的なスイッチング電源回路を搭載した「RSA-888」から始まるモデルです。

前者は、アナログらしい味わい深い落ち着いたサウンドであるのに対し、後者は、切れ味の良い若々しいサウンドを狙っているといいます。

また、SPECのアンプの外見上の最大の特長は、筐体にスプルース(米唐檜:ベイトウヒ)という木材を使っていることです。

発熱のあるアンプには、超高級機を除いて木材は余り使われていませんが、そこは発熱のないPWM方式ならではなのです。

スプルースはピアノの響板やバイオリンなどにも使われ、低域を減衰させず、高域の不要共振を減衰させるという独特の性質があるそうです。

SPECではアナログ電源のモデルには底面に使用し、スイッチング電源のモデルは側面に脚部を兼ねる形で使っています。これによってPWM方式ながら、温かみのあるリアルなサウンドを引き出すことができているのです。

同社は言います『 SPECの音は自然な音、決してその軸はぶれません 』と。

スピーカーとスピーカーの間に鎮座して聴くオーディオではなくて、リラックスして自由に聴け、移動しながらでも同じバランスで聴こえるアンプ。それが出来るのはアンプの力が強く、音を制御できるからだともしています。

■ 次世代プリメインアンプ『 RSA-M88 』とは
SPEC『 RSA-M88 』は、DクラスにRコア電源トランスを用いたアナログ電源を搭載し、SPEC独自技術を投入した次世代アンプです。

アンプのパワー段には、使い慣れた米International Rectifier(IR)製デバイスを用いた、ドライブ能力の高いPWMスイッチング方式を採用しています。いわゆる、PWM方式Dクラスにアナログ電源を搭載したアンプです。

3極管真空管アンプの中高域の繊細さに、半導体のウーファーを制御する駆動力の高さを兼ね備えた動特性を実現したとしています。

こちらも定石通り、ベースシャーシにはスプルース(オーストラリア産の積層ソリッド材)を、インシュレーターには今や貴重となった北海道産イタヤカエデを採用しています。これらの材料と構造によって筐体の振動特性をコントロールすることで、楽器のような自然な響きを目指しているとしています。

本機の最大の「肝」ともいえるところが、このクラスの同社製品としては初めて電源部に、音質評価の高いコンデンサー《 響一(ヒビキイチ) 》を採用し、オイルコンデンサーとの相乗効果もあって、余韻の美しさと力強さを両立させたチューニングをしているのです。なお。《 響一 》はニチコンとの共同開発です。

一方、ノイズ対策は各ブロックにシールドを施すとともに、シャーシの内側に同社の上級機同様、ECM(電波吸収塗料)コーティングを施し、有害な外部からの電磁波を吸収することで、中高域の透明度の高い音楽再生を目指しています。ちなみに、ECMはステルス戦闘機の塗装にも使用されています。

そしてもう一つの特長は、《 リアルサウンド 》を提唱するSPECの「ピュア・ダイレクトシステム」です。

これは従来のプリメインアンプでは、ソース信号を音量調節してからパワーアンプに送り込んでいました。これではパワーアンプはゲインが高いため、ソース信号をかなり絞る必要がありました。これではどうしても微小な信号が失われてしまいます。

これに対しSPECのアンプは、パワー段の直前にアナログ電子アッテネーターを置いて、ソース信号を減少させずにパワー段で音量調整しています。この「ピュア・ダイレクトシステム」は、伝送時のレベルが大きい方が微小信号の欠落が少ないという考えに基づたものです。

そして本機のデザインは、セレクタースイッチとボリュームを大型の同形として左右対称の高級感のあるものとなっています。特に、セレクターとボリュームノブの周囲を後ろから淡く光らせており、照明を落とした場合には落ち着きのある電球色で、贅沢な気分にもさせてくれます。

入力はライン専用(XLR×2、RCA×3)で、レベル固定のパワーアンプモードにも設定が可能です。スピーカー端子は1系統のみ、最大出力は120W×2(4Ω)と十分です。本体にはリモコン機能はありませんが、別売の専用リモコン受信機とリモコンユニット(RSR-1)で音量調整が可能になります。

■ さて、サウンドは?
私は、過去に聴いたSPEC製品のサウンドはいずれもクセが少なく、素直で透明度の高いサウンドというイメージを持っていました。

しかし、『 RSA-M88 』は少し違いがありました。厚みのある良質の真空管アンプにも通じる滑らかなサウンドなのです。また、真空管では叶わないS/Nの良さとスピード感を合わせ持っており、音楽を大いに楽しませてくれました。

もちろん従来機同様、ヌケの良い響きの豊かさは健在で、私にはSPECアンプに新たな魅力が加わったと感じました。

特に女声ボーカルの柔らかさ豊潤さは格別でした。サウンド全体の肌触りの良さや豊かな響き、アナログ的で適度な中低域の厚み、しっかりした音像は新しい時代の音を感じさせてくれました。

音源の100%をパワーアンプに入れて、100%のままで聴く。それがSPECのいう『 ピュアダイレクト 』です。「製作者の意図や思いをすべて聴く人に伝える。」それがSPECが、自社を単なるアンプメーカーではなく、《 リアルサウンド 》のメーカーだという所以です。
(あさやん)


今回ご紹介した『 SPEC RSA-M88 』と、専用リモコンはこちら


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