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大型ソフトドームが魅力! ワーフェデール『 EVO4シリーズ 』を聴く!!

2020.5.2

こんにちは、ハイエンドオーディオ担当の "あさやん" です。
今回は、ワーフェデールのスピーカー『 EVO4シリーズ 』をピックアップ。
日本橋1ばん館でシリーズ4機種の内、『 EVO4.2 』と『 EVO4.4 』が試聴できましたので、これら2機種を中心にレポートしてまいります。

■ Wharfedale(ワーフェデール)とは?


ワーフェデールは、1932年、ギルバート・A・ブリックスによって英国ヨークシャー州で設立された、「セレッション」や「グッドマン」「タンノイ」などと並ぶ、英国の老舗スピーカーメーカーです。

同社は、1945年に高音質を目指した2ウェイスピーカーを製作し、1950年代になると、ロンドンのフェスティバルホールや、ニューヨークのカーネギーホールで、自社のスピーカーシステムと生演奏の聴き比べをするというデモンストレーションを行って有名になりました。

1950年には、有名な往年の名機「エアデール」を発売。その後、50〜60年代にかけて次々と新しい技術を開発したのでした。その技術開発に貢献したひとりに、後にKEFを創業するレイモンド・クックがいました。その後、紆余曲折があり、1967年には「Denton」(初代)を、1981年には現在に続く「Diamond」を発売したのでした。

1990年代は停滞期でヒット作はなかったものの、1998年著名な高級オーディオブランドを数多く所有する、インターナショナル・オーディオ・グループ(IAG)の傘下に入りました。

一方、日本での販売は1950年代から行われ、それは「タンノイ」より早かったようですが、人気ブランドとして定着しませんでした。

その後も輸入元が、三洋電機貿易、テクニカ販売、ハイファイジャパンと変遷していきましたが、あまり注目はされませんでした。

その後2002年に、同社70周年記念モデルである「エアデール・ヘリテッジ」から、その年設立されたばかりのロッキーインターナショナルにより輸入が再開されたのです。

■大型ソフトドームが魅力


私が『 EVO4シリーズ 』で最も注目した点は、ミッドレンジ(スコーカー)に採用されている大型(※)の50mmソフトドームです。かつてヨーロッパ製をはじめ国産スピーカーにも数多く採用されていたソフトドームのスコーカーですが、近年はとんと見掛けなくなりました。(※直径50mm以上のものを大型ソフトドームとしています)

それはデジタル時代を迎え、トランジェント(過渡)特性を重視する余り、メタル系のドームスコーカーが採用されるケースが増えたことや、小型のドームツィーターによる2ウェイブックシェルフ型が全盛を極めているからだと思います。恐らくスコーカーに大型ソフトドームを使うのは、かなり設計や使い方のハードルが高いのだと思います。

因みに、過去には大型のソフトドームを採用した機種は結構存在していました。海外では、独「BRAUN(ブラウン)」や「Heco(ヘコー)」、英「ATC(現在はプロ機のみ)」「PMC(プロ機)」、そして「インフィニティ(ポリプロピレン・ドーム)」などがあり、国内ではビクターの「SXシリーズ」が超有名です。

かく言う私が、何故大型ソフトドームにこだわるかと申しますと、私のオーディオ歴が大型ソフトドームからスタートしたためです。最初の単品スピーカーはビクターの「SX-3」、その後最も長期間愛用したのがブラウンの「L-810/1」、さらにその後最近までサブで使用していた、大きさこそ25mmのソフトドームでしたが、ATCの小型2ウェイ「SCM10」と、基本的にソフトドーム、しかも高域のみではなく、中域に使ったサウンドが好きなのです。

■ 『 EVO4シリーズ 』の特長


その大型ソフトドームは、ワーフェデール『 EVO4シリーズ 』4機種の内、上位3機種に使われています。しかしメーカーカタログには「AMT(エアー・モーション・トランスフォーマー)ツィーター」がメインで訴求されています。これは全4機種に採用されていることに加え、このクラスのスピーカーでは画期的なことだからでしょう。


図:AMTの構造

この「AMTツィーター」はシリーズ共通で、30×60mmのプリーツ状のダイヤフラムを採用しています。これは、従来のソフトドームツィーターより、再生の際の移動するエネルギー量(空気量)が多く、AMTの作用によってエネルギーが圧縮されることで、低歪み・高S/Nを実現できるのだとしています。超高域の繊細な情報を正確に再現し、滑らかで明確な高域再生を実現しました。

AMTを詳しく説明しますと、通常のコーンやドームなどのユニットが、ダイアフラム(振動板)に接した空気を1対1の比率で動かすのに対し、AMTではアコーディオン状のプリーツによって圧縮された空気が、3〜5対1の比率で外気を動かすエアー・モーション変換動作をします。

この圧縮・放射を行うダイアフラムによって、空気の動作スピードが何倍にも加速され、立ち上がり・立ち下りが良くなり、通常のユニットに比べ圧倒的なダイナミック・トランジェントが実現されるのだとしてます。


写真:50mmソフトドーム

次に、私が大注目している大型の50mmソフトドームですが、ワーフェデールの英本国のサイトにも詳しい記述はありません。それほど、奇をてらったモノではなく、ウーファーとAMTとの繋がりの良さを重視した結果採用したようです。

このスコーカーはバックキャビティを持っており、ウーファーの音圧の影響を回避し、共振による歪みを抑制しています。

このスコーカーの使用帯域は、機種によって若干違いはありますが、下は1.3kHzから上は4kHz前後と非常に重要な帯域を占めており、『 EVO4シリーズ 』の音質に大きく関わっていることは間違いありません。

そしてウーファーは、『 EVO4.1 』と『 EVO4.3 』は13cm、『 EVO4.2 』『 EVO4.4 』は15cmと、いずれも黒の編みこんだケブラーのコーン紙で、エッジはゴム製です。ケブラーは、振動を自然に自己減衰して、共鳴を実質的に無視できるレベルまで低減および分散するとしています。また、コーンの背圧の影響を受けないよう、十分コントロールしているようです。

『 EVO4シリーズ 』はリアバスレフではなく、いずれもバスレフポートがエンクロージャー底面にあり、気流はポートに「整流板」を付けることで10mm弱の隙間から左右に放射しています。結果、低域のレスポンスの向上と歪みの低減が、中高域では均一な周波数レスポンスによる解像度と低歪みを実現しています。これにより背面の壁などの影響を受けずに設置できるのは大きなメリットです。

このように『 EVO4シリーズ 』はAMT以外、特段の最新技術を謳っているのではなく、とにかくワーフェデールの持つオーソドックスなテクニックを駆使して、強調感のない自然なサウンドを目指したのです。

それはワーフェデールの創業当時からの理念である、「スピーカー」=「楽器」(スピーカーは、楽器になり得る)、そして「技術者」=「演奏家」(最高の技術を知る音楽家集団が生みだす、世界で最も楽器に近いスピーカー)を具現化したスピーカーを誕生させたのです。

■ 『 EVO4シリーズ 』のサウンド


【 EVO4.2 】

ブックシェルとしてはやや背が高く大きめです。エンクロージャーが大きいため低域がゆったり目で、全体としては、ピラミッド型のしっかりした落ち着いたサウンド傾向でした。

特にボーカルは、スコーカーが効いて温かくて厚めながら、こもることなく伸びやかでした。オーケストラの迫力もブックシェルフのそれではなく、スケール感たっぷりで迫力のある鳴りっぷりでした。

一方、高域はAMTが出しゃばるのではなく、サ行の刺激音や強調感も全くなく素直で、疲れを一切感じませんでした。また、弦の滑らかさやしっとり感は格別でした。

【 EVO4.4 】

1mを超すトールボーイです。さすがダブルウーファーだけあって、迫力たっぷりでスケール感がありますが、ここでもドームスコーカーが支配的で中域を重視していると感じました。

オーケストラの中低域の厚みは大型ならではですが、中高域はユニット(ドーム+AMT)の所為か、きつくなりそうでならない絶妙なバランスと感じました。お部屋が大きく離れて聴けるならやはりこちらに分がありそうです。

全体的には非常にノーマルで、肩肘を張っていない自然体のサウンドと感じました。安心感は半端ありません。

■ まとめ


ワーフェデール『 EVO4シリーズ 』を総括しますと、1番は安心感のあるサウンドです。大型ソフトドームならではのまったりサウンド。AMTならではのヌケの良い控えめな高域。そして落ち着いたたっぷりの低域。最近では珍しいユニット構成と、それによる安定感のあるサウンドは今や貴重な存在だと思います。

今回も最後までお読みいただき、ありがとうございました。(あさやん)