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KRIPTONスピーカーの集大成!? 『 KX-5PX 』完成!

2019.11.25

こんにちは、ハイエンドオーディオ担当の "あさやん" です。
本日は、完成度の高かった KRIPTON「KX-5P」のさらなる高音質を目指し、KX-5シリーズの三代目として完成した『 KX-5PX 』をご紹介。14年間で16モデルを商品化してきた《 メイド・イン・ジャパン 》の匠・渡邉氏の会心作を見てまいりましょう。。

■KRIPTON(クリプトン)とは?


KRIPTONの歩み

1984年創業の会社で、2005年にスピーカー事業に参入するまでは、業務用の映像システムや情報ネットワーク、eラーニングの構築など、既成概念にとらわれない発想と行動、挑戦をベースに、社会に貢献できる会社を目指してきた最先端の企業です。(ちなみに「クリプトン」とは、かのスーパーマンが生まれた星です)

KRIPTONは、”国産スピーカーのレジェンド”ビクター(現JVC)出身の”渡邉 勝氏”を招いて、スピーカーを開発したのが始まりでした。渡邉氏は、知る人ぞ知る銘機「Victor SX-3」の開発者であり、それは氏が20代の時に開発したと言うのですから、まさに天才です。私自身も40数年前、その「SX-3」からオーディオの泥沼にはまってしまった一人です。

2005年発売のKRIPTON「KX-3」は、その型番といい、2ウェイの完全密閉型で、クルトミュラーコーンに絹のソフトドームという、まさに「SX-3」の再来の様なスピーカーでした。貴重な[アルニコ・マグネット]による壺型内磁方式のヨークをウーファーにもツィーターにも使うという価格の割には贅沢な仕様で、それは渡邉氏のこだわり以外の何ものでもありません。

そのアルニコならではの瑞々しく滑らかでヌケの良い正統派のサウンドは、当時もう既に海外製に席巻されつつあった国産スピーカーにあって、海外製に勝るとも劣らぬ音楽性があり、仕上げも美しく、小さいながらも風格さえ感じたものでした。

その後「KX-3M(2006)」「KX-3P(2007)」「KX-3PII(2011)」「KX-3Spirit(2018)」と続き、現在に至っています。その派生として「KX-1(2014)」「KX-0.5(2017)」が登場。そしてこのコーナーでもご紹介した、今年(2019)発売の「KX-0.5P」と進化を遂げて来たのです。

一方、2009年にはフラッグシップのフロア型スピーカー「KX-1000P」を投入。続いて2010年2ウェイブックシェルフの最上位機種「KX-5」、そして2015年クリプトンスピーカー発売10周年記念として、ピアノブラック仕上げの「KX-5P」を発売。現在に至っています。

■最新作 KRIPTON『 KX-5PX 』の実力は


『 KX-5PX 』は、ブックシェルフ型の最上位のリファレンスという位置付けのモデルで、渡邉氏のこだわりである《 アルニコ・マグネット 》《 ピュアシルク・ツィーター 》《 クルトミューラーコーン・ウーハー 》《 密閉型エンクロージャー 》を徹底的に踏襲。さらに新たなノウハウを加味して完成した、これぞ《 KRIPTONスピーカー 》といえる同社のオリジナリティ溢れる製品に仕上がっています。

■こだわりポイント1:アルニコ・マグネット


超貴重なアルニコ・マグネットを全ユニットに採用し、しかも初号機「KX-3」と同じ壺型内磁方式(上図)のヨークをウーファーにもツィーターにも使うという他に類を見ない贅沢極まりない仕様です。

アルニコ(Al-Ni-Co)は、アルミニウム (Al)、ニッケル (Ni)、コバルト (Co) などを原料として鋳造された磁石で、ネオジウムやサマリウムコバルトなどの希土類(レアアース)磁石と同程度の強い磁力を持っています。20世紀半ばまでは高級スピーカー(JBLやTANNOYなど)のマグネットとして使われていましたが、1960年代のコンゴ動乱によって原材料のコバルトが暴騰したため、より安価で造形の容易なフェライト磁石に主役の座を奪われたのでした。

しかし、筆者を含めた当時のオーディオファンは、その変更による音質の明らかな低下を目の当たりにしてショックを受けたものでした。

レアアースの不足は今も常態化しており高額なため、現在でもアルニコ・マグネットが使われているスピーカーは殆ど存在しないのが実情です。その貴重なアルニコを使用していると言うだけでもこの『 KX-5PX 』は魅力的ですし、何よりフェライトとの音質差を実感されたオールドファンにとっては、かつての夢を叶えるスピーカーと言っても過言ではないと思います。

■こだわりポイント2:ピュアシルク・ツィーター


KRIPTONは、PCオーディオの黎明期からハイレゾ音楽配信サービス(現在終了)や、DVD-ROMによる音楽データの提供を行ってきた老舗メーカーであり、当初からハイレゾ帯域の再生には執念を燃やして来ています。

そのハイレゾの50kHzまでの超高域再生のためのツィーターには、砲弾型イコライザーが付いた35mm口径のピュアシルクリングダイヤフラム・ツィーターが使われています。さすがに前述のビクター「SX-3」当時のf特:20kHz、5cmソフトドームでは無理だということでしょう。そこは時代を感じます。

そして、ボイスコイルはOFC(無酸素銅)のエッジワイズ(角柱)線とし、アルニコ壺型内磁気回路との相乗効果で、超高域までリニアに再生できると共に、歪みが大幅に改善された結果、ハイレゾ音源の高品位再生が可能になったのです。

■こだわりポイント3:クルトミューラーコーン・ウーファー


こちらも伝統の170mmクルトミューラーコーン・ウーファーです。クルトミューラーは、ドイツの会社で北欧産の針葉樹パルプ紙を柔らかく厚手に抄造したものに、充分な内部損失を持たせています。タンノイや、ヤマハのスピーカーの一部にも使われた、薄紫色の特徴のあるコーン紙です。

ボイスコイルはこちらもOFCですが、エッジワイズ線の4層巻ロングトラベルのボイスコイルとすることで、線積率を上げ、低域のリニアリティを改善。さらにアルニコ壺型内磁気回路と相まって能率を稼ぎ、駆動力が高く、大振幅時にも磁気回路から外れることなく、歪みの非常に少ないウーファーを完成させたのです。

また、エッジはリニアリティーと経年変化に優れたブチルゴムを採用することで、fo(最低共振周波数)を170mmのウーファーとしては類を見ない極限ともいえる35Hzに設計しています。これにより低域再生は勿論、ダイナミックレンジを拡大し、トランジェント(過渡応答)特性を大幅に改善できたのです。密閉型でありながら伸びやかで豊かな低域再生に貢献しています。

■こだわりポイント4:密閉型エンクロージャー


エンクロージャーの板材には、18mm厚の針葉樹系の高密度(比重:0.8)のパーチクルボードを採用しており、表面仕上げはオール天然材の突き板に高級ピアノ塗装(ポリエステル塗装)の6面全部を高級楽器に匹敵する鏡面仕上げとしています。これにより不要振動を抑制し、優れた振動減衰特性により美しい響き、さらに音波が表面を伝わるスピードが速いためヌケの良いサウンドが実現できたのです。

そして、密閉型でトランジェント良く、深く沈み込む低音を実現するにはQo(低域制動)が重要との考えから、吸音材にもこだわりを見せています。同社は音響パネルなどのアクセサリーメーカーでもあり、吸音材についてのノウハウは豊富です。結果として、純毛の”低密度フェルト”と定評のある吸音材”ミスティックホワイト(ダイマーニ)”をハイブリッドにすることで、適度な制動特性を得て、豊かで伸びのある低音を実現したのです。

■KRIPTONの更なるこだわり


【1】内部配線材に”PC-Triple C”採用

ウーファーには、同社が最近発売した「SC-HR1500」を採用。ポリエチレン芯にPC-Triple Cφ0.33×7本を6束にしてロープよりし、耐熱ポリオレフィン樹脂のシースで構成しています。PC-Triple Cと絹の介在により、低音の量感、トランジェント、S/N感に優れた音質を実現しています。

また、ツィーターにも同時発売の「SC-HR1300」を採用。マグネシウム芯線にPC-Triple Cφ0.7×6をロープよりし、ポリエチレン絶縁シースで構成しています。滑らかで透明感のある高域を実現できたのです。

いずれも同時進行で、スピーカーユニットの特長に合わせるべく試聴を繰り返しチューニングして完成させたとしています。


【2】低損失&低歪率のデバイディングネットワーク

歪みを極限まで抑えるべく、本機のデバイディングネットワーク素子には、直流抵抗の低い直径1.2mmのOFC線材による空芯コイルと、ケースにピッチ材を充填して振動を抑えた低損失メタライズドフィルムコンデンサーなどを採用しています。これらによってスピーカーユニットの本来のポテンシャルを引き出し、ユニットの絶妙なハーモニー、音楽のピアニシモからフォルテシモに至るダイナミックレンジ、そして自然な音場感の再現が可能になったのです。


【3】バイワイヤリング採用

ウーファー(LOW)と、ツィーター(HIGH)端子は、デバイディングネットワークで分割したバイワイヤリング端子とし、内部配線材と同じPC-Triple Cのショートワイヤーが付属しています。バイワイヤリングやバイアンプ駆動により、各ユニットの逆起電力による影響を回避することで、モジュレ−ション歪みを防ぎ、さらなる中高域の透明感のアップに繋がっています。

また、同社新製品のバイワイヤリングケーブル「SC-HR2000」をお使いになれば、簡単にバイワイヤリング接続ができ、KRIPTONが目指す本来の『 KX-5PX 』の高音質サウンドが実現できます。「SC-HR2000」は1本のケーブルに、バイワイヤリングのツィーター用とウーハー用の2種類のケーブルを組み合わせ、外径がφ11.5mmの特殊なケーブルです。通常のスピーカーケーブルのように左側、右側それぞれ1本ずつで簡単に配線できます。

そして、『 KX-5PX 』が誕生した大きな理由がここにあります。実は前作「KX-5P」に使われていた内部配線材のPCOCC-Aがご存知のように生産中止となったため、KRIPTONはそれに替わる新しいケーブルを探し、その結果”PC-Triple C”に辿り着いたと言います。さらにウーファー用とツィーター用に内部配線材を変えることで最適化を図り、「KP-5X」を超える音作りを目指したのです。そして、スピーカーケーブルから内部配線まで同じケーブルにすることで、さらなる高音質が得られたのだとしています。

その大きな理由は『 KX-5PX 』のウーファーユニットが前述のようにエッジワイズ線の平織りを4層に巻いているため、他社のユニットより逆起電力が大きく、バイワイヤリングによる効果が大きいとのことです。

■ 『 KX-5PX 』の音質は?


試聴は、バイワイヤリングケーブル「SC-HR2000」を使って行いました。前作にも増して高域の透明度がアップし、気持ちよく伸びきります。特にストリングスが綺麗で、倍音成分の再現性が確実に向上していると感じました。そして、中低域から下のエネルギーが増え、ふくよかさや厚みの表現は、従来の同社スピーカーを明らかに超えています。かと言って、サウンド全体に誇張感がなく、とにかく自然なのです。これこそ”チューニングの妙”であり、”渡邉マジック”だと思います。

こんな素晴らしい音の国産スピーカーに誇りさえ感じます。

今回も最後までお読みいただき、ありがとうございました。(あさやん)