カテゴリから選ぶ

[ 2019年 12月 10日付 ]

 MAGICO(マジコ)が世に問うブックシェルフ『 A1 』。その完成度の高さを探る!

こんにちは、ハイエンドオーディオ担当の "あさやん" です。
これまで数百万円の超ハイエンドスピーカーばかりだったマジコ社から、驚異的な低価格の2ウェイ・密閉型ブックシェルフスピーカー『 A1 』が登場。本日は、その完成度の高さを探ってまいります。



■ 高級オーディオブランド「マジコ」とは?
マジコ社(MAGICO, LLC、Hayward, CA USA)は、現代のスピーカー設計における可能性を徹底的に追求するため1996年、Alon Wolf(アーロン・ウルフ)氏によって創立されました。先進的なカーボンナノチューブのコーン紙を採用したドライバー、ベリリウムツィーターなど、すべて自社開発。キャビネットは5軸切削機器によって、航空機グレードのアルミニウム合金から作り出されています。

昨年(2018年)、それまで数百万円の超ハイエンドスピーカーばかりだったマジコ社から、比較的リーズナブルな価格の3ウェイ・密閉型トールボーイスピーカー『 A3 』が発売され、にわかに注目を集めたのはまだ記憶に新しい所です。私も当時このコーナーで、その素晴らしさを次のように記しています。

解像力・密度感を維持したままで、この美しいサウンドを百万円台で実現できたことに、MAGICOの技術力の凄さ・底力を実感させられました。これは想像を遙かに超えるレベルでした。決して数百万円でもおかしくない、まさにハイエンドサウンドで、幅広いオーディオファイルが導入可能な "M" マークを有するMAGICO製スピーカーです。ちょっと手を伸ばせば届く、MAGICO『 A3 』の登場です。

そして今回、そのマジコから驚異的な低価格の2ウェイ・密閉型ブックシェルフスピーカー『 A1 』が登場。その完成度の高さを探ってまいります。日本橋1ばん館での試聴結果も交えレポートします。

■ MAGICO『 A1 』の完成度の高さをチェック
◆ エンクロージャー

まずは見た目の想像を超えた1台 20.4kgのエンクロージャーです。厚みが1cm以上あるアルミ材(同社Qシリーズ用に開発されたエンクロージャーと全く同じ "6061 T6" 航空機グレードのアルミニウム)を使って、強固な密閉型エンクロージャーを構成しています。このエンクロージャーこそ、マジコ製スピーカー共通で、マジコ・エンジニアリングの代名詞とも言えます。

内部構造は、ツィーターとウーファーの間に振動を低減するためのブレース構造(補強材)のアルミ・フレームを使用し、更に天板と底板にも同じフレームを重ね合わせることで、徹底的な振動対策をしています。外観はブラシ加工を施された”ブラックアルマイト”スキンと呼ばれる外装材で、ボルトが一切見えないこだわりもマジコならではです。


◆ ツィーター

『 A3 』にも搭載されている28mmベリリウム振動板のドーム型です。同社のフラッグシップ "Mシリーズ" のツィーターの形状に基づいて、本機のために最適化されたドーム形状を採用しています。強力なネオジウム・マグネット磁気回路は、ウーファーの背圧の影響を受けないユニークな内部形状の堅牢なバックチャンバーに収容され、最新のダンピング素材により共振を低減し、ツィーターの動的能力を飛躍的に向上させています。

CEOであるアーロン・ウルフ氏は、同社の製品開発は測定のみに頼らず、聴感上の極わずかな不快音まで徹底的に排除していると言います。結果、ボイスコイルの正確なストロークに加え、超低歪みと高いパワーハンドリングおよび、広ダイナミックレンジを実現しているのです。


◆ ウーファー(ミッド‐バス)

そして注目すべきは、本機のために新開発された6.5インチ(約16.5cm)のウーファーです。マルチ・ウォール・カーボンファイバーコーン(振動板)の表面に、ナノグラフェン(XG Nanographene)を使用した超高硬度マルチウォールカーボンファイバー織布(Multi-Wall carbon fiber)によって、最適な重量対強度比と理想的な減衰係数を持つように設計されています。

解りやすく説明しますと、従来のグラフェン振動板を更に進化させ、軽量かつ高剛性というだけではなく、最適な内部損失、低域の再生能力までも計算の上でカーボン振動板を開発しています。また、ユニット・フレームも最適な剛性と振動減衰を実現するため、シミュレーションとテストを経て設計されていると言います。具体的には、共振振動モードを減らしながら振動板による空気の流動量を最大化しているそうです。

非常に強力な磁気回路は、安定した磁界を確保するために特大のフェライト・マグネットをダブルで使用し、39mm径の放熱効果が高く、駆動軸のぶれないピュアチタニウム・ボイスコイルとすることで、高い音圧時においても正確なピストンモーションを実現できたのです。

また、ウーファードライバーは、周波数領域と時間領域の両方において、最新の有限要素解析(FEA)を用いて設計されています。この解析方法は、製品の構造または性質における潜在的な問題や既知の問題を特定して、それらの解決のため、バーチャル環境でのシミュレーション(音響、構造、電磁、温度の複数要素におけるドライバーの挙動を包括的に解析)を行うのだそうです。


◆ クロスオーバー・ネットワーク

本機のネットワーク基板は底板に取り付けられています。同社仕様の最先端の独ムンドルフ製コンデンサーや空芯コイルが使われており、-24dB/oct.の急峻なリンクウィッツライリー(無限インパルス応答)フィルターで構成されています。これにより最適な位相特性やリニアな遮断特性が得られ、混変調歪みを低減し、再生周波数特性の拡張も実現できたとしています。


◆ その他仕様

『 A1 』はブックシェルということで、リビングのサイドボードなどでも使用することを想定し、メタル製のフット(専用丸足フィート)や専用スパイク+スパイク受けを標準装備しています。スピーカースタンドとしては、米サウンド・アンカー社製の重量級スピーカースタンドを推奨しています。更に仰角を持たせた設置に適した同社製「A1クレードル」やパンチングメタルの「A1専用グリル」(いずれもオプション)も用意されています。なおスピーカーターミナルは、シングルワイヤー仕様です。

■ 試聴しました
『 A1 』の試聴は日本橋1ばん館のリファレンスルームで、Accuphase「C-3850」+「A75」を使って行いました。


▲ 写真:MAGICO『 A1 』試聴室/MAGICO『 A1 』正面

予想通り超高解像度のサウンドなんですが、ブックシェルフとは思えない中低域の厚みがあって、特に低域はこの大きさのスピーカーのそれではないと感じました。高域もどこまでも伸びきり、詰まった感じは全く感じませんでした。

私の試聴メモには、以下の様な感動のコメントがぎっしりです。試聴する程に『 A1 』の音に引き込まれていったのでした。

  • 低域の音程が超低域まで明確で、量感を保ったまま沈み込んだ。
  • 超低域には風圧を感じる程のエネルギー感があった。
  • ベースの音にちゃんと艶が乗っており、生々しさは鳥肌モノでした。
  • 音の芯がしっかりしており、音楽の説得力が素晴らしい。
  • 音楽以外の余計な音が一切出ず、特に無音時の静けさは格別でした。
  • 定位が明確で音像のブレは全くなく、アーティストの位置がハッキリ解った。
  • 声が深く響き、伸びやかで、眼前に見えるような実在感があった。
  • ボーカルがシャウトした場面でも全くうるさく感じない。
  • サウンド全体にヌケが抜群で、弾ける感じが素晴らしい。
  • 音が消える場面でも余分な響きがなく、自然に消えていく。
  • 聴いていても全く疲れを感じないため、幾らでも聴いていたくなった。

  • この大きさのスピーカーから、これ程のサウンドが出てくるとは本当に驚異的です。特に比較的小さなお部屋なら、大型フロア型スピーカーより遙かに素晴らしい再現力を発揮することでしょう。その完成度の高さは、超ハイエンドスピーカーに勝るとも劣らないものでした。

    マジコの技術力の凄さを改めて実感させられました。
    (あさやん)


    今回ご紹介した、MAGICO『 A1 』はこちら