ミニコンポを超えたミニコンポ!! marantz『 M-CR612 』ヒットの理由とは?!2019.7.11 こんにちは、ハイエンドオーディオ担当の "あさやん" です。 ■marantzのミニコンポサイズCDレシーバーmarantzのミニコンポサイズCDレシーバーは、2009年発売の「M-CR502」、2010年の「M-CR603」、2013年の「M-CR610」、2015年の「M-CR611」と続き、今回の『 M-CR612 』で5世代目となります。 ▲ 初代機「M-CR502」 初代機「M-CR502」も今と同じ横幅28cmで、その製品コンセプトは、小型スピーカーと組み合わせるミニコンポ用のCD/FMチューナー内蔵アンプというものでした。 そして初代機から、ラウンドフォルムのユーロモダンデザイン、1台でバイアンプ可能な4chデジタルパワーアンプ、2系統のスピーカーターミナル装備、単品CDプレーヤーと同一のメカ搭載、USB入力端子搭載 、そして定格出力50W+50Wというスペックでした。さらに「M-CR603」からはネットワークやBluetoothにも対応したのでした。 しかし、我々オーディオファン、特に単品コンポユーザーにとっては、ミニコンポは歩んできた通過点であり、「今さら何故ここで取り上げるの?」と疑問を持たれるのは当然だと思います。しかも、ミニコンポと聞くだけで、どうしてもドンシャリの若者向けの派手なサウンドやペラペラの薄べったいサウンドをイメージしてしまいます。 ただ、初代機の企画段階では、marantzは元々他のオーディオメーカーと違い、ミニコンポにはあまり強くなく、ミニコンポサイズの製品を商品化するにあたっては、同社が持つ単品コンポのノウハウを生かして、真面目にひたすら音の作り込みを行うしかなかったのでした。勿論当時は、さほど売れるとも考えてなかったようですが・・・。 それがステレオコンポなのに、4chデジタルアンプを搭載したバイアンプ駆動(※)という仕様というレシーバーでした。発売後徐々にではありますが、ミニコンポ売場にちょっとまともな音のするレシーバーがあると、音の分かる一部のユーザーには目を付けられていたようです。 しかも思いも寄らないことが海外で起きたのです。ヨーロッパではmarantzブランド製品は、販売ルートの関係で、家電店ではなくオーディオ専門店で展開されており、「M-CR502」もそうだったようです。そこで、耳の肥えた販売員がその音質の良さに目を付け、そこから快進撃が始まったそうです。その噂が日本にも聞こえて来るにつれ、人気が高まっていったのです。 そして『 M-CR612 』の前作に当たる「M-CR611」は、発売当初からこのクラスとしては異例のヒットを続け、惜しまれつつも今春生産終了を迎えてしまったのでした。その大ヒット作である「M-CR611」のどこをどのようにブラッシュアップしたのでしょう。しかも、値上げなしにです。そのあたりを見てまいりましょう。 ■CDレシーバー『 M-CR612 』とはデザインは初代機から、銘機「MODEL7」を思わせるmarantz伝統の左右シンメトリーにこだわっていましたが、代を重ねるごとに高級感が増し、『 M-CR612 』ではラウンドのかかった3ピースのフロントパネル、ハードコートのアクリルトップパネル、そしてイルミネーションなど、marantzの単品コンポーネントを彷彿とさせる、高級感あるデザインに仕上がっています。 本機の「肝」は、何といってもパワーアンプです。前述のように、初代機から続く4chアンプというのは同じで、そのデバイスにはTI(テキサス・インスツルメンツ)製を使用しています。ただ、この素子は実際には8ch仕様となっており、これを2chずつまとめて4ch使いとしているそうで、ノーマル状態ですでにBTL接続になっているらしいのです。 スピーカー出力は2組あり、「バイアンプ接続」では対応スピーカーの低域/高域それぞれを独立したアンプで駆動することで、ウーファーからの逆起電力など相互干渉を排除します。また、「マルチドライブ接続」では2組同時または切替えて聴くことができ、別の部屋のスピーカーの音量もリモコンで別々に調整できます。ここまでは従来機と同じです。 ここに、あるデータがあります。前作「M-CR611」の利用者を調査した所、バイアンプで使用している人の割合が、日本:18%、ヨーロッパ:8%、アメリカ:10%と、バイワイヤリング対応のスピーカーの多いヨーロッパですら10%未満という状況だったのです。 結果、ほとんどのユーザーは、シングルワイヤ接続でしか「M-CR611」を使っておらず、A,Bあるスピーカー端子のAにスピーカーを繋ぐということは、Bすなわちあとの2ch分は使われないままで、「宝の持ち腐れ」状態だったということです。そこで、本機『 M-CR612 』の新機能の登場と相成るのです。 今回新たに搭載された「パラレルBTLドライブ」は、接続はシングルワイヤのまま、4組のアンプ全てを用いてスピーカーを駆動することを可能にしたのです。その結果、アンプのスピーカー駆動力を示すダンピングファクターは、通常(BTLドライブ)に比べ約2倍になり、中低域の量感と締まりを両立した低音再生を実現できたとしています。 シングルワイヤ接続時でも、内蔵している8chアンプをフル活用できるパラレル(並列)化した駆動方法なので「パラレルBTLドライブ」と名付けられています。これこそ、ミニコンポとは明らかに違う、ハイエンドオーディオ的発想といえます。 ▲ 金メッキスピーカー端子
■多機能な『 M-CR612 』さらに、『 M-CR612 』の多機能さには目を見張るものがあります。以下に列記します。 1、豊富なネットワークオーディオ機能
2、ハイレゾ音源の再生に対応
3、その他・主な機能と特徴 ・入力信号を検知して、電源を自動でオン可能な2系統の光デジタル入力を装備 このように、まさに「てんこ盛り」状態です。やはりこれらは、ミニコンポとしては必要不可欠な機能なのでしょう。でも私のようなオーディオファンがサブシステムとして本機を使うには、少々多機能すぎる感がなきにしもあらずです。もっと機能を絞った、音質だけに特化したミニコンポがあってもいいと思うのは私だけではないでしょう。 ■ 『 OBERONシリーズ 』のサウンドを日本橋1ばん館でじっくり確認しました。『 M-CR612 』のサウンドは、日本橋1ばん館でB&W「607/MW」を使って確認しました。 B&W「607/MW」は本来バイワイヤ仕様ですが、ジャンパーでシングル接続にして、リモコンで切り替えて「シングル」と「パラレルBTLドライブ」を比較しました。 「シングル」でも十分「607/MW」を鳴らしきっており、低音が力強く、パワフルな安定感のあるサウンドで、私の過去の経験からくるミニコンポの音とは明らかに違うものでした。ミニコンポのドンシャリ音ではない、ハイファイを意識させるドッシリした正統派のサウンドでした。 次に「パラレルBTLドライブ」に切り替えた途端、その変わりようにビックリです。低音がとてもこの大きさのシステムのそれではなく、生々しくスケール感たっぷりで、立体感を伴った本格的なサウンドが聴けたのです。とにかくハイスピードになり、情報量も多く「これで十分なのでは」と納得させられるほどでした。 「ミニコンポでもここまで出せるのだ」が私の正直な感想です。ヒットも当然です。パラレルBTLによるミニコンポを超えたミニコンポ『 M-CR612 』の誕生です。 今回も最後までお読みいただき、ありがとうございました。(あさやん) |