カテゴリから選ぶ

まだまだ進化&深化を続けるAccuphase『 E-480 』〜 セパレート・アンプに匹敵する新世代プリメインアンプの誕生!〜

2018.11.25

こんにちは、ハイエンドオーディオ担当の "あさやん" です。
今回は、アキュフェーズの新世代プリメインアンプ『 E-480 』をご紹介! 高級セパレートアンプに引けをとらないサウンドを実現しています。日本橋1ばん館で従来機「E-470」と比較して、試聴した結果もレポートいたします。

■アキュフェーズのプリメインアンプの歩み


アキュフェーズのプリメインアンプの初代機は1974年(昭和49年)発売の「E-202」(当時\198,000)で、同社のデビュー作プリアンプ「C-200」とパワーアンプ「P-300」を足して二で割った様なデザインでした。しかしデビュー作が鮮烈すぎて、あまり存在感を発揮できなかったのは否めません。

E-202

やはり、筆者のようなオーディオ歴の長い人間にとっては、アキュフェーズのプリメインとして強く記憶残っているのは、1978年(昭和53年)発売の「E-303」(当時\245,000)で、写真のようにプッシュボタンを多用した、今とはデザイン傾向がかなり異なった製品でした。

E-303

その後、大ヒット作「E-305」(1987年)、その上級機「E-405」(1989年)と続き、海外専用モデルから転用された「E-210」(1995年)で下を、更に「E-530」(2002年)で上を固め、堂々の200番台、300番台、400番台、そして500番台(現在は600番台)の4ラインナップが完成したのでした。その中核をなす400番台で、4年ぶり9世代目に当たるのが新製品『 E-480 』と言う訳です。

筆者自身が近年のアキュフェーズ製品のサウンドに感じるのは、とにかくS/Nが良くなったことで、数字的には極々僅かな差なのですが、一瞬聴いただけで《静かだ》と感じるケースが多いこと。そしてアンプのドライブ能力が向上したため、従来鳴らし難いとされていた大型スピーカーや超小型スピーカーを難なく朗々と《鳴らし切る》場面に遭遇するケースが多いことです。

それでは早速そのあたりを中心に『 E-480 』の進化&深化の程を探ってまいりましょう。

■S/Nの向上


まずは、アキュフェーズのアンプの説明で頻繁に出てくる"AAVA"について抑さえておきます。"AAVA(音量調整)システム"はアキュフェーズ(株)の特許で、従来の可変抵抗器を使わずに、ゲインの異なる16種類の"V-I変換アンプ"を組み合わせること(16種類の重み付けをし、2の16乗=65,536段階)で音量調整ができる画期的な技術です。

音楽信号を抵抗器を使って減衰させないため、従来高価な可変抵抗器を使用しても避けられなかった信号の劣化や、インピーダンス変化が無いため、高S/Nと低歪みを維持したまま音量調整ができるのです。

さらに『 E-480 』では、ハイエンド・プリアンプ「C-2850」で採用したのと同じ、最も大きなゲインを持つ(最上位ビットの)"V-I変換アンプ"を4回路並列化(従来機「E-470」は2回路)することで、余裕のある動作を実現してセパレートアンプに迫る雑音性能を得られたとしています。

いままでの説明で"AAVA"はデジタル回路ではないかと思われるかも知れませんが、あくまで純粋なアナログ回路であり、デジタルノイズの発生は全くありません。また従来のボリュームにあったボリューム位置での音質変化(絞ると音が悪い、なるべくボリューム位置は9時以上で使うべきなど)がほとんど感じられません。これも大きなメリットです。

この結果、『 E-480 』ではカタログ上のS/N(入力換算雑音)は保証値を掲載しているため、「E-470」と全く同じ値ではありますが、残留雑音電圧の実測値は大幅に向上しているとのことです。

■ドライブ能力の向上


電力増幅段に使うことで従来から評価の高い、同社としては使い慣れた"パワーMOS-FET"を3パラレル・プッシュプル構成としています。さらに安定した電力を供給するため、大型のトロイダルトランスと新規開発のカスタム仕様の大容量40,000μFのフィルターコンデンサーを採用することで、余裕のある定格出力180W/8Ω、260W/4Ωを実現できたのです。

そして、スピーカーのドライブ能力の向上には欠かせないダンピングファクターを、「E-470」の"500"に対し"600"と20%もアップさせています。

スピーカー保護用の出力スイッチにON抵抗(スピーカーONの時の抵抗値)が非常に低く、ハイエンド・パワーアンプ「A-250」と同じ、信頼性の高い"MOS-FETスイッチ"を採用するとともに、出力インピーダンスを下げるため、基板の配線パターンをより太く短くすることで実現できたのです。

■その他の「E-470」からの改良点


【1】『 E-480 』のフロントパネルを大きく占有しているアナログメーターを、リニアリティを高め、「E-470」より10dB低い"-50dB"までの表示を可能にしており、従来ほとんど指針が振れなかった夜間の小音量時などでも、指針の動きが確認できるようになりました。

【2】先にも触れましたが『 E-480 』には、異常を検出した場合、プロテクション回路に搭載されたスピーカー出力用のMOS-FETスイッチをOFFにし、同時にメーターランプも点滅させユーザーに知らせます。このショート検出回路にはS/Nやダンピングファクターに影響を与える要素は全くありません。

【3】異常温度検出素子を、従来のシャーシから同社のパワーアンプ同様左右のヒートシンクに直接搭載することで、出力段のMOS-FETが異常発熱した場合には、即スピーカー出力のMOS-FETスイッチをOFFにし、スピーカーを破壊から守ります。

【4】セレクターにはプリアンプ「C-3850」と同じ高音質・長期安定性に優れた、ロジック・リレーコントロールによる信号切替回路を採用しグレードアップを図っています。

これらの改良が図られても、「E-470」との重量差は僅か100gしかありませんが、この4年間で同社から発売された、プリアンプ、パワーアンプ、そして最高級プリメインアンプ「E-650」の開発で得られたノウハウを可能な限りコストアップ内(50,000円の差)に抑え、最大限取り込むことで『 E-480 』の完成を見たのです。

拡張スロットを2機備えており、オプションのデジタル入力ボード「DAC-50」、アナログディスクボード「AD-50」、ライン入力ボード「LINE-10」の中から2枚まで増設可能で、「DAC-50」使用時にはディスプレイにデジタル入力時のサンプリング周波数が表示されます。更なるグレードアップや機能アップが可能です。

■試聴しました


『 E-480 』試聴は、日本橋1ばん館で従来機「E-470」と比較しながら行いました。

確実に分解能が上がっており、音のキレが明らかに良くなっています。音場の見通しも良くなり響きが豊かに感じられました。音像も引き締まって小気味良さも感じました。

その一方で、サウンド全体に落ち着きや成熟感が感じられ、最近の同社のアンプに見られるように低域が伸びやかで、音の芯がしっかり出ていると感じました。

S/Nの良さからか感度も良くなった様に感じられ、細かい音のニュアンスの変化がはっきり感じられました。女声ボーカルの微妙な口の動きも感じられ、ゾクッとさせられました。

そしてB&W「802D3」などドライブ力を必要とするスピーカーでも、セパレートアンプ並に鳴らしきったのには驚きました。ここは明らかに従来機との差を感じました。

■ 最後に


『 E-480 』は、高級セパレートアンプに引けをとらないサウンドを実現しており、アキュフェーズの底力と耳の良さ、そして進化&深化を取り入れつつ開発し続けてくれる姿勢に敬意を表したいと思いました。

ますますアキュフェーズ・サウンドが、オーディオ的にはもちろん、音楽性を伴って成熟してきたと実感させられました。

今回も最後までお読みいただき、ありがとうございました。(あさやん)